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2025年8月22日 12:01

言われてみれば…意外と身近な「マンションポエム」の魅力に迫る 研究家が語る“隠された秘密”とは 最近では「嫌われ回避」の傾向も

2025年8月22日 12:01

言われてみれば…意外と身近な「マンションポエム」の魅力に迫る 研究家が語る“隠された秘密”とは 最近では「嫌われ回避」の傾向も
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 「都市を手中にする。」「緑に、住まう。」など独特の表現が、時に話題になるマンションポエム。ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、その魅力に迫った。

【映像】実際の“世界征服系”ポエム(複数例)

 マンションポエムとは、新築の分譲マンションを販売するときにつけられる「詩をうたう」ような独特の文体のキャッチコピーを指す。

 これまで1600件以上のマンションの広告を収集し、「マンションポエム」の名付け親だという写真家の大山顕氏は『マンションポエム東京論』という研究本を出している。

 きっかけは、20年前に遭遇したあるマンションの広告。その“斜め上”のコピーに魅了されたという。

「お台場を惑星に例えている『PLANET DAIBA』というコピー」「今でもこれを超えるポエムはなかなかない」(大山顕氏、以下同)

 2004年に販売を開始した東京・お台場にあるタワーマンション。本来、恒星ではない惑星は輝かないが、お台場を「惑星のような輝きを放つ」エリアと表現したところに、こだわりを感じるという。

 また大山氏は、マンションポエムにはいくつかの特徴があると語る。

「『世界征服系』と呼んでいるジャンル。『掌中に収める』とか『手中に』とか」「一生に一度の高額商品の買い物なので、テンションを上げていかないといけない」

 「世界一のターミナルから、あらゆる都市を手中にする。」(シティタワー新宿/住友不動産/2023年築)「豊かな自然と都心の利便を掌中に。」(パークホームズ浜松町/三井不動産レジデンシャル/2023年築)など、大山氏が「世界征服系」と呼ぶマンションポエムについて、以下のように語った。

「マンションは決済が遠く、ボタン一つで買うものではなく、専門の営業さんが付き資料請求をして、ギャラリーに行き、銀行等のローンの折衝が始まり…買うのは1年後や2年後になるため、早々に最初に見たコピーのことは忘れてしまう。入口で気を引くための機能しか任されていないため、多少、浮世離れした表現が許される商品特有のコピーゆえの“ポエムみ”が面白い」

 消費者の購入意欲をそそるためディベロッパー側も広告には力を入れている。

「ディベロッパーや地域によって全然違うが、一説には(広告費は)販売価格の3〜5%程度と言われている」

マンションポエムに潜む「。」「を」のヒミツとは?

「。」で目立つマンションポエム

 大山氏によると、マンションポエムの歴史上の転換点は1997年だったという。消費税が5%に引き上げられ、山一證券が自主廃業するなど日本列島が大きく揺らいだ年である。

「1997年、『センチュリーパークタワー』が隅田川の河口の(中央区)佃にあり、コピーが『中心を住む。』。『住む。』と最後に『。』がつくところが画期的」(大山顕氏、以下同)

 当時の三井不動産が手掛けた「センチュリーパークタワー」(1997年築)。「中心を住む。」という一見、短いコピーだが、のちにマンションポエムの王道となる2つの要素を含んでいる。

 「中心を住む。」の句点を読み上げることはないが、マンションポエムにはあえて句点の「。」が多用されている。

「日本で一番有名な文章でもないのに最後に『。』がつくのは『モーニング娘。』で、奇しくも名前が付けられたのは1997年」「日本語の中に『。』が入ると、購買プロセスの導入部分で気を引くのではないか」

 また「中心を住む。」の助詞にはあえて「を」が付けられていると説明する。

「マンションを買うことはどこに住むかを選ぶこと。『を』はものを対象化する。環境の中に自分が行くのではなく、街を対象物にして自分のコントロール下に置く」

 住む場所を「自分が選びとる」というニュアンスを出すために、助詞の「を」を使うのだという。

マンションポエムの“変化”とは

大山顕氏 

 「マンションポエム」はどのように変化してきたのだろうか。大山氏は以下のように語る。

「20年、広告を集めていて期待していたことの1つは、東日本大震災でポエムが変わるのではないかということ。要するに、“免震ポエム”的なものになるのではないかと思ったが、全く変わらなかった。コロナでも全く変わらなかった。歴史的にも遡って調べていくと、バブルもあまり影響していない。驚くほどマンションポエムはこの20年くらい変わっていない」(大山顕氏、以下同)

 変わらない理由については…。

「我々が何を理想の住宅と思うかという、住宅観の変わらなさを反映している。都心になるべく近いが、緑が身近にあるという相反する2つのものを手に入れたいということは、実は戦後からずっと変わっていない」

 しかし、大山氏によると、一部に変化もあるという。

 「日本一、感じのよいタワマンへ。」(パークシティ武蔵小山ザタワー/三井不動産レジデンシャル/2019年築)や「#日本のタワーはやさしい。」(Brillia Tower 聖蹟桜ケ丘 BLOOMING RESIDENCE/東京建物/2022年築)といったように、地元との共生を感じさせる「やさしさ」系ポエムも登場している。

(『ABEMAヒルズ』より)

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