英語能力テスト『TOEIC』の試験会場で、他人に成りすまして受験しようとしたなどとして、京都大学大学院生で中国籍の男が逮捕されました。
番組は、中国のカンニング業者に接触し、業者の悪質な手口について、取材しました。
また、日本が狙われる理由についても見ていきます。
■TOEIC試験不正で京大院生逮捕 発覚の経緯 使用機器と手口
TOEICの不正受験で逮捕されたのは、京都大学大学院生の中国籍の王立坤(おう・りつこん)容疑者27歳です。
建造物侵入などの容疑です。
王容疑者は、TOEIC試験会場で、偽造した他人名義の学生証を提示した疑いがもたれています。
TOEICとは、『日常生活やビジネスにおける英語力を測定する世界共通テスト』で、日本では大学入試や就職でも活用されています。
大学入試では全国で332校、採用時に要件・参考にしている企業は、上場企業の38.9%に上ります。
外国人が日本に留学・就職する際にも使用されることもあります。
王容疑者は、替え玉受験を疑われています。
「顔写真は同じだが違う名前で受験している人がいる」と相談がありました。
試験当日の5月18日、捜査員が試験会場で張り込み、王容疑者を現行犯逮捕しました。
「金が欲しくて、アルバイトを探していた」と話しています。
押収されたのは、小型マイクが仕込まれたマスクです。
小型マイクは約3cmで、アンテナも付いていました。
「マイクを通して、王容疑者が、解答を別の受験者に伝え、受け手は『小型イヤホン』で解答を聞こうとしたと思われる」ということです。
「中国で20年ほど前から使用される『不正受験の定番アイテム』」だということです。
2022年には、一橋大学の外国人留学生向けの入学試験で不正利用され、中国人留学生が有罪判決を受けています。
この2022年の時に、実際に使われたのが、長さ約1cmの小型イヤホンです。
そして、集団的犯行の可能性もあります。
試験前の教室内には、約50人の受験者いましたが、王容疑者が逮捕された後、実際に試験を受けたのは、約35人で、約15人が欠席しました。
王容疑者の逮捕を受けて、欠席したと見られています。
余罪も分かってきました。
王容疑者は、2024年6月と2025年3月の試験でも、別人になりすましていたとみられています。
2025年3月の試験で王容疑者は、990点満点のところ、945点の高得点をあげています。
以前から情報提供がありました。
「会場でぶつぶつ中国語が聞こえる」
「不自然に900点以上マークする中国人がいる」
と警察に情報提供をしていました。
■中国カンニング業者に独自取材『40万円・80万円』プランとは
番組では、日本でのカンニングを斡旋する、中国のカンニング業者に接触しました。
カンニング業者が出していたSNSの広告です。
カンニング業者が提示していた2つのプランです。
1つ目が、約40万円のプランで、電子機器を使用したカンニング。
2つ目が、約80万円のプランで、替え玉受験です。
カンニング業者は、点数の保証もしています。
2つのプランを見ていきます。
まず、約40万円のプラン、電子機器を利用したカンニングです。
「事前に、腕時計やイヤホンなどを提供します」
「そんなにリスクはありません。目立たないように慎重に伝えた答えを書けば大丈夫です」という答えでした。
このカンニング業者から、中国在住者向けのマニュアルも送られてきました。
『試験日前日に羽田空港に到着してほしい』
『機器やスタッフを手配する必要があるため、到着後すぐに(カンニング業者に)連絡するようにして欲しい』と書かれています。
カンニングに使われる電子機器の受け渡しです。
カンニングに使う腕時計やイヤホンは、この業者が用意します。
業者が指定した受け渡し方法では、早稲田駅のコインロッカーを使用します。
業者から送られてきたQRコードの写真で、コインロッカーを開け、機器を受け取るということです。
カンニングで使う機器を受け取った後は、カンニング業者に、再度、連絡します。
連絡すると、業者の専任スタッフによるオンライン研修が行われ、試験の受け方や受け取ったカンニング機器の処分について、説明があります。
試験当日のカンニング方法について、中国事情に詳しいジャーナリストの周さんです。
腕時計とは、スマートウォッチのような物で、メッセージアプリなどを使って答えが送信されます。
イヤホンは、無線機能を使って、音声で解答が伝えられるということです。
「前金で約10万円支払ってもらい、スコアを出した後に残金(約30万円)を払ってもらいます」ということでした。
2つ目のプランは、約80万円コース、替え玉受験です。
「提供してもらったあなたの情報を使って、私たちが用意した替え玉が、解答用紙をあなたのものとして提出します」という答えでした。
受験生の個人情報を業者に渡し、その情報を基に、替え玉が受験生になりすまして試験を受ける、ということです。
中国のSNSには、替え玉を募集するような投稿もあります。
カンニング業者に、テレビ朝日の取材と明かした上で、
『なぜ、日本のTOEIC試験会場で、不正行為を行うのか』と質問をしたところ、5月26日の放送時間までに回答はありませんでした。
TOEIC側の不正対策です。
1、本人の顔
2、本人の確認書類
(パスポート、運転免許証、在留カードなど)
3、受験票の顔写真
この3つが一致していることを、試験官が複数回確認しています。
「さらなる再発防止策を検討し、今後も不正を確認した場合には、規定に従って厳正に対処する」としています。
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■不正受験 日本が狙われるワケ 中国・韓国では厳罰も■不正受験 日本が狙われるワケ 中国・韓国では厳罰も
不正への対策が、日本は甘い、という指摘もあります。
中国の大学入試『高考(ガオカオ)』では、顔写真だけでなく、指紋・声帯などで本人確認します。
電子機器は、外部との通信を遮断する装置を設置しています。
カンニングは、厳罰です。
『組織試験カンニング罪』は、最高7年の懲役刑です。
教育法では、他人に自分の身分をかたらせての不正の場合、受験資格を最高3年停止するとしています。
韓国です。
大学修学能力試験は、電子機器の持ち込みは禁止。
すべての試験会場に金属探知機を配備しています。
不正をした場合の受験資格は、高等教育法という法律で、1年停止すると定めています。
日本では、大学入学共通テストで、2022年に、19歳の受験生が試験問題を受験中に撮影して外部に流出させ解答を得る、という事件がありました。
処分は、偽計業務妨害の容疑で書類送検され、受験生は保護観察処分となりました。
偽計業務妨害罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
日本では、カンニングの不正が発覚した場合でも、翌年の受験は可能です。
大学入学共通テストの不正対策です。
スマホに関しては、試験前に監督者がスマホを机の上に出すよう指示して、電源を切ってカバンにしまわせています。
不正の抑止としては、机に貼られる受験番号票に、『不正行為を行ったら成績が無効になる』と注意書きをして、受験生の目に触れるようにしています。
「電波の遮断装置の導入には、約100億円の費用が見込まれ、コストが高額。電波法上の免許を有する者の配置など、運用面でも難しい」と発言しています。
「(大学入学)共通テストの志願者は、約49万人いるが、不正を行う人は毎年2ケタいくかどうか。ほとんどの受験者がちゃんと受けてくれている中で、過度に制限をかけるのはどうかと考えている」と説明しています。
「日本の対策は性善説に基づいているが、中国では、『不正受験』はビジネスとして成立している。今後さらに外国人受験者は増えるので、厳格な対策が必要だ」ということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年5月26日放送分より)