社会

グッド!モーニング

2025年9月15日 15:18

漫画家目指せ 家賃ゼロの専用マンションに19人入居 光熱費タダ、生活費も支給

漫画家目指せ 家賃ゼロの専用マンションに19人入居 光熱費タダ、生活費も支給
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 今年4月、東京都内に漫画家専用のマンションが完成しました。生活費はすべてゼロという驚きの待遇で、プロの漫画家を多く生み出そうという挑戦が始まっています。

家賃ゼロの漫画家専用マンション

 差し入れのチキンを楽しそうに分ける若者たち。実はここ、将来“人気漫画家”になることを目指す人だけが入れる、その名も「マンガ・アパートメント」です。

「家賃」「生活費」すべて不要
「家賃」「生活費」すべて不要

 建物内には武器のようなグッズや、大量の漫画。さらに、広々としたヒノキのお風呂まで。「入居」や「生活」にかかる費用は一切かかりません。なぜつくられたのでしょうか?

 スタートから半年。テレビカメラが初めて内部に入りました。

「寮長」兼「プロデューサー」
林士平さん(43)

「おはよう。後ほど打ち合わせしよう」
「漫画家専用マンション」を立ち上げた編集者 林士平さん
「漫画家専用マンション」を立ち上げた編集者 林士平さん

 入居者に声を掛けながら、施設内を歩き回る1人の男性。この「漫画家専用マンション」を立ち上げた、編集者の林士平さんです。

 2006年、集英社に入社後、「SPY×FAMILY」や「チェンソーマン」など、数々の人気作品を手掛けてきました。多くの漫画家と接するなかで感じたのが…。

林さん
「たくさんの才能に出会ってきました。何人かは幸運にもプロになりましたし、でも(プロに)ならなかった方が、なぜなれなかったかを考えた時に、フルタイムで(別の)仕事をすると、“漫画が描けなくなる”ことが多い。その人たちに時間を渡せたらプロになれたのではないか。そういう場所があったらいいなと」

 こうした林さんの思いに賛同した企業がお金を出し、今年4月、1期生19人の入居が始まりました。

 建物の中央にあるのは、大きな本棚が並んだ吹き抜けの作業スペースです。その棚にも特徴がありました。

『短編』ばかり集まっている棚
『短編』ばかり集まっている棚
林さん
「『短編』ばかり集まっている棚です。僕は藤子先生の短編集が好きなんですけど。売れていった先生の最初の受賞作が載っていて面白い」

 さらに、コミックの「1巻」だけを集めた棚も。プロの漫画家へのステップは「読み切り」から「連載」へ。先人たちがどう歩んできたのか、効率的に“知る”狙いです。

 こちらはキッチンやダイニングのスペース。アルバイトなどをせず、漫画の制作に集中してもらうため、「家賃」や「光熱費」は“すべて無料”です。

 それ以外の生活費についても…。

生活費も支給
生活費も支給
林さん
「月々のお金(数万円)をお渡ししていて、そのなかで『食費』や『携帯代』『雑費』にしてくださいねと。住んでいる間はなるべく作家に近付く時間を過ごしてほしい」

 さらに、こんな場所もあります。

銭湯風のお風呂
銭湯風のお風呂
林さん
「こっちは真っ白な“銭湯”風」

 こちらは男性用のお風呂です。一方、女性用は…。

旅館風
旅館風
林さん
「こっちはヒノキのお風呂で、どちらかというと“旅館”風」

 24時間いつでも自由に入浴することができ、男湯と女湯は、1カ月ごとに入れ替わるそうです。

林さん
「作家さんにアンケートをとると、アイデアが湧く瞬間って、散歩する時とお風呂に入る時が一番多くて。いいアイデアが湧くといいですね」
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没頭できる環境で集中

 入居者の1人に、部屋を見せてもらいました。机やエアコン、ベッドなどもすべて完備されていました。

入居者(23)
「基本的にここで漫画を描くか、何か(本など)を見るか、それぐらい。それぐらいしかしない」

 この男性は、滋賀県の大学を卒業するタイミングでここを知り、応募したそうです。

入居者(23)
「(Q.こういう漫画漬けの日々はどう?)えっ?漫画漬けの日々?最高じゃないですか。ここがなかったら林さんとも出会えていないので。丁寧に成長させていただける場所をもらえて、僕は来られてよかった」

 他の入居者はこう話しました。

入居者(24)
「(Q.ここに来る前は?)月に10日くらいバイトして、残りは漫画を描く生活」
「(Q.こういうのができると聞いて)『ホントか?』と思いました。毎月(生活の)お金も支給されて、僕のおばあちゃんとかは『詐欺にだまされてる』って」
同じ目標を持つ人たちの交流も盛ん
同じ目標を持つ人たちの交流も盛ん

 マンション内では、“漫画家を目指す”という同じ目標を持つ人たちの交流も盛んなようです。銃を構えた時のイメージをつかめるように、手伝ってもらっていました。

 これまで数々の人気作品を世に出してきた、“敏腕”編集者の林さんに頻繁に相談できるのも大きな魅力の一つです。

入居者
「大人になったらなくなるような特殊能力…」
林さん
「読んでいて実は分からなかったのが、定期的にパーンって音が鳴っているわけじゃん。聞こえなくなったことがうれしいことだって発想の逆転で感動をつくろうとしているけど、それがのみ込めなかった。つまりはどういうことだ?って」
読み切りで8作品が掲載
読み切りで8作品が掲載

 ここでの生活が始まって、およそ半年。すでに読み切りで8作品の掲載が決まっています。まだ空いている部屋もあるため、現在は2期目の入居者を募集中です。

林さん
「もしうまくいったら、きっといろんな出版社がまだ“種の段階”の作家をサポートし始めると思う。そこからサポートすればいい作家になるんだとみんなが気付いたら、より作家になる人数も増える」

(「グッド!モーニング」2025年9月15日放送分より)

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