「安全保障から考える未確認異常現象解明議員連盟」という超党派の議員連盟が存在する。通称は「UFO議連」。このUFO議連が今、真面目にUFOについて議論しているという。
長崎・大村市付近で8月19日夜、“謎の光”が撮影された。小さな天体が大気と衝突して、光を放つ「火球」という現象だが、さまざまな臆測が飛び交った。
実はこれまで、正体不明の「未確認飛行物体」は、日本各地でたびたび話題になってきた。東京・葛飾区の上空では2012年、“謎の光”が目撃された。星のようにも見えるが、よく見ると夜空をゆっくりと動いている。謎の光は1977年にも東京上空で目撃された。3つの光がゆっくり移動しているかと思えば、次の瞬間、光が膨らみ、着陸するように街中に消える様子がとらえられた。
今年7月26日には、佐賀県の玄海原発に、正体不明の“3つの光”が飛来したのを警備員が目視で確認し、追跡したが見失った。ドローンの可能性があるが、その正体は不明なままだ。
未確認飛行物体、つまり「UFO」はオカルトだと捉えられてきたが、安全保障の専門家は、その発想が時代遅れだと指摘する。アメリカの安全保障政策に詳しい、拓殖大学国際学部の佐藤丙午教授は、「(UFOを)オカルトとしてしまうと非常に断定的になってしまう。未確認飛行物体を確認するというのは、極めて安全保障上、重要な問題だ」と指摘する。
佐藤教授によると、8月7日に衆議院議員会館の地下で玄海原発の上空で確認された「3つの光」について、非公開での話し合いが行われたそうだ。
しかし、その光の正体について、佐藤教授は「判明していない」と明かす。「2〜3年前に(日本上空の)高高度を風船が飛んでいったケースがあった。最終的にアメリカにまで到達して、アメリカはミサイル攻撃をして風船を爆破した。あれも気象観測のための風船なのか、中国が特別な情報収集のための機材を載せていたのかわからないということがあった」。
会合に集まったのは、2024年6月に超党派の議員によって設立された「安全保障から考える未確認異常現象解明議員連盟」だ。未確認飛行物体(UFO)をふくむ「未確認異常現象(UAP)」の解明を目的として、「UFO議連」とも呼ばれる。会長は浜田靖一元防衛大臣、幹事長に小泉進次郎農水大臣、最高顧問には石破茂総理が名を連ねる。
未確認飛行物体を「安全保障上の脅威」と捉える理由について、佐藤教授は「位置情報だろう。防空施設や防空体制に関する観測だ。情報収集されたからすぐに攻撃されるわけではないが、問題が起きたときに、効率的に攻撃を受けることを考えると、それは脅威となる」と考察する。
2024年3月、海上自衛隊の護衛艦「いずも」をドローンで撮影したとされる映像が、中国の動画サイトに投稿された。これは防衛省が本物であることを認め、セキュリティーのずさんさが浮き彫りとなった。
佐藤教授は「アメリカ自体はこの問題を真剣に取り上げていて、いろいろな未確認の飛行物体に関する目撃情報も確認している」と話す。
佐藤教授によると、アメリカでUAPの研究が始まったのは、第2次世界大戦後の1947年だった。「日本が風船爆弾をアメリカに投下した時、アメリカ国内、西海岸を中心に極めて大きなパニックが起きた。『非常に緊急性が高い』とアメリカは判断して、研究を始めた」。
「風船爆弾」とは、日本軍がアメリカ本土空襲のために用いた兵器だ。無人の気球に爆弾や焼夷(しょうい)弾を搭載しており、当時のアメリカにとって“未確認飛行物体”として脅威そのものだった。
いまや、その脅威はドローンに移っている。佐藤教授は「いま、ウクライナやイスラエル、トルコ、イランなどがドローン開発を加速させている。日本においても攻撃型ドローンを採用するなど、ドローンが戦争の中で一般的な兵器として使われようとしている」と説明する。
加えて、「ドローンの技術進歩は非常に激しく、早い。そうすると、我々がいままで知らないようなドローンが出てくることは、当然ながらあり得る。日本の想像を超える。1〜2週間で過去のものになるくらい加速している」と、技術革新のスピード感にも触れる。
こうした理由から、未確認飛行物体は“オカルト”ではなく、解明が急がれる「安全保障上の脅威」だ。一方で日本では、「UFO議連」設立まで、これらの問題について本格的な議論がされてこなかったという。
「(日本では)オカルトを研究していると考えられてしまう。国としてそれをオーソライズ(認可)することになるため、文部科学省として(予算を出すことは)できない。それがオカルトと真面目な安全保障の研究を遠ざけてきた一因だ。安全保障上どういった脅威に発展していくかわからないのは、安全保障を担当する人たちにしてみると、『わからないから、あとはよろしく』では無責任な態度に思え、研究を促すようなことが必要だ」(佐藤教授)
(『ABEMA的ニュースショー』より)