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ABEMA NEWS

2025年9月10日 07:01

風速約75メートルの「静岡の竜巻」は「6段階中3番目」? なぜ予測が難しい? 気象庁元長官が解説

風速約75メートルの「静岡の竜巻」は「6段階中3番目」? なぜ予測が難しい? 気象庁元長官が解説
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 5日、静岡県内で推定風速75メートルの“過去最強クラス”の竜巻が発生。電柱が倒れ、4トントラックが横転するなどの被害が出た。

【映像】電柱・トラックが倒れ、屋根が吹き飛んだ! 衝撃の竜巻被害(リアルタイム映像も)

 この竜巻は、突風の強さを示す「日本版改良藤田スケール」において6段階のうち上から3番目の「JEF3」に該当するという。

「JEF4」「JEF5」とはどれ程の脅威なのか? そもそも竜巻が発生するメカニズムや起きやすい場所はあるのか? 気象庁元長官 西出則武氏に聞いた。

━━「JEF3」はどの程度の強さなのか?

「『木造住宅が崩壊』『鉄筋コンクリート住宅のベランダや手すりが変形』『アスファルトが剥離・飛散』といった被害が出る強さだ」

━━日本よりも竜巻被害が多いアメリカではどの程度の強さなのか?

「アメリカでは最も強い『JEF5』も発生する。これは“何もかも跡形もなくなる”ほど強い竜巻だ」

竜巻発生のメカニズム

竜巻の発生

━━どういう時に、どんなメカニズムで竜巻は発生するのか?

「大気が不安定なときに起こりやすい。例えば積乱雲ができて、風向きが地上と上空で違うことで渦巻きができ、それが竜巻の元になる」

なぜ竜巻の発生は予想が難しいのか?

ダウンバーストの発生

━━積乱雲から下降気流が生まれる「ダウンバースト」とは?

「ダウンバーストは積乱雲の側で強い雨が降ることによって、上空の冷たい空気が下に降りてきて地面に叩きつけられ、四方八方に放射状に広がっていく。竜巻はどんどん移動していって帯状に被害が見られるが、ダウンバーストは放射状に風が広がっていく」

━━なぜ竜巻の発生は予想が難しいのか?

「積乱雲の中にできる渦が直径数キロ程度で非常に小さいからだ。対して、雨であれば10数キロ単位で観測している」

竜巻の予測方法とは

雨雲の動き

━━具体的にはどのように竜巻発生を予測しているのか?

「竜巻が起こりやすい気象条件かどうかを表しているのが気象庁が提供する『ナウキャスト』だ。まず見るのは強い雨をもたらす積乱雲があるかどうかだ」

「大気の不安定度」を確認

雷活動度

「次に、大気が不安定かどうか雷注意報で見る。大気の不安定度は上空と地上との温度差などを加味している」

竜巻が起こりやすい場所は?

竜巻発生確度

━━竜巻が起こりやすい場所はあるのか?

「どこでも起こるが平野部の方が多い傾向にある。日本は山地が多いので、結果的には沿岸沿いに起こる。例えば秋田県・山形県・新潟県・石川県・福井県は冬の季節風で日本海の海上で竜巻が発生することがよくあり、それが陸上に入ってくる。九州や四国では台風が原因で竜巻が起こる場合が多いが、気象条件として、南から湿った空気が、北から寒冷前線で冷たい空気が入ってきた際に暖かい空気と冷たい空気がぶつかり合って、風向の違いから渦ができて竜巻が起こるなど、海岸と沿岸に起こりやすい傾向にある」

竜巻が発生しやすいシーズンは?

竜巻発生確認数

━━竜巻が発生しやすい時期はあるか?

「年中発生するが特に多いのは7月から10月ぐらいまでで9月が一番多い。9月が多いのは、台風シーズンということも大きく影響しているだろう」

━━風速100メートルを超えるアメリカのような竜巻が日本で発生する可能性はあるか?

「可能性は否定できないが、そもそもアメリカと日本は竜巻を起こす気象条件があまり似ていない。アメリカでは北極からの冷たい空気とカリブ海からの空気が中西部の大平原でぶつかることで非常に強い渦巻きが起こるが、日本にはアルプスなど山地がある。そのため、アメリカのようなF4(風速93〜116m/s)やF5(117〜142m/s)は起こりづらいが、絶対起こらないと言い切る根拠はない」 (ABEMA/ニュース企画)

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