全国各地で竜巻の発生が相次いでいます。
静岡県で国内最大級の竜巻が発生し、住宅が破損するなど甚大な被害が出ました。
今も残る被害の爪痕と、近年巨大化する日本の竜巻についても見ていきます。
■静岡で発生 国内最大級の竜巻 甚大被害の中身
9月5日の午後1時ごろ、静岡県牧之原市から吉田町にかけて、竜巻が発生しました。
風速は、推定で約75メートル。
79人が重軽傷、1人が亡くなりました。
建物の被害です。
牧之原市と吉田町で合わせて、全半壊が163棟、一部破損が1236棟。
最大で、約1万3810戸が停電しました。
「竜巻で屋根が飛んだ。解体が決まったが、次の家が決まっていないため、車で生活をしている」ということです。
そして、3回、突風に遭遇した男性がいました。
1回目は、雨戸を閉めようと窓に近づき、サッシの枠を押さえていたところ、突風が室内で渦を巻き、飛ばされて天井にぶつかりました。
2回目は、別の窓から飛ばされて、約2メートル下にある用水路に落ちました。
3回目は、用水路から上がったところに突風が起き、近くの物につかまったところ、体が逆立ちの状態になり、全身を50針縫うけがをしました。
竜巻などの突風の強さを表す基準です。
6段階に分かれています。
今回の竜巻は、上から3番目の強さでした。
これより上の2段階は、国内では記録されていません。
気象庁は、今回の牧之原市から吉田町にかけての竜巻について、『過去最大級』という見解を示しています。
吹いた突風が竜巻かどうかは、どう判断しているのでしょうか。
竜巻と判断する過程です。
主な突風の種類には、『竜巻』『ダウンバースト』『ガストフロント』などがあります。
こういった突風は、局地的かつ短時間の現象のため、気象レーダーやアメダスなどの観測では、判断が困難です。
そのため、気象庁の職員が現地調査をします。
気象庁機動調査班による、現地調査の主な工程です。
住民などへの聞き取り調査や被害の状況から、突風の強さや風向などを推定した上で、被害分布図を作成し、突風の全体像を把握します。
こういった調査や、レーダーやアメダスなどの解析結果も総合して、吹いた突風が、
▼激しい渦巻き
▼漏斗状や柱状の雲を伴っていた
▼被害域が帯状だった
などの特徴があれば『竜巻』と判断します。
■最大級竜巻 出現 3つの“要因”「日本の竜巻アメリカ化」
三重大学大学院の立花義裕教授は、静岡での竜巻発生翌日に現地に入り、調査をしました。
今回の竜巻は、なぜ『国内最大級』になったのでしょうか。
立花教授が考える、要因1つ目は『海面水温の高さ』です。
竜巻が発生した静岡県の沿岸部は、平年と比べ3℃程度、海面水温が高くなっています。
海面水温が高いと、
1、水蒸気が大量に蒸発し、
2、上昇気流が強くなり、
3、積乱雲がより発達します。
竜巻が国内最大級になった、要因2つ目は『スーパーセルの発生』です。
スーパーセルは、巨大な積乱雲のことです。
通常の積乱雲の大きさが数キロメートル、寿命は1時間前後なのに対し、スーパーセルは、数十キロメートル、寿命は2〜3時間です。
スーパーセルが発生する条件は、
(1)地上と上空との大きな気温差、
(2)地上と上空の風の強さや風向きの大きな差です。
スーパーセルは寿命が長いため、メソサイクロンと呼ばれる竜巻の親渦ができ、回転エネルギーが竜巻に集中して、加速します。
竜巻が国内最大級になった、要因3つ目は『竜巻の同時多発的発生』です。
大きな積乱雲の下で、大きな竜巻が生まれ、その中に小さな竜巻がいくつも発生したということです。
「同時多発的発生は、日本では稀だが、アメリカの巨大竜巻ではよく起きる。竜巻が強い時に同時多発になりやすい。『日本の竜巻がアメリカ化』している」
■9月は竜巻シーズン 要警戒 発生しやすい場所とは
9月は竜巻のシーズンです。注意が必要です。
月別の竜巻の発生数を見てみると、前線や台風の影響などにより、7月から11月にかけて多くなっており、9月は最多の発生数です。
実際に9月は、竜巻の情報が相次いでいます。
5日には、茨城県日立市で、竜巻で車2台が巻き上げられました。
11日には、千葉県木更津市で、竜巻のようなものが目撃されています。
竜巻が発生しやすい場所です。
平野部や沿岸です。
起伏による抵抗が少ないため、竜巻が発生しやすく、さらに勢力を保ちやすくなります。
過去に竜巻が多く発生した場所です。
関東平野や濃尾平野、高知平野、宮崎平野、そして、今回の竜巻が発生した静岡沿岸です。
「今回被害があった牧之原市など、静岡県の沿岸部も竜巻が発生しやすい地形的条件がそろっており、過去にも複数回竜巻が確認されている」ということです。
■巨大竜巻 身を守る方法 室内・屋外にいたらどうすれば?
竜巻から身を守るための対策です。
竜巻をもたらすような積乱雲の接近のサインです。
●低く黒い雲が接近する。
●雷鳴(雷の音)や雷光(雷の光)が見える。
●急に冷たい風が吹く。
室内にいる場合は、
●窓やカーテンを閉めて、窓から離れる。
●できるだけ下の階の、窓のないトイレや浴室などへ移動する。
屋外にいる場合は、
●頑丈な構造物へ避難する。
●駆け込める屋内がない場合は、側溝などに伏せる。
●電柱や木から離れる。
他にも、注意することです。
●車の中、車庫、プレハブ、物置きへは避難しない。
車や建物ごと壊される危険があります。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年9月16日放送分より)