国立大学病院が深刻な経営難に陥り、昨年度の赤字額が、過去最大となったことが明らかになりました。
50年ほど前に開院した筑波大学附属病院。
改修工事が行われた病棟もありますが、開業以来、ずっと使われている病棟もあります。
昨年度は、28億円と過去最悪の赤字。医療機器も古いものを使い続けています。
超音波エコーの装置。本来、バッテリーで動かせるものですが、いまは、電源につながないと使えない状態です。使用している機材の7割以上が、保証期間切れだそうです。
「手術室で使うような、本当に生命に直結するような装置。こういったものは、優先的に更新・配備していく必要があるが、買い替える余裕が、すべての医療機器にあるわけではないので、ある程度、我慢して使えるものは、そのまま使っている」
全国各地の病院が、同様の苦しい状況にあります。国立大学の病院長らが会見を開き、訴えました。
「令和6年度(2024年度)は、285億円の赤字になっていて、いかんともしがたい状況。もし、このまま支援がなかったら、間違いなく潰れます」
全国44の国立大学病院で、合わせて285億円と過去最大の赤字です。
国立大学の病院といっても、2004年に法人化され、国からの交付金は当時と比べ、3割ほど減らされています。
高齢化で医療費の増大が、社会問題となっている時代。収益は、年々、増えているものの、費用がそれ以上に増しているそうです。
「医療に関わる医療材料や医薬品も、どんどん値上がり。その一方で、診療報酬は、一定のままなので、病院の持ち出しというか、経費率が上がってきている」
この病院では、患者の体への負担が少ないロボットを活用した手術など、高度な医療を提供していますが、院長は、こう話します。
「医療の進化のために 大学病院として取り組まなければいけないが、経営的には、決してメリットの大きなものではない。むしろ、持ち出しの方が、どちらかというと多い。簡単に言うと、やればやるほど損をする状況。病院長会議で話していたが、『1、2年は頑張れるが、そこから先は、崩壊の一途だよね』。もたない、みんなの気持ちが」
よい病院ランキング日本一の東京大学病院も経営難の例外ではありません。
脳などを検査する装置。耐用年数は10年ですが、買い替えができず、もう18年使い続けているそうです。
コロナ禍でスタッフ不足に陥り、約40床を閉鎖。時が経ち、再開させたいところですが、そうはいかないのが実情です。
「人を雇うためには、それだけ人件費がかかる。本来、入る患者が入らないので、その分、収益は下がる。必要のない電機は消したり、地道な努力と、いろんな医療行為に使う材料、手術のときに使うガーゼなど、少し安いメーカーにする。そういう努力を行っている。それでも十分な設備投資できていないのが実情で、古い機械を使っている」
臓器移植手術を日本で最も多く実施しています。先端的だからこその問題がここでもあります。
「実は、臓器移植は赤字医療で、やればやるほど赤字幅が膨らむ。そういうこともあって、なかなか民間の参入が少ない。赤字であっても、収益性が悪くても、やらないといけない医療がどうしても大学に集まってきているというところがある」
国立大学病院に限らず、全国の病院の6割以上が、赤字という危機的状況にあります。
病院側が求めるのは、診療報酬の引き上げです。
「補正予算的なものをつけていただくのも必要。やはり、来年の診療報酬改定で、より一層、現状を理解していただいて、診療報酬に反映していただくことも大事だと思っている」