家電修理の達人・今井和美さん(66)に届いたのは、年代物の扇風機。なんとSOSは“微笑みの国”タイからでした。百戦錬磨の達人も初めて挑んだ超レトロ家電。海を超えたSOSに応えることはできるのでしょうか?
復活なるか?“昭和レトロ”家電
どんなに古い家電でも、修理成功率90%以上!家電修理の達人・今井和美さん。三重県津市の市街地から車でおよそ1時間にもかかわらず、今井さんのもとには、連日全国からSOSが舞い込みます。
この日訪れたのは、なんと片道6時間半かけて埼玉から来た杉山一元さん(87)。直してもらいたいというのが、こちら。
1981年に発売されたレトロ扇風機。以来44年間愛用してきました。3段階の風量調節ボタンがあり、ダイヤル式の「おやすみタイマー」も。半世紀近く大事に使ってきましたが、2年ほど前に突然動かなくなりました。
「どこもそうだけど『部品がない』って」
何としても、直したい訳があるという依頼人。果たして達人の手で直るのか?
「もう硬化しちゃっているんだ」
達人が目をつけたのが、この羽を回転させる部分。本来なら潤滑剤で満たされるはずが、ほとんどが蒸発。一部は固まってしまっています。
慣れた様子で新しい潤滑剤を入れていきます。
新しい潤滑剤で丁寧に満たし、わずか3分で修理完了といいますが、ちょっと心配そうな依頼人。果たして、レトロ扇風機は動くのか?見事に回り始めました!
「よかった!ありがとうございます。こんな早く直るとは。モーターのトラブルかと思っていた。グリスか」
「電話で聞いた時からこれで直ると思っていた。理由は山ほど直したから。100台は直したから」
修理代は8000円。新製品を買った方が安く済むような気もしますが、エアコンよりも長年慣れた扇風機が、かけがえのない相棒だといいます。
「この微風が、すごく良いんですよ。すごく良い風がくる。本当に良いやつですよ。可愛いやつだから。遠かったけどきたかいがありました。社長ありがとうございました」
誰にでも使い続けたい物がある。その思いに応えたい。それが今井さんの原動力。
小学生時代から独学で腕を磨き、家電修理歴は半世紀以上。舞い込むのは、メーカーや他の業者が修理不可能とさじを投げた難題ばかり。
時を超え、思い出あざやかに カラーの映写機
この日届いた依頼品は、1980年代の8ミリフィルム映写機。依頼人は70代の女性です。
「掃除をしていたら出てきた。テープも出てきたから映してほしいと。比較的私のところに入ってくる映写機の中ではきれいですね」
早速、点検してみます。
フィルムを巻いたリールを回転させる軸が全く動きません。なぜ、動かないのか。内部を調べると。
リールを回すためのゴムベルトが、内部のあちらこちらでボロボロに。
故障原因のボロボロになったゴムベルトを掃除機で吸い取り、こびりついたゴムも細部までクリーニング。それが終わると、棚から次々と取り出したのが…。
これぞ達人自慢のコレクション。あらゆる修理に対応するための部品のストックです。その中から1つを選び、はめてみます。すると…。
早速、依頼人から一緒に送られてきたフィルムでテストします。果たして…。
地元で有名な花火大会の映像に今井さん大興奮!その後、映写機を持ち依頼人の元へ向かいます。
依頼した70代の女性は、映写機は40年ほど前に亡くなった父の遺品で、家族の何気ない日常や地域の風景を撮影していたと言います。しかし、なぜ今修理の依頼を?
高齢化が進むこの地域。懐かしの映像を見ることで、みんなを元気づけたい。そんな思いからだと言います。実際に映写してみると、映し出されたのはカメラの前を横切る、着物姿の若い女性。依頼人の女性が20歳のころのお正月の映像だといいます。
「カラーで良い、この機械は。大体白黒が多い」
お父さんが残した映写機が、地域に元気と彩りを与えてくれるに違いありません。
評判は海を越え…
この日、今井さんにかつてないSOSが。
それは海外からの依頼品。中から表れたのはかなりの年代物と思しき、鉄などの金属でできた扇風機です。中心には筆記体でS・E・Wと書かれ、これは東芝の前身「芝浦製作所」のロゴマーク。
実は、日本初の電気扇風機を開発したメーカーです。およそ100年前、昭和2年のカタログには扇風機ではなく「電氣扇」と書かれています。依頼の品はそんな時代に作られた扇風機。
それにしても、なぜタイから100年前の日本の扇風機の修理依頼が?
タイ・バンコクの中心部から車でおよそ20分。そこは、錦鯉が泳ぐ池まであるまるでリゾートホテルのような豪邸でした。
依頼人のオットーさん(69)はエンジニア。豪邸を案内してもらうと、ツルのはく製が迎え入れる、中国の骨董(こっとう)品がずらりと並ぶ部屋に…。
オットーさんはタイでも有数の骨董品コレクター。世界各国の骨董品が所狭しと並べられていました。そのなかでも、修理を依頼した扇風機は特別なものだといいます。
「タイの修理業者に出したけど、10分だけ動いてまた壊れちゃった」
そんなオットーさんが、最後にたどり着いたのが日本の今井さんでした。実はそれには訳がありました。
100年前の扇風機にピンチ!
1年前、今井さんはタイ出張修理の旅に。今井さんはタイの娯楽である野外映画を上映するための映写機の修理に無事成功。達人の腕前は、タイでも「知る人ぞ知る」存在になっていたといいます。
果たして達人は、オットーさんの思いに応えることはできるのか。早速点検してみると、電源コードの先端が切れていたため、電気が流れていなかったことがすぐに判明。電源コードの先とコイルを繋ぎ無事一件落着。かと、思いきや…。
なんと、らせん状に巻かれたコイルのどこかで断線が。百戦錬磨の達人も、これには頭を抱えます。
コイルの断線の場合、丸ごと交換するのが一般的だと言いますが、そもそも100年前のコイルは手に入りません。
それでも依頼人の思いに応えたい今井さんは、何百回と巻かれたコイルから、わずか0.5ミリの断線を見い出しつなぎ合わせます。さすがの達人でも簡単ではありませんが、職人魂に火がつきます。
なんと、今井さん断線の先を見つけ出しました。ハンダで断線したところをつなぎ、果たして…。
見事、100年前の扇風機が息を吹き返しました。実際に壁に取り付け確認。100年前の扇風機ですが、しっかり首を振りスイッチで風量も切り替えができ、4段階調節もしっかりと。まさに昭和家電の底力!修理完了です。
奇跡の復活「感謝の気持ちでいっぱい」
さらに、今井さんはあることに気付きます。
日本とタイでは電圧が違うため、修理した扇風機をそのままタイで使えば、再び故障するだろうと心配。そこで今井さんは、扇風機とともにある秘密兵器を番組スタッフに託します。大事な宝物が戻ってきて、オットーさん大喜び。果たしてタイでも動き出すのでしょうか。
見事、タイでも無事扇風機が動きました。
「ビッグサプライズ。本当にうれしいです。ただ飾っておくより動いてくれる方がうれしさが全然違います。感動しています」
「動くようになってうれしいです。コープンマークカー。ありがとう」
今井さんがスタッフに託したのは変圧器。これで電圧が違うタイでも安心です。
「今井さん、感謝の気持ちでいっぱいです。本当に動き出すとは夢にも思いませんでした」
「良かった良かった。白い建物に合うね。その黒い扇風機が」
今井さんはきょうも、誰かのSOSに応えています。



























