もはや日常になりつつある記録的な暑さを逆手に、農家の人が奮闘しています。南国の果物がより身近になるかもしれません。
南国の果物 なぜ首都圏で?
午前9時、千葉県内にある農産物の直売所がオープンするやいなや、並んでいた人たちが手にとるのは、見慣れない赤い果物です。これは、一体?
「食べる前は『どうだろうな?』と思ったけど、食べたらめちゃめちゃおいしくて、ずっと買っている」
果物をカットすると…南国の果実「パッションフルーツ」です。
「種の周りに果肉が付いている。種も食べられる。種がプチプチした食感で甘くておいしい。南国の香りがするので、トロピカルフルーツの代表格。甘味と酸味と風味がすごく良いフルーツ」
「パッションフルーツ」は南米原産。
「南国にしかないというイメージなので、船橋で買えるのがすごくびっくり」
なぜ、千葉県の直売所で売られているのでしょうか?
そもそも、パッションフルーツの収穫量第1位は鹿児島県、第2位は沖縄県です。第3位は東京都で、主な産地は小笠原諸島や八丈島などです。続いて第4位が…実は千葉県なのです。10年前にはトップ5には入っていませんでした。
訪ねたのは、先ほどの直売所の近くにあるナシ農園です。これからナシの収穫が最盛期を迎えるなか、同じ畑には…。
「パッションフルーツがこちら。空いたスペースに植えている。着色したものから収穫が始まる」
赤く色づいているのはパッションフルーツです。7月下旬から8月下旬にかけて収穫するといいます。
なぜ、ナシの畑でパッションフルーツを育てているのでしょうか?
「ナシの直売と(パッションフルーツの)収穫時期が合った。自分が食べて本当においしいと思った。ぜひ皆さんに食べてほしい。興味がわいて作ったのがきっかけ」
果樹園がある船橋市では、20日の最高気温が35.3℃で猛暑日を記録。今月は30℃を超えた日が、20日までの20日間で実に16日にも及んでいます。
「今はルビースターという品種。どの品種が千葉県で栽培に適したものか、そこからのスタートだった。かなり試行錯誤のうえ、やっとここまできた」
温暖化が進む今、この猛暑を逆手にとって東京でも南国の果物を作る農家が増えています。
八王子市の畑で育った「パッションフルーツ」です。市内では16軒の農家が作っているといいます。
温暖な気候の地域で育っていた果物が、気候変動により、産地が変わる現象は今後さらに加速していくとみられています。
例えば、柑橘(かんきつ)類の温州みかんは現在、主に和歌山県や愛媛県など温暖な気候で栽培されています。ところが、日本の農業を研究する「農研機構」の推計では、温暖化の影響で2060年代には南東北の沿岸部が栽培に適した地域になると予測されています。
また、青森県を始め東北地方が主な産地であるリンゴは、北海道の道北や道東に栽培に適した地域が広がるとみられます。
すでに、今年の記録的な猛暑は、南国の果物に影響を与えています。
「6月中旬からの暑さの影響で、着果数は少ない。実自体は本当に甘い、おいしいパッションフルーツ」
出荷量は減ったものの、その甘さを生かしたジェラートが人気です。ミルクと合わせることで、パッションフルーツの酸味と風味がより際立つといいます。
「おいしい。甘酸っぱくて2つの味、ミルクが入っている」
今、国内で注目されている南国発祥の野菜や果物は他にも…。
都内にある沖縄料理店の名物メニューが「パパイアチャンプルー」です。南国・ベトナムで育った「パパイア」で、実が熟す前は「青パパイア」と呼ばれています。
「きゅうりに近い。けっこう歯ごたえがあるので、サラダにしたり」
国内産の「パパイア」を群馬県で見つけました。
「こちら、ひとつの畑なんですけど、半分にパパイア、半分にオクラ」
群馬県の南西部、富岡市の畑です。大きな葉っぱの裏側を見てみると、ありました!青色の実がなっています。畑で、パパイアを育てるワケは?
「6年前に新規就農するタイミングで新たに温暖化を考えた時に、南の作物を作れないかと考えパパイアに出会った」
他の畑と合わせると、約5000個のパパイアがとれるといいます。
周辺では、4日連続で猛暑日を記録する厳しい暑さのなか、順調に育っているのでしょうか?
「この暑さにも対応できて、栽培には暑さが味方している。暑さに強いというところで、温暖化に適した作物なのかなと」