社会

ABEMA NEWS

2025年9月9日 11:31

クマ被害多発で市街地での発砲が可能に 専門家は「命がけのハンターの声をもっと取り入れて判断してほしい」と指摘 “クマ保険”も登場

クマ被害多発で市街地での発砲が可能に 専門家は「命がけのハンターの声をもっと取り入れて判断してほしい」と指摘 “クマ保険”も登場
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 東京・青梅市で駐車場を一目散に走るクマの姿が目撃されるなど、今年も各地でクマ被害が相次いでいる。

【映像】都内を激走するクマの様子(実際の映像)

 北海道・初山別村では中学校の中庭にクマが現れ騒動となったが、すぐ隣にあるお寺でも同じ個体と見られるクマが墓の周りを悠然と歩いていた。

 クマが市街地に出没し人的被害が相次ぐなか「クマ保険」が登場した。市街地でクマを駆除する際に発砲が原因で建物や車を破損した場合、自治体が所有者に弁済する必要がある。

 東京海上日動火災保険、火災・企業新種業務部の柳川輝ユニットリーダーは「自治体が損失補償を行うことになった場合の費用を3000万円を限度に支払う」と説明。クマ保険(緊急銃猟時補償費用保険)は初年度の保険料はクマの目撃件数などによって異なるが、およそ3万円から10万円で、柳川氏は「すでに全国の100を超える自治体から加入の意向をいただいている。緊急銃猟に伴う金銭的リスクを軽減することができる」と語った。

 クマ保険が生まれた背景にあるのは、9月1日に施行された「改正鳥獣保護管理法」で、ここで新たに定められたのが緊急銃猟制度。これまでクマが人の生活圏などに出没した際、市街地での猟銃の使用は警察の命令が必要だったが、今回の法改正で一定の条件を満たせば、市町村長の判断で発砲が許されることになった。

 その条件は「クマが住宅地など人の生活圏に出没したり建物に侵入したりしている」「緊急に危害を防ぐことが必要になっている」「迅速に捕獲できる手段がほかにない」「住民の安全が確保できている」というもの。

 クマ保険の登場は住宅の物的被害などの可能性を示唆する一方で、専門家によれば今回の法改正はハンターを法的にも保護することにもなると評価。猟友会所属のハンター中村憲昭弁護士は「この緊急銃猟制度を創設したのは、有害駆除という公益活動に従事するハンターを刑事処罰の危険にさらさないという趣旨で作ったものなので、制度の創設については評価をしている」とコメントした。

 ハンターへの刑事処罰への危険について、住宅地での駆除を巡って銃を取り上げられた猟師がいる。

 ハンター歴40年以上の北海道猟友会 砂川支部長の池上治男さんは「何十年も(ハンターを)やってきて、人の役に立てるというところを考えると、やっぱり銃は返してもらいたい」と胸中を吐露。

 池上さんは2018年に民家付近に出没した子グマを警察官立ち合いのもと、一発の発砲で駆除した。「命中っていうのは命を賭けての真ん中。一発で仕留める自信がないときには、絶対に引き金を引いちゃいけない」と語る池上さんだが、この出来事のあと鳥獣保護法違反として所有する銃などすべて没収された。

 理由は命がけで仕留めたたった一発が「建物に向けて発砲した」とみなされたから。銃の没収はいまも続いており、行政処分の取り消しをめぐり最高裁で係争中だ。

 中村弁護士は「現場に臨場した警察官は何も違反とか『けしからん』と思っていない。じゃあ誰が決めたんだというと、現場にいなかった誰かが判断している」とコメント。今回の法改正について、ハンターに安心感を持たせる効果があるとしたうえで、命がけのハンターの声をもっと取り入れて判断してほしいと語る。

 池上さんは「一般の人が勘違いされているのは、ハンターは誰でもがヒグマを撃てるのか? といったら、そんなことはない。ヒグマを見たら怖くてできない人もいる」と、誰でもできることではないと理解を求めた。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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