東京都内にある訪日外国人がチェックアウトした後の民泊の部屋の様子です。床一面にキャラクターのカードが捨てられるなど、大量のごみが散乱しています。ただ、こうしたトラブルがあっても、利用客による報復の口コミを恐れて注意できない現状があるということです。
カードが散乱…衝撃の清掃費用
SNSに投稿され、注目を集めた写真。民泊の部屋に散乱していたのは“ごみの山”です。
「ある国のゲスト、これマジか?!AIで作った加工じゃないのか?!」
部屋の隅には人気カードゲームの箱や袋などが山のように散乱。床一面にカードが投げ捨てられていました。
「ぼうぜんとしました。なんか笑っちゃった感じですよ。これ、どうしよっかみたいな」
「(Q.以前もあった?)さすがに初めてですね。もう数年間、何年も営業していますけれども過去1番ですね、このごみの量は」
民泊のオーナーである、マコさん。運営して5年ほど経ちますが、初めての経験だったといいます。
「(Q.元々予約は何人?)5〜6人ですね、大人の方」
大人6人が6日間滞在していたこの民泊は3階建ての120平米。カードなどが散乱していたのは、寝室となっている3階と…リビングやキッチンのある2階。捨てられていたカードは、およそ10万枚で足の踏み場に困るほどのごみの量でした。
当時は次の客のチェックインが迫っていたため、早く片付けることが最優先だったといいます。
「(Q.廃棄料金は?)ごみ廃棄費用が4万5000円。特別消臭作業、たばこの臭いがすごかったのでそれやってもらって1万5000円。あと緊急増員ですね、とかも含めて全部で税込み12万円弱ですね」
部屋を利用する前の状態に戻すルールを課すと利用率が下がるため、明記していませんでした。ごみの量についても制限はなし。ただ、あまりの事態に普段は請求していない追加の清掃代およそ12万円を請求しましたが、いまだ支払われていません。
賠償請求 踏み切れないワケ
長期滞在のしやすさや価格の安さなどから年々、利用者が増え続けている民泊。
春日富士さん
「これが全体の清掃の予定なんですね。もうほぼ毎日10件から、本当に多い日だと15件ぐらいの清掃予定が入っていますね」
月におよそ300件近く民泊の部屋の清掃を行っている、都内の業者。
この日、アメリカからの観光客2家族16人が1週間近く泊まった部屋を清掃するというので同行すると…。
「これは多いね、これは多すぎるな」
捨てられていたのは、大量の生活ごみ。
「缶とペットボトル混ざっています」
「大体しか分別されていないね」
英語でも表記されていたものの、ごみは分別されていませんでした。
「(Q.報酬は変わらないんですか?)残念ながら変わらない」
このような民泊のトラブル。ただ利用者に強く言えないワケがあるといいます。
注意を受けた利用客が、口コミで恣意(しい)的に低評価をつけてしまう、いわゆる“報復レビュー”。
常識を超えた廃棄物の処理などの特別清掃代や、物品の損害賠償などは本来、請求可能ですが、客からの報復レビューを恐れて請求すること自体が難しい実情があるといいます。
カードが大量に散乱していた民泊のオーナーも“報復レビュー”が頭をよぎったといいます。
さらに別の民泊では、悪いレビューを恐れ、時に過剰なサービスをすることも。
山田直人代表取締役社長
「マンションの9階で民泊をやっているんですけれども、一回あったのがお客さんが明日朝6時にチェックアウトするんですけれども、『エレベーターが故障しています』って言われたんですよ。それはもう予期できないことじゃないですか。ただ『エレベーターに乗れないのにスーツケースを持って下がることは不可能です』と言われたので、朝5時半に家を出て、スーツケースを持って1階まで運んであげる。特に料金とかもいただかずに、悪いレビューを書かれないためにやった。『レビューの奴隷』」
オーナー側は、なぜそこまで利用客のレビューを恐れて考慮しなければならないのでしょうか?
自身も民泊のオーナーで、業界に詳しい民泊革命の榊原啓祐代表は業界の仕組みとして“お客様ファースト”にせざるを得ない状況があると指摘します。
投稿者を提訴 勝訴も衝撃事実
「レビュー」が命運を左右する業界は民泊だけに限りません。
おととし5月、大阪にある歯科医院の口コミサイトに投稿されたのは…。
星1の評価とともに書き込まれた口コミ。その内容は、全くの事実無根だといいます。
「あまりにも記憶にないというかなんというか。常に勉強会等行って、知識はアップデートさせてもらってます。そもそも(患者さんと)そういうお話をしていない。施術してくれも紹介状もそういう話もなかったので、さて困ったというところですね」
さらに、投稿の中にはこんなものもありました。
しかし実際は、およそ2週間先まで予約で埋まっていたといいます。
通常業務にも影響する事態に。医師は名誉と社会的信用の回復のため、投稿した女性に対して損害賠償を求め提訴。
しかし、こうした口コミに対する裁判は一筋縄ではいかないといいます。
若松陽子弁護士
「特定して賠償までいくのが時間がかかるのと、(賠償金を)それほどもらえない」
実際に、書き込んだ人物を特定するまでにかかった期間は半年。その調査費用に、55万円を費やしました。
そして、投稿からおよそ2年。
「自らが希望していたボトックスについて医師から消極的態度が示されたことに不満を抱き、体験した事実に基づかないまま自らの印象を誇張して事実に反する投稿をした」
女性の投稿は歯科医院の社会的信用を毀損すると判断され、1審では女性におよそ26万円の賠償が命じられました。
さらに、高裁では増額されおよそ74万円の支払いが命じられましたが、裁判にかかった総費用は88万円に上りました。
「全くその労力とか時間とかは全然見合わないですね。すべてにかかった費用から考えると、費用倒れになっているというのが現状です」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年9月10日放送分より)