成田空港で問題となっている観光客を狙う客引き行為が、羽田空港でも多発しています。なかには営業用の車両だけがつけられる緑ナンバーで客引きを行うドライバーもいます。
“違法客引き”新宿までの値段は…ドライバー直撃
成田空港で横行する送迎ドライバーによる違法な客引き行為。
「きょうは客引きしてないけど…(客引きは)認めない」
先月の番組放送後に、視聴者から1通のメールが届きました。
羽田空港でも同じような違法行為があるという情報が。実態を取材するため、羽田空港へ向かいました。
外国人観光客でにぎわう第3ターミナルの国際線到着ロビー。大きなスーツケースを引く人であふれるなか、何かを見定めるようにたたずむ人の姿がありました。すると、続けざまに外国人観光客に声を掛けるアジア系の男性。声を掛けてはスマホを見せ、何かを話しています。声を掛けられた外国人観光客はこのように話します。
男性が行っていたのは、成田空港で行われていたのと同じ違法な“客引き行為”です。
その後も、次々に声を掛け続ける男性。およそ2時間後、3人の男性観光客にスマホを見せながら会話。そして数分後、スーツケースを受け取り歩き始めます。男性が案内しながら到着したのは、一般客らが車を止める駐車場。男性が客の荷物をトランクに積み込んでいるところを直撃しました。
「予約されていました?」
「NO」
「間違えました」
「どこをどう間違えた?」
「新宿、同じ住所」
「同じ住所だったから、予約しているお客さんと思った?」
「そうです」
予約した客と人違いだったと主張する男性。しかし、客に話を聞くと…。
普通のタクシー料金だと目的地までおよそ9000円で行けるところ、3000円ほど料金を水増しして請求していました。
「私のお客さんだと思ったんですけど」
「けど違ったじゃないですか」
「そうですね」
「確認は、なぜしなかったのですか?」
「新宿いけば自分のお客様じゃなくても、私の給料になって…」
そう男性は言い残すと、車の扉が閉まるのも待たず走り去っていきました。
白タク→緑ナンバー 手口と狙い
羽田空港で営業するタクシー運転手は、違法客引きによる商売への影響を訴えます。
さらに、違法客引きを行っている車は営業許可のない白ナンバーだけでなく、事業用として国に認められた「緑ナンバー」の車も数多く存在。緑ナンバーの車は、ハイヤー業者を装うことで客引き行為が摘発されづらくなるといいます。
「(緑ナンバーの車が)客引き行為をもう堂々とできているというのが、とてもじゃないけどそれは許せないっていう」
「(Q.緑と白の割合だったら、どっちが多い?)緑です。白は逆にもう本当に珍しいです」
実際に取材を進めると…。
「アジア系と思われる男性が同じ場所に立って、キョロキョロしています」
黒いポロシャツを着たアジア系の男性。観光客に近づくと、タクシーが必要か確認する様子や、客と会話する様子も。その後、スーツケースを受け取り駐車場へ。客を待たせていた男性が車に乗り、現れると…。
「緑です、緑」
緑ナンバーを付けた黒のワンボックスカーが到着。客引きについて直撃しました。
「客引きされていましたよね?」
「違います」
「予約ってされています?」
「NO」
「予約されてないってことですよね?」
「予約されたけど…」
男性は、観光客があくまで予約客だったと主張し、客引きを否定。しかし、観光客に確認すると予約の事実はなく、男性に「自分は空港に雇われたタクシー運転手だ」と言われたといいます。男性に詳しい話を聞こうとすると…。
「今、時間がないからちょっと離れて、離れて」
観光客を残し、男性は走り去っていきました。男性への直撃から3時間後、男性が再び空港ロビーへ。しばらく様子をうかがっていると、再び観光客に声を掛ける男性。観光客に話を聞くと…。
「彼が最初にどこ行くの?って声を掛けてきた」
「(Q.タクシーの予約はしていない?)していない」
観光客は予約をしていませんでした。客引きの事実を確認した取材班は、再び男性を直撃。
「また客引きされてましたよね」
「してない」
緑ナンバーを付けた車は駐車場から走り去っていきました。
中国SNSでも「連絡して」
なぜ、事業用の緑ナンバーを付けた車が空港で違法な客引きをしているのでしょうか。成田空港で営業するタクシー運転手が語ったのは、ある疑惑について。
「緑ナンバーの貸し出し」を中国のSNSで検索してみると、関連する投稿がみられました。
「緑ナンバーがほしい人は私にメッセージを下さい」
「緑ナンバーをゲットした!分かる人は連絡して〜」
仮に事業用として取得した緑ナンバーを、運行管理や勤務管理などをしていないドライバーに貸しているとなれば、道路運送法違反になる可能性があります。
そもそもどのように緑ナンバーを取得し、貸し出しているのでしょうか?番組は、犯罪ジャーナリスト・石原行雄氏と共に実態を知るという人物に話を聞くことができました。
長年、旅客業界に携わってきたAさん(仮名)。緑ナンバーを不正に貸し出すグループと接点があったといいます。
昨今、警察による取り締まりが強まっている「白タク行為」。Aさんによると、警察の摘発を逃れようと白ナンバーの運転手たちが目をつけたのが、事業用である緑ナンバーでした。しかし、緑ナンバーを取得するには大きな壁がありました。
本来タクシー会社など、旅客事業を行う会社はドライバーの勤務管理などを行う「運行管理者という資格を持つ人物を必ず在籍させる必要があります。しかし、資格取得の試験の合格率は低く、取得するまでに多くの時間と労力を要します。そこで目をつけられたのが、Aさんなどすでに運行管理者の資格を持っている人たちです。
Aさんは、誘いを断ったといいます。
国交省の対応は?
Aさんによると、「運行管理者」の名義を使い緑ナンバーを取得した会社は、その後、運行管理や勤務管理などをしていないドライバーたちに緑ナンバーを貸し付けるといいます。
一方、緑ナンバーを借りたドライバーは…。
「この緑ナンバー借りても、その会社の仕事しません」
「(Q.圧倒的に一人でやったほうが稼げる?)そうですね」
「(Q.(緑ナンバー借りて)ものすごく稼いでいる人は?)最低でも100万円は稼ぎますね。月にですね、手取りで」
Aさんが緑ナンバーを借りたドライバーから聞いた話によると、ドライバーは会社に月15万円ほど払って緑ナンバーを借り、個々に客引き行為を行うといいます。会社で働くと月収30〜40万円のところ、“違法緑ナンバー”で営業しているドライバーはその3倍から4倍稼ぐことができるという話も。
しかし、国交大臣から事業許可を得ていないドライバーが緑ナンバーを付けて営業することは道路運送法違反にあたります。
緑ナンバーを交付する国交省はこの事態を把握しているのでしょうか?
「(Q.事業者側が雇用関係のないドライバーに対して緑ナンバーを貸している。いわゆる“名義貸し”の対応は?)国土交通省として名義貸し等の可能性のあるケースにつきまして、空港において実態調査を行う等、随時情報把握をしていきたい。今把握にまさに努めているところ。引き続き、さまざまな情報提供、地方運輸局の調査、あるいは施設管理者、警察等からの情報提供も踏まえまして、事実関係はしっかり精査をしてまいりますし、当然違反事実が確認されれば厳正に対処していきたい」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年8月27日放送分より)












