千葉県匝瑳市にある津波避難タワーが31年使えるとされていたが、わずか10年で使用不可となり波紋が広がっている。
津波避難タワーで塩害か
「いざとなった時に困るよね」
「大さびでポロポロ落ちています」
千葉県匝瑳市にある今泉浜津波避難タワー。地域住民の避難場所が今、使えない状態となっている。
手すりはどこも茶色くさびだらけ。建物の上に行くほど腐食が激しく、支柱がなくなってしまった所もある。
建てられたのは2015年で市は当初、耐用年数を31年と見込んでいたが、わずか10年で使えなくなった。
「風が強かったりすると、さびてボロボロになったのが落ちてくる。うちはちょっとだけど、向こう側の家の人なんて降ってくるらしいですよ、さびたのが」
なぜボロボロになってしまったのか。その原因を、匝瑳市で建設業を営む市議会議員の苅谷進一氏は「塩害」だと指摘する。
ドブ漬けとは、高温で溶かした亜鉛に金属を漬け込んでコーティングすることだが、このタワーは塗装でコーティングしたため、すぐにさびてしまったという。
海岸から5分ほどの距離にある津波避難タワー。今泉浜から2年半後にドブ漬けで建てられた、海から同じ距離にあるタワーには目立った腐食はない。比べてみると、その差は一目瞭然だ。
問題の津波避難タワーは立ち入り禁止に。市は建て替えを検討中だが、物価高騰などで費用が2倍近くの1億4000万円に膨らむため、改修工事のめども立っていないという。
わずか10年で使用不可に
番組ではVTRで紹介した津波避難タワーが、わずか10年で使用できなくなった理由を市の担当者に取材した。
2011年の東日本大震災で津波被害を受けた匝瑳市は、国の復興交付金を活用して2015年、問題となっている津波避難タワーを建設した。腐食した原因について市の担当者は「塩害の影響も含めて、明確な原因は特定できていない」としている。また、建設時の施工不良についても「特定は難しい」ということだ。
国土交通省は都道府県や市町村が建設を行うものとしていて、国の補助金を活用できるほか、一部では独自の補助金を設けているところもある。匝瑳市の場合は、問題となっているタワーの建設費7830万円のうち、およそ半分が国からの復興交付金で賄われたという。
匝瑳市の担当者によると、「津波避難タワーの建設には国から補助金が出たが、保守にかかる費用は市の負担で、補助金はない」ということだ。年に1回の点検を行い、追加の腐食対策を行ったということだが、腐食の進行を止めることはできなかったという。
市では使用できなくなったタワーを取り壊し、立て直す方針だ。しかし、試算ではおよそ1億4000万円の費用がかかる見込みで「現在の財政状況では、予算を確保することは困難。建設の時期は見通せていない」と話す。
また、苅谷氏は「新たな補助金を国から交付されるめどは立っていない」としている。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月9日放送分より)