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2025年4月9日 13:13

北海道北見市が財政危機 教育面にも影響 118億円の新市庁舎に批判の声

2025年4月9日 13:13

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 北海道で最大の面積を持つ北見市が今、財政危機に陥って市民の生活に支障が出始めている。総事業費118億円をかけたという4年前に完成した新市庁舎について、市民から批判の声が上がっている。

■財政危機 毎年30億円の財源不足見通し

 人口およそ11万人の北見市。北京オリンピック銀メダルのロコ・ソラーレの活動拠点で、カーリングの街として有名になった。そんな街で起こっているのが“市の財政危機”だ。

北海道北見市 辻直孝市長
「このままの財政運営を続けていけば、将来、市の歳出総額が歳入総額に見合ったものとはならない状況が続き、財政の収支見通しが大幅に悪化する」
北見市決算(2023年度)
北見市決算(2023年度)

 2023年度の北見市は、歳入774億円に対し、歳出は768億円。一見、黒字に見えるものの歳入のうち25億円は基金からの借り入れで、今年度には頼みの綱の基金も底をつくという。

生産年齢人口も半減の可能性
生産年齢人口も半減の可能性

 さらに、2050年までに人口は4万人減り、生産年齢人口も半減する可能性があるため、税収は減るとみられている。

北海道北見市財政課 信本拓人課長
「目先の決算のやり繰りだけでは遠くない将来やっていけなくなるだろうと。これほどの収支不足は、やはり抜本的な見直しをすることによって解消しなければならない」
財政健全化計画を発表
財政健全化計画を発表

 去年、北見市が公表した財政状況によると、今後毎年30億円以上の財源不足となる見通しで、11月には「財政健全化計画」を発表。さまざまな公共施設やサービスが廃止されるという。

ごみ袋代1.5倍
ごみ袋代1.5倍

 来年10月から家庭ごみの処理手数料が上がるため、最も大きいサイズのごみ袋は10枚入りで900円から1350円になる可能性がある。

80代
「え〜すごいね、ごみを出さないようにしなくちゃ」
40代主婦
「やっぱりごみはどうしても出てしまうので、つらいですけど諦めるしかない」

■厳しい財政状況のなか…118億円市庁舎

 なぜ北見市は、財政危機に陥っているのか?その背景にあったのは“平成の大合併”だ。

平成の大合併
平成の大合併

 北見市は2006年3月に旧北見市と留辺蘂町・端野町・常呂町の3つの町が合併。道内で一番広い市となったため、市が管理する上下水道や道路が膨大な長さになり、管理・維持の負担が増加。さらに、合併の影響で公共施設の数は体育館が13・図書館が8と、人口が10倍以上の札幌市とほぼ同じ数になって大規模修繕など多額の費用が発生。

 インフラや公共施設は老朽化が重なり、運営にかかる費用が合併した年と比べて年間およそ20億円増加した。

図書館
図書館

 そんな厳しい財政状況のなか、2015年には35億円をかけて図書館を建設。さらに2021年には、市の中心部に新市庁舎を完成。その総事業費は118億円だ。

市庁舎
市庁舎

 高さ32メートル、7階建ての市庁舎は、北見の街では異彩を放つ存在感。市が製作した動画には「3年の月日を経て完成した新庁舎」「延べ6万8千人が建設に携わり、職人の技が結集した新庁舎」と紹介されている。

 中は吹き抜けの開放的な空間が広がり、広々とした災害対策本部室や椅子が20脚そろった市長室。さらには立派なソファーが並ぶ市長応接室が映されていた。

 これに対し、市民は「市役所の庁舎見てね、人口減ってきているのにこんな立派なもの建てて、なんか腹立ってきた」と話す。

■空き家が老朽化「かなり危険」

 人口減少の現実が垣間みえる場所がある。市街地から少し離れた留辺蘂地区。

空き家
空き家

 壁が変形し、窓ガラスは割れ、雪の影響か屋根が崩落しているのは老朽化した空き家だ。

 温泉地として栄えていた温根湯地区。かつては、人でごった返していたが…。

地元住民 長谷敬さん(72)
「何年かぶりに見たらこんなすごいとは思わなかったな」
他の建物も
他の建物も

 建物の天井は無惨にはがれ落ち、がれきの上には雪が。隣の建物も外壁がアーケードの上に落ちていた。

看板の一部が落下
看板の一部が落下
長谷さん
「(Q.これなんだ?)木だよね。多分、木だよ。あそこの看板の一部だと思いますよ」
「(Q.これ(看板が)落ちてきたら危ないですね)かなり危険」

■学校設立が白紙「卑怯!」

 一方、財政難は教育面にも影響が出ている。

幻となった学校設立
幻となった学校設立
住民団体代表 鹿内良さん
「学校が改修されてきれいな学校になって、子どもたちがまたニコニコ通える学校になると私たちは信じていた」

 地元住民が落胆していたのは、幻となった学校設立だ。

 地元住民の要望を受け、2027年に開校予定だった小中一貫校。去年8月、計画が突然白紙になった。住民説明会では怒りの声が上がった。

住民説明会では怒りの声
住民説明会では怒りの声
北見市民
「あんたたちは本当に見通しが甘い」
「『行政が決めたから全部納得せい』という言い方はあまりにも卑怯(ひきょう)だよ」
「行政は決まりってことでしょ?じゃあ話したって無駄じゃないですか」
鹿内さん
「学校がなくなった時には、地域自体が疲弊をしていくと私たちは思っている。今回の北見市の財政の問題で、若い世代の方がどう動くかというのも、私たちはちょっと心配しています」
保育園も運営見直しが検討
保育園も運営見直しが検討

 さらに今後、保育園も運営見直しが検討されている。

 市内の保育園に3歳の娘を預ける山上志和さん(40)。通っている保育園が、認可保育園から認可外保育園に変わるのではと不安を抱いている。

山上さん
「(認可外になると)8時間保育になり、給食も提供がない。毎日お弁当を作らなきゃならない」

 保育時間が3時間短縮され、給食もなくなる可能性があるという。

山上さん
「このまま(仕事の)時間が合わなくって、(地域から)どんどん人口が減ってしまう状況にならないのかというのが不安でいっぱいです」

■ふるさと納税で財政健全化?

ふるさと納税の目標金額を50億円に
ふるさと納税の目標金額を50億円に

 北見市は財政健全化計画のなかで、昨年度およそ30億円だった「ふるさと納税」の目標金額を50億円に設定。それによって5億円の増収につなげるとしている。しかし、その実効性については不透明な部分がある。

北海道北見市 辻直孝市長
北海道北見市 辻直孝市長
辻市長
「(Q.(ふるさと納税は)各自治体が競い合っていて、金額を大幅に増やすのは難しいのでは?)体制の強化を図るべく、取り組みの準備を進めている。50億円という高い目標を掲げる」

 具体的な取り組みについて、市に回答を求めると…。

新たな返礼品の開発
新たな返礼品の開発
北見市
「令和7年度から、新たに一般財団法人北見振興公社と連携し、新規返礼品の開発やマーケティング、シティ・プロモーションなどを進めるなど体制の強化を図ってまいります」

 北見市副市長が代表理事を務め、農産物の加工品製造などを支援する「北見振興公社」と共に、新たな返礼品の開発などを行っていくという。

報酬減額
報酬減額

 北見市は、市長の報酬を30%減額するほか、課長以上の幹部職員の役職手当を20%、ボーナスを最大10%減額する計画を打ち出した。

 北見市は、市民の不安を解消するため住民説明会を実施。今後の市民への対応については…。

北見市
「市民説明会や地域団体等への説明、市議会での議論等を通じ、財政健全化の必要性についてはご理解をいただいたものと認識しております。直接対面し意見交換できる『移動市長室』をはじめとした、さまざまな機会を捉えてまいります」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年4月9日放送分より)

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