与野党の“皇族数の確保”をめぐる協議が、大詰めを迎えている。皇室は現在、16人の皇族で構成されていて、皇位継承権を持つのは、秋篠宮さま、秋篠宮ご夫妻の長男である悠仁さま、上皇さまの弟である常陸宮さまの3人だ。
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皇族の人数自体が減り、皇室の将来が不安視される中、2024年5月から「安定な皇位継承」のための与野党協議が始まった。論点の1つが「結婚後も女性皇族が皇室に残る案」。現状の皇室典範では、女性皇族は結婚すると皇室を離れるが、皇室に残ることも選択できるようにする内容だ。これについては、各党がおおむね合意しているが、女性皇族の夫や子どもを皇族にするかで意見が分かれている。
そして、もう1つの論点が「旧宮家の男系男子を養子に迎える案」だ。1947年に皇室を離脱した11の旧宮家の子孫を「養子」として皇室に迎えるものだが、現段階で養子に応じる人がいるかは不透明だ。
そんな中、読売新聞が「皇統の安定・現実策」を提言して、反響を呼んでいる。紙面では、安定的な存続のために「女性・女系も排除すべきでない」と提言した。これに賛同する声もある一方、伝統的に続いてきた「男系男子」の皇統が途絶えると反対する声が上がる。
将来にわたって「皇統を安定」させるには、どのような方法があるのか。『ABEMA Prime』では、有識者と議論した。
■「男系の血筋をひかない者が天皇になると、認める人と認めない人に分かれる」

明治天皇の玄孫(やしゃご)であり、皇室問題に詳しい竹田恒泰氏は、「女系天皇は前例がないため、前例がある形で何かできないかと、国会で議論されている」と説明する。主な論点は「女性皇族が皇室の地位に残る」と「旧皇族から養子を取ることで、今ある宮家を残す」ことで、後者は「歴史的にそうしてきた」のだという。
長きにわたる皇室の歴史で「皇統が途切れそうになったことは、3、4回ある」そうだ。「その時には、傍系の宮家、つまり歴代天皇の男系の血をひいている者から、天皇を擁立した。歴史を踏み外さなければ、正統性が確保できる」。
加えて、「もし男系の血筋をひかない者が天皇になると、認める人と認めない人に分かれる」と危惧する。「正統性が危ぶまれると、『こんなの天皇として認めない』という人が一定数出る。憲法第1条に『天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』と書いてあるのに、『認めない』という人が何割も出ると問題だ」。だからこそ、「歴史にのっとって皇位継承できるように、皇室典範を微修正して、養子を旧宮家の男系男子に限って取れるようにしたらどうかとの案だ。法的にも歴史的にも、正統性が揺らがない天皇を確保できる」と語る。
■「女性・女系も含めた選択肢を次世代に渡すべき」

宮内庁に23年間勤務した皇室解説者の山下晋司氏は、「皇位継承は先送りにしようとなっているが、一番大事な話を先送りにして、派生した話を議論しても結論は出ない」と考えている。「男系維持派は、将来の女系天皇の芽をどれだけ摘めるかを考えている。ただ、どちらかと言えば、悠仁親王殿下の時代になったときの選択肢として、女性・女系も含めた選択肢を次世代に渡すべきだ」。
過去を振り返ると、推古天皇(33代)、元明天皇(43代)、明正天皇(109代)、後桜町天皇(117代)など8人・10代の女性天皇が存在した。いずれも父が皇族の「男系」女性天皇だ。

女性天皇容認も必要ではないかと指摘する宗教学者の島田裕已氏は、「伝統は時代によって変わる。男性に限定することで、厳しい状況が生まれたのは事実だ。明治政府は“家社会”を作ろうとして、国民の模範と位置づけの天皇も男性だと偏らせた。女系ではなく、女性天皇については、今の時代に反対する人はほとんどいない」と考えている。
実際の皇族たちは、どう考えているのだろう。山下氏は「利害関係者である天皇家が意見を述べることは、憲法解釈上、非常に難しい」としつつ、「それが覆ったのが、上皇陛下の退位だ」と話す。「あれも政府は『上皇陛下から国会に対しての言葉』ではなく、『上皇陛下のお気持ちを国民が受け取り、国民が国会を動かした』との解釈にした。もしそれが可能なら、天皇家としての考えを出す必要があるのではないか。そうでないと話が片付かない」。
■皇族の存続はどうすべき?

政府の有識者会議は2022年、「結婚後の女性皇族が引き続き皇室に残れるようにする」「戦後 皇族から外れた旧宮家の『男系男子』を養子にする」の2案を示した。
島田氏は「結婚問題が、非常に難しくなっている。皇族に嫁ぐ人が果たしているのか。そうした家は、嫁ぐことに賛成するのか。女性宮家になると、そのハードルはさらに高くなる」との見解を示す。
これに竹田氏は「ハードルが上がるのはその通りだ。せっかく恋愛しても、『結婚して皇族になる』となれば、それはためらうだろう」と返す。「女性宮家の創設は、女性天皇や、その先の女系天皇がセットだ」。
一方で、女性宮家の創設には、反対の立場だ。「理由にウソがある。『公務の担い手確保』を挙げているが、皇族でないとできない公務は、摂政と国事行為臨時代行だけだ。私の祖父も皇族から民間人になったが、団体の名誉会長職を続けていた。宮中祭祀や園遊会、被災地訪問も行える。むしろ民間人として活動の幅が広がる」と持論を述べた。
山下氏は「今までの皇室は、身分社会の中でつながってきた歴史がある。日本は身分社会でなくなって、まだ80年だ。今は『一般人か、皇族か』となっているが、かつては支える人たちがある程度いて、その一族から結婚の話が上がるのが普通だった。そうした状況で今まで持ってきたが、それを今後も続けるべきなのかかが問われている」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)