長野県松本市で、毎年恒例の「松本マラソン」が中止されたことが話題になっている。
大会をめぐっては2025年2月、運営費をめぐる不正会計処理が表面化していた。実は2年前から1595万円の赤字だったが、市の担当職員らが約75万円の黒字と粉飾して、会計処理をしていた。翌2024年の大会も赤字で、計4380万円の赤字になっている。
第三者で作る検証委員会の報告では、問題が発生した原因として、「参加申し込みが減っている中で赤字を公表するとイメージが悪くなる」という事務局職員の危惧だったことを指摘した。その上で検証委員会は、この事態を生んだ背景は、松本市のガバナンスの欠如にあると痛烈に批判した。
臥雲義尚市長は、「不正な会計処理はマラソン大会の是非のみならず、松本市の行政に対する信頼の失墜という、非常に大きな事態を起こしたものだ」とコメントした。
2025年の松本マラソンは中止となり、来年以降も白紙になっている。市民は「大会に向けて練習している人は知り合いにもいるから、ちょっと残念だ」「市長だとか議員だとか、そんな話をやっている間は無理だ。全国に胸を張って『来てください』と言えるマラソン大会にして欲しい。もったいない。松本城があり、アルプスの自然がある中にコースがあるが……。なぜ松本が、あんな体たらくなのかと、非常に残念だ」と嘆く。
松本市議の花村恵子氏は、市議会には、市長が提出した予算案を疑いもせず通してしまった責任があるとする。その上で、改めて市議のあり方を見つめ直すきっかけになったという。「不正会計があったことも知らされず、これまで継続してきた松本マラソンの予算ということで、疑うことなど考えもしなかった。行政のやるべきことを疑ってかかるべきかと、逆に戸惑いを感じている」。
花村氏は「そもそものエントリー数が少なかったことが大きい」と背景を説明する。「それに見合った大会に縮小していれば(赤字も)抑えられたが、削減がなかなか進まなかった。エントリーを呼びかけるが、十分に集まらないまま行われてしまった。マラソン大会にお金はかかるが、しっかり精査しないといけなかった」。
元東京都知事の舛添要一氏は、「昨年度までは2000人いたが、今年は1000人しか参加しなかった。そうなると絶対に赤字になるはずだ、という計算ができなかった。予算案が出たときに、役人も見ているため、精査するのは難しいが、今回のケースでは経験則で『黒字になるはずがない』と言えなかったのか」と考える。
これに花村氏は、「議会でも何度か質問されたが、『大丈夫だ。予算内に収まる』と答弁されていた。突き詰めてやらないといけなかった。毎年大会が行われていたが、その都度質問があり、過去にも他の議員が質問していた」と返す。また、関わった市職員については、「今回の不正で、これから処分が決定する」と説明する。
AZ MORE国際法律事務所の中川みち子弁護士は、「報告書では、業者が費用の請求を次年度に先送りするため、損害は生じておらず、刑事的な問題はないのではないかと言われている。ただ、こうしたことを職員が好きでやることはないだろう。上からのプレッシャーなどがあったのではないか。法的な問題よりも、行政の責任が重い」との見解を示す。
一番の問題はどこにあるのか。花村氏は「不正を生み出してしまった組織体制のあり方にある。今に始まったことではないことが深刻だ。『市長には言えなかった』との表現もあり、上に対して言えない風通しの悪さが気になる」と語った。
この話題について、ABEMA的ニュースショーMCを務める千原ジュニアは「僕は近しいところに議員の方はいないので。市区町村ガチャみたいな感じがする。そこの区長・市長を選んで住むというわけではないから」とコメントした。
(『ABEMA的ニュースショー』より)