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2025年9月10日 15:21

民泊にごみの山…トラブル発展も「報復レビュー怖い」 現場の苦悩とは

民泊にごみの山…トラブル発展も「報復レビュー怖い」 現場の苦悩とは
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 東京都内にある訪日外国人がチェックアウトした後の民泊の部屋の様子です。床一面にキャラクターのカードが捨てられるなど、大量のごみが散乱しています。ただ、こうしたトラブルがあっても、利用客による報復の口コミを恐れて注意できない現状があるということです。

カードが散乱…衝撃の清掃費用

 SNSに投稿され、注目を集めた写真。民泊の部屋に散乱していたのは“ごみの山”です。

民泊オーナーのSNS投稿
「ある国のゲスト、これマジか?!AIで作った加工じゃないのか?!」

 部屋の隅には人気カードゲームの箱や袋などが山のように散乱。床一面にカードが投げ捨てられていました。

民泊オーナー マコさん
民泊オーナー マコさん
民泊オーナー マコさん
「ぼうぜんとしました。なんか笑っちゃった感じですよ。これ、どうしよっかみたいな」
「(Q.以前もあった?)さすがに初めてですね。もう数年間、何年も営業していますけれども過去1番ですね、このごみの量は」

 民泊のオーナーである、マコさん。運営して5年ほど経ちますが、初めての経験だったといいます。

「当時がですね、この写真なんですけども、こんな感じで、ごみがもうキッチンの上まで来ている感じ。ごみ一面、ここら辺もキッチンは全部ごみだらけになって」
「(Q.元々予約は何人?)5〜6人ですね、大人の方」
大人6人が滞在
大人6人が滞在

 大人6人が6日間滞在していたこの民泊は3階建ての120平米。カードなどが散乱していたのは、寝室となっている3階と…リビングやキッチンのある2階。捨てられていたカードは、およそ10万枚で足の踏み場に困るほどのごみの量でした。

 当時は次の客のチェックインが迫っていたため、早く片付けることが最優先だったといいます。

禁煙なのに…
禁煙なのに…
「清掃会社さんから連絡が来た瞬間に、業者さんにスタッフの増員可能ですかというご相談をしつつ、私もすぐ向かって。室内禁煙なんですけども、お部屋の中も全然たばこ臭かったので」
「(Q.廃棄料金は?)ごみ廃棄費用が4万5000円。特別消臭作業、たばこの臭いがすごかったのでそれやってもらって1万5000円。あと緊急増員ですね、とかも含めて全部で税込み12万円弱ですね」
清掃代を請求するもいまだ支払われず
清掃代を請求するもいまだ支払われず

 部屋を利用する前の状態に戻すルールを課すと利用率が下がるため、明記していませんでした。ごみの量についても制限はなし。ただ、あまりの事態に普段は請求していない追加の清掃代およそ12万円を請求しましたが、いまだ支払われていません。

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賠償請求 踏み切れないワケ

民泊の利用者
民泊の利用者

 長期滞在のしやすさや価格の安さなどから年々、利用者が増え続けている民泊。

清掃業者「NAGAREBOSHI」
春日富士さん

「これが全体の清掃の予定なんですね。もうほぼ毎日10件から、本当に多い日だと15件ぐらいの清掃予定が入っていますね」

 月におよそ300件近く民泊の部屋の清掃を行っている、都内の業者。

16人が泊まった部屋の清掃に同行
16人が泊まった部屋の清掃に同行

 この日、アメリカからの観光客2家族16人が1週間近く泊まった部屋を清掃するというので同行すると…。

「今から分別しますけど、外のごみと合わせて20袋ぐらいなんで。平均5袋とすると4〜5倍ぐらいの量」
「これは多いね、これは多すぎるな」
大量のごみ
大量のごみ

 捨てられていたのは、大量の生活ごみ。

分別もされず…
分別もされず…
「臭いな〜すごい」
「缶とペットボトル混ざっています」
「大体しか分別されていないね」

 英語でも表記されていたものの、ごみは分別されていませんでした。

「こうやってペットボトルのところに缶が入っているんですね。これ1個で見落とすと我々の責任になってしまうので、絶対に見落とせないというところでごみの量が増えれば増えるほど作業の時間がそれだけ延びるので」
「(Q.報酬は変わらないんですか?)残念ながら変わらない」

 このような民泊のトラブル。ただ利用者に強く言えないワケがあるといいます。

民泊トラブル 強く言えないワケ
民泊トラブル 強く言えないワケ
「レビュー問題がやはり一番オーナー様側にとっては深刻かと思いまして。言葉を選ばずに言うと、ある程度利用客に媚(こび)を売らなければ悪い印象になる。ハウスルールで『これダメですよ』みたいなことを強く言うと、利用客の心情としては『そんなうるさいオーナーだったらレビューで報復してやろう』みたいなことでバッドレビューを書いてしまう」
報復レビュー
報復レビュー

 注意を受けた利用客が、口コミで恣意(しい)的に低評価をつけてしまう、いわゆる“報復レビュー”。

 常識を超えた廃棄物の処理などの特別清掃代や、物品の損害賠償などは本来、請求可能ですが、客からの報復レビューを恐れて請求すること自体が難しい実情があるといいます。

「たてつけ上は請求できますが、請求したことによって利用客が“報復レビュー”を放つ場合もあるということで、それを恐れて請求しないオーナーさんもやはりいたりはされますね」

 カードが大量に散乱していた民泊のオーナーも“報復レビュー”が頭をよぎったといいます。

カードが散乱していた民泊のオーナーも…
カードが散乱していた民泊のオーナーも…
「あなたたち、おかしい使い方してますよね。つきましては、特別清掃費用かかったので、たばこの臭いとか消すのも時間かかりましたし。そういう請求をしなきゃいけないことかなと思っています。それをしちゃうと、場合によっては可能性として逆恨みをされて、悪い口コミ(レビュー)書かれるっていう可能性があるかなと思いました」

 さらに別の民泊では、悪いレビューを恐れ、時に過剰なサービスをすることも。

悪いレビューを書かれないために…「レビューの奴隷」
悪いレビューを書かれないために…「レビューの奴隷」
民泊運営「MOSVA」
山田直人代表取締役社長

「マンションの9階で民泊をやっているんですけれども、一回あったのがお客さんが明日朝6時にチェックアウトするんですけれども、『エレベーターが故障しています』って言われたんですよ。それはもう予期できないことじゃないですか。ただ『エレベーターに乗れないのにスーツケースを持って下がることは不可能です』と言われたので、朝5時半に家を出て、スーツケースを持って1階まで運んであげる。特に料金とかもいただかずに、悪いレビューを書かれないためにやった。『レビューの奴隷』」

 オーナー側は、なぜそこまで利用客のレビューを恐れて考慮しなければならないのでしょうか?

 自身も民泊のオーナーで、業界に詳しい民泊革命の榊原啓祐代表は業界の仕組みとして“お客様ファースト”にせざるを得ない状況があると指摘します。

★4.8以下はレビューが低い業界
★4.8以下はレビューが低い業界
「(最大★5の中で)基本的に★4.8、平均★4.8以下はレビューが低いっていう業界。割とオープンして間もない時に(低評価のレビューが)入っちゃうと、結構致命的な問題にはなりかねない。そのレビューを見て予約が入りづらいとか、レビューが悪いからランキングが下の方になってしまってお客様に表示されないとか、そういったことにはなってしまうので」
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投稿者を提訴 勝訴も衝撃事実

 「レビュー」が命運を左右する業界は民泊だけに限りません。

歯科医院の口コミ
歯科医院の口コミ

 おととし5月、大阪にある歯科医院の口コミサイトに投稿されたのは…。

「審美や矯正、インプラント、セラミック、口腔外科(抜歯以外)の知識は20年以上前のもの。こちらでは施術していないどころか、紹介状も書けないとのこと」
事実無根
事実無根

 星1の評価とともに書き込まれた口コミ。その内容は、全くの事実無根だといいます。

歯科医師
歯科医師
歯科医師
「あまりにも記憶にないというかなんというか。常に勉強会等行って、知識はアップデートさせてもらってます。そもそも(患者さんと)そういうお話をしていない。施術してくれも紹介状もそういう話もなかったので、さて困ったというところですね」

 さらに、投稿の中にはこんなものもありました。

「(地名)は歯科が多く、予約が取れないところもあります。しかしこちらは予約が取りやすい、そういうことだと思います」

 しかし実際は、およそ2週間先まで予約で埋まっていたといいます。

業務に支障も
業務に支障も
「常にガラガラですよみたいなイメージ的な文章なので(口コミを見た人から)“すぐ予約取れるやろ”というような電話が頻繁に掛かってくるようになって、受け付け業務が停滞するっていうようなことが多々ありました」
投稿した女性を提訴
投稿した女性を提訴

 通常業務にも影響する事態に。医師は名誉と社会的信用の回復のため、投稿した女性に対して損害賠償を求め提訴。

 しかし、こうした口コミに対する裁判は一筋縄ではいかないといいます。

歯科医院の弁護を担当
若松陽子弁護士

「特定して賠償までいくのが時間がかかるのと、(賠償金を)それほどもらえない」

 実際に、書き込んだ人物を特定するまでにかかった期間は半年。その調査費用に、55万円を費やしました。

 そして、投稿からおよそ2年。

大阪高裁の判決
大阪高裁の判決
大阪高裁
「自らが希望していたボトックスについて医師から消極的態度が示されたことに不満を抱き、体験した事実に基づかないまま自らの印象を誇張して事実に反する投稿をした」

 女性の投稿は歯科医院の社会的信用を毀損すると判断され、1審では女性におよそ26万円の賠償が命じられました。

女性への賠償
女性への賠償

 さらに、高裁では増額されおよそ74万円の支払いが命じられましたが、裁判にかかった総費用は88万円に上りました。

賠償命令が出るも…
賠償命令が出るも…
歯科医師
「全くその労力とか時間とかは全然見合わないですね。すべてにかかった費用から考えると、費用倒れになっているというのが現状です」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年9月10日放送分より)

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