全国各地でクマの目撃や被害が相次ぐなか、東京都内でもクマに襲われる被害が発生している。専門家は身を守るカギは、「クマ撃退スプレー」を正しく使うことだと指摘した。
命を左右…うまく使えていない調査結果も
25日、山形県河北町の中心部に体長およそ1メートルのクマが出没。中学2年の男子生徒が自転車で部活動に向かう途中、クマに遭遇して追いかけられた。
23日には、東京・奥多摩町で釣りをしていた50代の男性がクマに襲われて、病院に運ばれた。その数日前には、隣接する青梅市でも駐車場を走るクマが目撃されている。
北海道・初山別村では、中学校にクマが現れハンターが発砲する事態となった。
そんなクマへの対抗策として一般の人が取れる最終手段と言われているのが、クマ撃退スプレーだ。
しかし、14日に北海道・知床の羅臼岳で登山者がクマに襲われた被害では、驚きの調査結果が発表された。
「『クマよけスプレー』とうたっている商品を所持していたが、ヒグマに対応した製品ではなく、また使用を試みたが噴射できていない」
クマから身を守るはずのクマ撃退スプレーだが、うまく使用できなかったのだ。一体何があったのか。ヒグマ対策に詳しい鳥獣対策コンサルタントの石名坂豪氏はこう推察する。
そして、クマ撃退スプレーを持っていたとしても、クマに出会ってから使用を考えるようでは遅いと指摘する。
また、どこに吹きかけるのかが重要だという。
スプレーを選ぶ際は、成分の濃度や量の多さが重要だという。
日本は品質基準なし 米国は認証制度あり
命を守る最後の砦(とりで)とも言えるクマ撃退スプレーだが、効果が立証されていない製品も販売されているという。
環境省によると、クマ撃退スプレーに関する国の基準は設けられていないと朝日新聞が伝えている。
鳥獣対策コンサルタントの石名坂氏は「防犯用の催涙スプレーが『クマ撃退にも有効』として販売されているケースもある」 という。
こうした製品は、実際にクマを撃退できるかテストしていない可能性が高いそうだ。
一方、アメリカではクマ撃退スプレーの成分について、EPA(環境保護庁)が基準を設けているという。主な成分である辛み成分の濃度や、噴射した際の距離などが基準を満たしていると認証されれば、缶に登録番号が印字される。日本でもEPAの認証を受けたクマ撃退スプレーが販売されていて、番組で調べたところ1万円〜2万円を超えるものもあった。
北日本などクマが生息している地域での登山では、こうしたクマ撃退スプレーの携帯が必須になってきているが、航空機に持ち込むことはできない。そのため現地で準備する必要があるが、クマ撃退スプレーのレンタルを行っているところもある。
知床財団では、24時間1100円でレンタルしている。使用した場合のみ、1万5400円を支払う。
その他にも、登山グッズ販売店でのレンタルや、北海道内限定で宿泊先まで配送してくれるサービスもあるということだ。
石名坂氏は「クマによる被害が増加しているなか、身を守るための最終手段である、クマ撃退スプレーの有効性が不確かというのは、非常に問題がある。安心してクマ撃退スプレーを使えるよう、明確な基準を設けるべき」と話している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年8月26日放送分より)






