暑さへの警戒が必要な一方で、8月に入って異例の大雨が相次いでいます。
大雨を降らせる“ゾンビ梅雨”や、突然、発生する“いきなり台風”。
異例の現象が相次ぐワケについて見ていきます。
■8月なのにまるで梅雨末期 前線停滞 各地で大雨
8月8日から11日に、鹿児島、福岡、熊本などで線状降水帯が多く発生しました。
※鹿児島、福岡、山口、大分、熊本、長崎の6県で確認されています。
鹿児島の牧之原(まきのはら)の24時間雨量は、観測史上最大となる515.5ミリでした。
この大雨で熊本と福岡、合わせて6人が亡くなりました。
8月19日から、秋田では記録的な大雨となり、仙北市桧木内(ひのきない)の72時間雨量は、観測史上最大となる319.0ミリでした。
市内を流れる桧木内川が氾濫しました。
8月23日の北海道では、留萌市(るもいし)に大雨警報が発表されました。
■大雨降らせる“ゾンビ梅雨” 海面水温の高さが影響
各地で梅雨末期のようになった前線を詳しくみていきます。
本来、梅雨明けは平年7月中旬ごろに、太平洋高気圧が日本列島に強く張りだします。
梅雨前線は、偏西風が流れる位置にあるため高気圧に押し出され、偏西風が日本の北側に流れると、同時に梅雨前線も北上し、梅雨明けとなります。
なぜ8月に『梅雨末期』のような大雨が降ったのでしょうか。
8月1日ごろ、日本列島の北側を流れていた偏西風が徐々に蛇行し、日本列島を南下しました。
8月11日に九州付近を流れた後、20日ごろに再び北上する動きを見せました。
偏西風が流れる位置には前線ができるため、偏西風の通り道となった場所で雨が降ったということです。
「本来この時期は日本の北にある偏西風が南下して、まるで梅雨前線が生き返るような“ゾンビ梅雨”が日本列島にかかり、大雨となった」
「昔から夏に偏西風が南に下がることはあった。大雨になった決定的な違いは、日本周辺の海面水温が今年は非常に高い」
九州地方に大雨が降った、8月11日の海面水温です。
日本周辺の赤くなっている所は海面水温が平均25℃以上、
九州周辺はピンク色で海面水温が30℃以上の高温です。
立花さんによると、2025年7月時点で、日本周辺の海面水温は平均25℃と、観測史上最も高い状態になっていたということです。
海面水温が高いと、大気に水蒸気が多くできます。
前線に水蒸気が流れ続けることで、長期間、大雨をもたらすこととなります。
なぜ、2025年は日本周辺の海面水温が高いのでしょうか。
「梅雨が短く、日照時間が長かったため、海水の温度は深いところまで熱い」
福岡の2025年の日照時間は、梅雨明けが6月27日ごろで、平年より22日早まりました。
そのため、7月の日照時間は、2024年は208.9時間でしたが、
2025年は292時間と、約83時間多くなりました。
立花さんの調査です。
2025年6月の三陸沖の海中水温は、赤い枠で囲んでいる深さ30メートルから40メートル付近です。
平年6月だと水温は10℃以下ですが、
2025年は12℃から16℃と高温になっていたということです。
「海の深いところまで熱いと、台風が来ても海面の浅い所しかかき混ぜられず、全体の水温は簡単に下がらない」
海水温上昇に影響している梅雨明けが早まった理由を見ていきます。
2025年6月、温暖化の影響で、中国大陸の地表温度が平年より高温となったことで、チベット高気圧が北への張り出しを強めたといいます。
その影響で偏西風がチベット高気圧に押され、平年より北寄りに流れました。
その結果、日本付近にあった梅雨前線も北に上がり、梅雨明けが早まったということです。
そのため2025年の梅雨明けは、
▼沖縄が平年より13日早い、6月8日に梅雨明けしたのを始め、
▼九州北部や中国・近畿では、平年より22日早い6月27日と、統計開始以来初めて6月に梅雨明けとなり、
▼東海でも平年より15日早い7月4日と、
各地で異例の速さとなりました。
■“ゾンビ梅雨”は『大気の川』も影響 世界で異常気象も
さらに日本が大雨となった理由として、『大気の川』が影響しているといいます。
1、2025年、インド洋では海面水温が、平年より1℃から2℃高かったため、水蒸気が多く発生しました。
2、その多くの水蒸気がアジアへ流れることを『大気の川』といいます。
3、流れた大気の川は、日本まで到達します。
「日本では“ゾンビ梅雨”に『大気の川』がぶつかったことで、前線が活発化し、雨の量がより増えた」
さらに、『大気の川』は世界の異常気象にも影響しています。
8月14日、インド北部では、ヒマラヤ山岳地帯の村で、豪雨による洪水が発生し、地元メディアによると、15日時点で、少なくとも56人が亡くなり、100人以上が、けがをしたということです。
韓国では、7月16日から5日間で800ミリの大雨が降る『モンスター豪雨』が起こりました。
韓国気象庁は、
「200年に1度のレベルの場所もある」としていて、
この大雨による死者は、7月25日時点で、24人が死亡、4人が行方不明だということです。
「世界で起きている異変は、日本の異常気象にもつながっている。すべての原因は地球温暖化にある」
■九州の真横で“いきなり台風” 発生8時間で上陸 要因は?
8月21日に、突然発生した『いきなり台風』台風12号について見ていきます。
台風12号の発生の流れです。
気象庁は、8月18日午前9時の観測で、宮古島の南南東に熱帯低気圧があり、12時間以内に台風に発達する見込みがあると発表しました。
その後、熱帯低気圧のまま北上し、19日午前9時の観測で、熱帯低気圧は、台風に発達する可能性が低いと発表しました。
21日午前3時の観測では、再び、熱帯低気圧は24時間以内に台風に発達する見込みがあるとしました。
21日午前9時、熱帯低気圧が台風12号に発達し、九州の真横で台風が発生しました。
その8時間後の午後5時すぎには鹿児島県に上陸。
台風発生から24時間後となる22日午前9時には熱帯低気圧に変わりました。
2024年の、台風の発生場所です。
2024年は26個の台風が発生しましたが、多くの台風は、日本の南、フィリピンの東付近で発生しました。
日本に上陸した2つの台風が上陸するまでの時間を見ると、
台風5号は、4日と5時間30分。
台風10号は、7日と5時間かかっています。
台風12号の発生場所について、九州の真横で台風が発生するのは、非常にまれです。
屋久島より北で、九州周辺での発生は、統計が始まった1951年以降、5回ほどです。
注意点です。
日本に近いところで台風が発生すると、大雨に備える期間が短くなります。
より一層の日頃からの避難経路の確認や、非常用品の準備などが重要となります。
異例の発生となった台風12号。
1つ目の要因は『海面水温』です。
台風が発生した8月21日の海面水温をみると、九州周辺は30℃以上で、台風発生のエネルギー源となりました。
2つ目の要因は『風の影響』です。
台風が発生する前の風の流れです。
大陸からの暖かい風(季節風)と、太平洋高気圧のふちを回る風で、熱帯低気圧の回転の渦を強めたということです。
今後 日本に近いところでの台風発生は増えるのでしょうか。
「増えるだろう。時期は真夏。場所は九州に限らず、日本付近ならどこでも起こりうる」
鹿児島や熊本に豪雨被害が集中する理由について、立花さんです。
・九州の西と南には暖かい海の東シナ海と黒潮がある。
・温暖化著しい中国大陸が西にある。
・大気の川が流れ込みやすい場所に位置する。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年8月25日放送分より)