歌手の橋幸夫さんが、中等度の『アルツハイマー型認知症』の診断を受けていたことが、明らかになりました。
橋さんが公表した『アルツハイマー型認知症』が、帯状疱疹のワクチンを接種することで、発症リスクが低下するという研究結果が発表されました。
また、認知症の発症リスクを減らす生活習慣についても見ていきます。
■橋幸夫さん 歌も忘れ始め…母も認知症 家族歴で発症リスクも
異変に気付いたきっかけです。
「橋さんの言葉がおかしい。同じことを何回も言う」と報告を受けました。
そして2024年の秋、症状を確認するため、石田社長が一緒にステージに上がりました。
「社長、きょうは20周年おめでとうございます」
と話してから10秒も経たないうちに、また、
「社長、20周年おめでとうございます」
と同じ言葉を繰り返し、質問と全く異なる回答をすることもありました。
歌については、50〜60年前の歌も、曲が流れたらしっかり歌えたということです。
しかし、2025年に入ると、橋さんは、歌も忘れ始めるようになりました。
2月の公演では、同じ発言を繰り返す橋さんに客席から笑いが起こり、橋さんが「何がおかしいんだ」と怒る場面もあったということです。
「(橋さんは真面目に話をしているのに、笑われたので)橋さんにとって、一番つらかったのでは」と話しています。
橋さんは、
●2022年12月、79歳のときに、軽度アルツハイマー型認知症、
●2024年12月、81歳のときに、中等度アルツハイマー型認知症と診断されました。
これまで、病気を公表せず、活動を続けていましたが、5月の大阪公演で、歌唱予定だった3曲を歌い切れませんでした。
「俺、みんなに迷惑かけているのか?しばらく休む」と話したということです。
現在、橋さんは、症状の程度は日によって変わりますが、日常生活に支障はないということです。
「17歳から(65年間)の芸能生活から鑑みて、大きな支障を来さない範囲での定期的なステージなどの芸能活動維持が望ましい」と話しています。
「仕事をしたいという気持ちがある以上、応援する」としていて、今後も橋さんは歌手活動を続けるということです。
橋さんは、認知症だったお母さんの介護をした経験があります。
橋さんのお母さんは、70代半ばころ、認知症を発症し、橋さんと妻らが約5年にわたり介護をしました。
アメリカの医学誌『Neurology』によると、アルツハイマー型認知症を発症するかどうかは、家族歴(近親者が発症しているか)が影響するということです。
第一度近親者(家系図の青色の部分/両親・きょうだい・子ども)にアルツハイマー患者が1人以上いる場合、発症リスクは、約1.7倍。
2人以上いる場合、発症リスクは、約4倍であると報告されています。
第一度近親者(青色)と第二度近親者(ピンクの部分/祖父母、孫、おじ・おば、甥・姪 など)に1人ずつアルツハイマー患者がいる場合、発症リスクが約2倍です。
遠い関係でも、血縁者にアルツハイマー患者が多いほど、自身の発症リスクが高くなることが報告されています。
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■認知症 65歳以上『6.7人に1人』発症の時代到来■認知症 65歳以上『6.7人に1人』発症の時代到来
今後、認知症の高齢者は増加していきます。
全国の認知症の高齢者数です。
2022年時点では、推計で約443万人でしたが、現在50代である団塊ジュニアの世代が65歳以上になる2040年には、約584万人で、6.7人に1人が認知症になると推計されています。
認知症の主な種類を見てみると、橋幸夫さんも診断された、アルツハイマー型認知症が約7割を占めています。
アルツハイマー型認知症とは、長い年月をかけて脳内に、たんぱく質の『アミロイドベータ』や『タウ』が異常にたまることにより脳の神経細胞が破壊され、脳に萎縮が起こり、認知機能に障害が起こるというものです。
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■最新研究 帯状疱疹ワクチンで認知症発症リスク減少!?■最新研究 帯状疱疹ワクチンで認知症発症リスク減少!?
認知症の最新研究です。
4月2日、イギリスの科学誌『ネイチャー』で、アメリカのスタンフォード大学などのチームが、帯状疱疹のワクチン接種で、認知症の発症リスクが減少したと発表しました。
調査は、イギリス西部のウェールズの71歳〜88歳の約28万人を対象に、2013年から7年間の医療データを解析しました。
接種したのは、『帯状疱疹の生ワクチン』です。
イギリスのウェールズでは、2013年9月に79歳を対象に、帯状疱疹のワクチン接種を開始しました。
接種開始当時に、接種対象となった人と、接種対象外だった人を比較した結果、接種対象となった人のワクチン接種率は47.2%。
接種対象外だった人の接種率は0.01%と、ほぼゼロでした。
この2つのグループは、ワクチン接種以外で、教育水準や生活習慣病など認知症に影響する要因に大きな違いはありませんでした。
7年間の調査結果で、ワクチン接種をした人は、接種していない人と比べて、認知症の発症率が低かったことがわかりました。
調査結果では、ワクチン接種後の7年間で、認知症の発症リスクは20%低下しました。
そして、効果は、女性のほうがあったということです。
「発症率の低下という結果には、非常に興味がある。帯状疱疹にかかった時のつらさと後遺症を考えると、予防接種は受けた方が良いが、結果として認知症予防となるなら一石二鳥」ということです。
日本での帯状疱疹ワクチンの接種は、2025年4月から、65歳を対象に定期接種となっています。
■発症に関係『14のリスク』生活改善などで最大45%予防に
認知症の年代別のリスク予防です。
2024年7月、イギリスの医学誌『ランセット』は、世界中の認知症の最新研究を基に、14項目のリスク要因を改善することで、認知症を最大で45%予防できる可能性があると発表しました。
14の認知症の発症リスクは、3つのライフステージ年代別に、それぞれの時期で認知症につながるリスクを提示しています。
3つのライフステージとは、
1、18歳まで
2、18歳から65歳まで
3、65歳以降
となります。
14項目あるリスクのうち、3つのライフステージのなかで特に高いリスクを見ていきます。
まず、『18歳まで』では、『教育機会の不足』による認知症のリスクを5%と推計しています。
学びを増やしていくことで、脳の神経ネットワークが強化され、リスクは減少するため、子どもたちが学べる環境を整備することが大切だとしています。
『18歳から65歳』では、高いリスクが2つあります。
まず、一つ目が『難聴』です。
難聴によるリスクは、7%と推計されています。
難聴により耳からの刺激が減少すると、脳の活動が減少します。
会話ややり取りができないことが、気分の落ち込みや社会的孤立につながり、認知症の発症リスクを高める可能性があるということです。
予防については、補聴器を使用している人は、使用していない人よりも、認知症リスクが減るとしています。
『18歳から65歳』の高いリスクの2つ目が、『高LDLコレステロール』(悪玉コレステロール)です。
リスクは7%と推計されています。
悪玉コレステロールが動脈硬化を起こし、脳血流の低下を招き、脳にダメージを与えます。
そして、アミロイドβ(ベータ)の蓄積を促すということです。
予防については、アメリカでの研究で、善玉コレステロールの増加が、認知症の発症を予防するということです。
『65歳以降』で、認知症発症の高いリスクが、『社会的孤立』です。
発症リスクは、5%と推計しています。
社会や人との接点が減ることで、会話が減り、脳への刺激が減少するためです。
健康への気遣いが減少すると指摘されています。
予防としては、デイサービスの利用やグループ活動などへの参加が、大切だということです。
「生活改善や社会交流などを行うことは、認知症発症前において薬物療法よりも重要。食事・運動・睡眠などに注意して、前向きに人との交流を心がけ、生活のリズムを作ることが大切」ということです。
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■血液検査で脳内判断!?認知症の早期発見で効果的治療へ■血液検査で脳内判断!?認知症の早期発見で効果的治療へ
アルツハイマー型認知症は、早期発見が重要です。
現在、アルツハイマー型認知症の早期発見方法としては、『アミロイドPET検査』があります。
これは、脳内のアミロイドβ(ベータ)の蓄積の有無や、程度を調べるもので、早期に異常の検出が可能です。
早期発見・早期治療につながります。
ただ一方で、検査に約2〜3時間かかります。
検査の費用は、一定の要件を満たした場合だけ保険が適用され、3割負担の場合、7万円〜7万5000円程度かかります。
そんな中、5月16日、アメリカのFDA・食品医薬品局が、アルツハイマー型認知症を診断する血液検査を承認しました。
どのような検査なのでしょうか。
病院などで採血した血液を、専用の検査薬と検査機器にかけ、血液中のアミロイドβ(ベータ)やタウを測定し、その数値から、脳内の蓄積状況を推測します。
これは、診察や認知機能検査などを経て、医師が必要だと判断した場合に、血液検査を実施し、結果と合わせて総合的に判断するということです。
「血液検査であれば、採血だけで済む。さらに、どのクリニックでも採血は可能なため、検査できる機会が広がる。日本でも、早くて夏以降の承認申請を目指している」と話しています。
こうした検査などで早期発見をすることで、効果的な治療につなげられます。
「アルツハイマー型認知症は、早期の治療がとても重要。血液検査が導入されたら、これまでよりも速やかに、治療薬使用の可否の判断が可能になる」
現在、アルツハイマー型認知症の治療薬は、2種類あります。
2023年9月に承認された『レカネマブ』です。
塊になり始めたアミロイドβ(ベータ)を除去します。
対象は、早期段階の症状の軽い人で、認知機能の低下を2〜3年遅らせる効果が期待できます。
2024年9月に承認されたのが、『ドナネマブ』です。
過剰に蓄積したアミロイドβ(ベータ)の塊を除去します。
対象は、早期段階の症状の軽い人で、認知機能などの低下を約1年半後の時点で、28.9%抑制するということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年5月27日放送分より)