社会

ABEMA NEWS

2025年9月13日 11:01

自称ハリウッド俳優に騙されて…総額7500万円を騙し取られた“国際ロマンス詐欺”の手口 当事者「そこまで恋愛もときめきもしたわけではない」息子・娘も見抜けなかった巧妙さ

自称ハリウッド俳優に騙されて…総額7500万円を騙し取られた“国際ロマンス詐欺”の手口 当事者「そこまで恋愛もときめきもしたわけではない」息子・娘も見抜けなかった巧妙さ
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 SNSやマッチングアプリを通じて知り合った相手から金などをだまし取る「ロマンス詐欺」。中でも海外の相手が、恋愛感情や親近感を巧みに利用して金銭を送らせようとする特殊詐欺は「国際ロマンス詐欺」と呼ばれている。また最近では、投資を持ちかけるケースも多く、ロマンス詐欺全体の被害は昨年の同時期に比べて件数が54.2%も増加し、被害額も275億5000万円と4割近く増加したという。

【映像】総額7500万円!女性が騙し取られた手口の数々

 「ABEMA Prime」では、実際に国際ロマンス詐欺の被害に遭った漫画家・井出智香恵氏が実体験を告白。ハリウッド俳優になりすました人に、総額7500万円をだまし取られた内容と、当時の心境を赤裸々に語り、専門家からは問題点・対応策などが紹介された。

■ファンだったハリウッド俳優から突如メッセージが

井出智香恵氏

 井出氏は1960年代に漫画家デビューを果たし、1980年代に入りレディースコミックを多数発表。人気を博し「レディコミの女王」とも呼ばれている。そんな中、2018年2月にハリウッド俳優のマーク・ラファロを名乗る人物からFacebookにメッセージをもらったことをきっかけに、国際ロマンス詐欺に遭うことになる。

 井出氏は「マーク・ラファロがたくさん出ているところに、娘に代わりにFacebookで『いいね』を押してもらっていたところ、突然メッセージが来た。無視をしていたが3週間後くらいに、私の漫画の主人公が好きだと、本人の写真を送ってきた。服装もマーク・ラファロだったし、背景にも知的な本がずらっと並んでいて『本物だ』と思ってしまった」と振り返った。他にもマークからは「仕事しているキミは最高にクール!」「とても美しい、仲良くなりたい」などのメッセージが送られてきたという。本人かと疑うこともあったが、一度ビデオ通話したことで本人だと信じて疑わないようにもなった。おそらくこれはディーフフェイクによる“なりすまし”だったのではと見られている。

 マークからのアプローチは加速する。チャットで「奥さんとうまくいっていないという相談が来た。それにまだ日も浅いのに、今度は結婚しようと言ってきた。私は70歳のおばあさんなのに、あなたは50歳ぐらいでしょと言ったのに『それでもいい』と」と、プロポーズまでしてきた。その後、PC越しに「血の誓い」で結婚式をすると、その翌月から様々な理由で送金を頼まれるようになった。「お金を落として飛行機代がないから10万円欲しいと言われたり。10万円ぐらいならと思って送ったら、その後も次々に言ってきた」。

■家族も信じ込む巧妙な手口

国際ロマンス詐欺の手口

 全てネット上のやり取りだけであれば、まだどこかでもう一度疑い、踏みとどまれたかもしれないが、手口はさらに悪質だった。井出氏が渡した金も800万円まで膨れ上がり、さすがにもう止めようと伝えた後、「1200万ドル(約13.2億円相当)の現金を預かってほしい。離婚するから妻からお金を隠さないといけない」と連絡が来ると、黒人2人が大量の黒い紙束を家に持ってきた。「すごく大きなケースに、黒いお札がびっしり入っていた。その黒人が『こうすればいいから』と何かの液体に入れて、10万円分だけ普通のお金に変えてみせた。確かに本物で使えた」。ただし、使えたのはその10万円分のみ。いわゆる“ブラックマネー”という手口だった。

 その後も、井出氏は直接マークと会うことはないまま、言葉巧みに様々な要求をされて、その都度に送金。最終的な被害総額は7500万円まで膨れた。ただ本人には、マークに熱烈な恋愛感情を抱いたという実感はない。「漫画の仕事も忙しかったし、そこまで恋愛していたわけでもない。ときめきもなかった。みんながそう言うほど馬鹿みたいになっていたわけでもない」と、今でも語る。

 状況を見れば、周囲の人が止めに入ることはなかったと不思議に思うところだが、家族もまた一緒に騙されていたことも事態に拍車をかけた。「次女は一緒に住んでいたし、お金を貸していたことも知っていたし、止めもしなかった。彼は私たち家族を全員、アメリカに呼ぼうともしていたし、次女もそれで本気でアメリカに行くつもりにもなっていた」。長男も井出氏をサポートする側に立ってしまい、送金する金の工面までした。最終的には、当初から事情を伝えていなかった長女が詐欺だと気づき、井出氏を説得。「ウソとわかってからは、ものすごい数の人たちが(対応を)やってくれた」と当時の様子を思い起こした。

■多様化するマインドコントロール

ロマンス詐欺師の正体は

 人間関係が希薄になっている孤独な老人も、国際ロマンス詐欺のターゲットにされるケースはよく見られる。自身も過去に被害経験があり、現在は国際ロマンス詐欺被害者救済のNPO「CHARMS」の代表を務める新川てるえ氏は「国際ロマンス詐欺は2000年代初頭からあるもので、コロナ禍から投資詐欺がすごく増えた。今は比率としては投資詐欺が9割を占めている」と現状を説明するが、それでも“元祖国際ロマンス詐欺”も、まだまだ被害はあるという。「SNSで出会っているので、そんなに簡単に信用しないと誰でも思うが、相手はすごく自己開示が上手で、自己開示をされると自分も開示するようになり、信頼関係が初期の段階で早く深まってしまう。また以前の国際ロマンス詐欺なら、ダーリンやハニーと言ったキラートークがあったが、最近では『運命の人』呼ばわりが多い。そう言われた人も悪い気はしない」。

 巧みなマインドコントロールによって騙された人々は、1度失ったものを取り返そうという心理も働き、さらに深刻化することもある。「お金を貸すというのも少額から始まる。『これくらいで人助けになるなら、貸してもいいかな』と。ただ人は1回お金を失うと、損失回避性バイアスが働いて、そのお金が無駄になっては困るからと、また次の要求に応えていく。それが重なり最終的に大きな金額になっている」とも述べていた。 (『ABEMA Prime』より)

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