約4年前からテレビやSNSなど、各種メディアで取り上げられることが増えた「トー横」、さらにその場に集まる「トー横キッズ」。新宿・歌舞伎町の東宝ビル近辺に集まる未成年者が深夜に徘徊、犯罪に巻き込まれるケースがあり、これが社会問題であるとしてニュースでも度々取り上げられている。最近ではトー横キッズを救うはずの大人が一緒になって犯罪に手を染めてしまうという事件もあった。
【映像】「大麻吸わされてハマっちゃった!」と叫ぶトー横キッズの女性
現場をよく知る人によれば日々、トー横でたむろしている若者たちは数十人、時々来る人を含めれば100人、200人という規模だろうと予測するが、「ABEMA Prime」に出演した東京科学大リベラルアーツ研究教育院教授・柳瀬博一氏は、この数について「テレビでフレームアップしてはいけないサイズのもの」「トー横キッズは現象ではなくクラスター」だとし、今後数年でトー横キッズはいなくなるという予測を立てた。
■夏のトー横はカオスな状況に

今から10年前の2015年4月、新宿・歌舞伎町で「新宿東宝ビル」が開業した。ホテル、映画館、アミューズメント施設が入り、新たな歌舞伎町のシンボル的なビルとなったが、4年ほど前からこの東宝ビル周辺に10代、20代の若者が集まり始めコミュニティを形成。路上で飲酒、喫煙などをするほか犯罪も起きている。最近でも7月には、売春目的で客待ちをしていた疑いで女性4人が逮捕(うち2人は釈放)、6月には女子児童(11)にホテルでわいせつな行為をした容疑で男(21)が逮捕。その後、懲役3年・保護観察付き執行猶予5年の有罪判決を受けた。
夏休みともなれば、集まる若者まで含めて「観光地」と化したトー横に地方、さらには海外からの観光客が次々と集まる。界隈を取材してきたYouTuber・芹野莉奈氏によれば「普段からトー横にいる人からいない人まで入り混じって、カオスな状況。いろいろな人種がいるような異様な光景だった」という。
日頃トー横に居座っている若者たちは、新たにやってくる人たちに気軽に声をかける。「初めて見る顔だなと言って話しかけてあげる子もいて、輪に入れてあげる。だから本当に何も知らずに、友だちもいない子が1人でトー横に来たら話しかけてもくれるし、お酒まで奢ってもらえて、どんどん輪が広がっていく。取材に行くような人たちには、心が開かれなかったりするが、同じにおいがする子たちには、かなりフレンドリー」と、新たなトー横キッズたちが生まれていく流れを説いた。
■100〜200人程度なら「現象ではない」「次の世代は集まらない」

各種メディアでも社会問題として取り上げられるトー横界隈の状況だが、柳瀬氏は多く語られるものとは違う角度から捉えた。「トー横キッズと言われている子の8割ぐらいはティーンエイジャーの女性。実数としてどれくらいいるのか」と質問。これに芹野氏が「目の前にいるのは数十人。ずっといる子もいればどこかでご飯を食べに行ったりホテルに泊まっている子もいる。全部足したら100人か200人くらい」と推定したが、これを聞いた柳瀬氏は「これがどういうことかというと(人数が)少ない」と切り込んだ。
つまり一部の地域に100人、200人という若者が集まったとしても、これはメディアが社会問題として取り上げるにしては、とても小さいという意味合いだ。「人数をトータルで見ても少ないし、これは本当はテレビでフレームアップしてはいけないサイズ。ロビン・ダンバーという心理学者が(人の集団サイズとして)村は150人だと言っている。そうすると『トー横キッズ』と名前はついてしまったが、これは『現象』でもなくて、この4年間ぐらいで数百人程度が関わっただけのクラスター(集合体)だ」と、一過性のものだと指摘した。
さらには「このクラスターはあと数年経ったら自然消滅する。すなわち次の世代の人たちは今の人たちを見て『あの人たちはダサい』となるから絶対に集まらない。だから『トー横キッズ』ではなく、具体的に集まっている人たちをどうケアするかの問題だ。マクロの現象ではなく、小学校の半分にもならない小さいクラスターで、まるで大きいものではない」と述べていた。 (『ABEMA Prime』より)