社会

ABEMA NEWS

2025年9月20日 07:31

韓国では韓鶴子総裁が出頭、逮捕状も 日本では解散目前「旧統一教会」の今を解説「むしろ信者の信仰は強固に」「宗教法人としての恩恵を剥奪されても仕方ない」

韓国では韓鶴子総裁が出頭、逮捕状も 日本では解散目前「旧統一教会」の今を解説「むしろ信者の信仰は強固に」「宗教法人としての恩恵を剥奪されても仕方ない」
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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が日韓で揺れている。韓国では教団幹部が尹錫悦前大統領の妻・金建希被告や尹氏の側近に対してブランド品や賄賂を送ったという疑惑が浮上し、捜査が進められている。これに教団トップの韓鶴子総裁も関与したとして出頭、その後、韓国の特別検察官は、韓鶴子総裁の逮捕状を請求したと明らかにした。  また日本でも霊感商法や高額献金などが問題になり、さらに安倍晋三元総理銃撃事件をきっかけに、多くの政治家との関係が浮き彫りとなると、今年3月には東京地裁が旧統一教会に対し解散命令を出した(教団は4月に東京高裁へ即時抗告)。

【映像】大量の信者が集まる旧統一教会の集会

 全世界では多く見積もって300万人の信者がいると言われる旧統一教会。続々と明らかになる問題で揺れ動く教団は、今後どんな方向に進んでいくのか。また形を保ち続けるのか。「ABEMA Prime」では長年取材するジャーナリストに現在の状況と未来を聞いた。

■教団トップが出頭、次々に明らかになる不正

韓鶴子総裁

 旧統一教会は、韓国で2つの事件で追い詰められている。どちらも前大統領の尹氏に関連したもので、妻・金被告にブランド品、側近に1億ウォン(約1000万円)を不正に渡したとされ、これを指示したと言われているのが韓総裁だ。韓総裁は、病気を理由に出頭要請を断ってきたが急転、17日に出頭をした。

 20年以上、旧統一教会を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏は「韓国では大統領が代わると、前政権に対しての捜査が起こりやすい。今回は尹氏や金夫人への疑惑を追求する中で、思わぬ副産物として旧統一教会の問題が出てきた。かなりいろいろな有力議員も関わっていて、一気に大きな問題になった」と経緯を説明する。

 旧統一教会と政治家との絡みは、2つの事件に留まらない。「他にもODA(政府開発援助)を引き出す見返りに、他の政治家に相当お金を使っているのでは、ということもある。韓国の報道でも、韓国に限らず日本やアメリカの政治家に対してもギャラが決まっているだとか、政界工作に相当お金を使ってきた形跡がある」。

 韓総裁の出頭を巡り、教団内も大きく揺れた。ソウル近郊では全世界から1000人を超える幹部が集まる緊急集会が開かれた。「韓総裁を支えようという祈祷を行ったらしいが、実際には“人間の盾”として強制捜査や拘束などがあった場合に、幹部の信者を守ろうという意図もあったようだ」。韓総裁が今後、逮捕されるか在宅起訴になるかは微妙なラインだが、教団トップが警察の捜査を受けて摘発されることで何かしら影響は出る。「関連企業への影響もあるが、やはり信者の内面、信仰がどうなるか。これに関しては、むしろより強固になっていく方向に行くのではないか」と、教団の危機に直面することで信仰が強まるという見解を示した。

 教団の問題だけに、トップの責任を問う声があがると思われるところだが、信者たちは韓総裁ではなく、周囲の幹部の責任と捉えている。「反応を見ていると『お母様がかわいそう』だと。幹部たちの不正な蓄財やずさんな資産管理で韓総裁に迷惑がかかっているという認識だ。韓総裁が非難の対象になることはありえないので、より崇拝が強まる傾向に行く」と内情を説明した。

■日本では解散命令「宗教法人ではなく宗教団体として存続するのでは」

旧統一教会 解散命令への経緯

 一方、日本では旧統一教会の解散に向けて進んでいる。1980年〜90年代に霊感商法や合同結婚式が社会問題化されていたが、2022年12月に被害者救済新法が成立すると、翌2023年10月に盛山正仁文科大臣(当時)が解散命令を請求。今年3月に東京地裁が解散を命令した。教団は東京高裁へ抗告してはいるものの、宗教法人であり続けることは難しいという認識も内部で持たれ始めている。

 鈴木氏は、内部の動きをどう見ているか。「解散命令は逃れられないだろうという認識もある一方で、それに抵抗するような動きもしている。最終的には宗教法人ではなく、宗教団体として存続はしていくだろう。一部の情報では、国に財産を没収されるのであれば、その前に全職員にボーナスや退職金として何十万と支払い、それを新しい後継団体に献金させるような策を練っている」と、財産維持の対策もあるという。

 解散命令そのものについては、裁判所も宗教の自由を侵さない配慮があったもので、高裁でも判断は覆らないだろうというのが、鈴木氏の見立てだ。「これまで宗教法人としていろいろな恩恵を受けてきたが、それを剥奪されてもしかたないことをしてきた。教団側は『宗教の自由の侵害だ』と言ってはいるが、最大限配慮した上で命令が出されている。地裁の決定文もかなり踏み込んだ内容での認定だったので、これを覆すのは教団にとっても、かなりハードルが高い」。

 教団は2009年に「コンプライアンス宣言」を行い、問題は是正されたとしてきた。しかし東京地裁は、宣言以前に損害賠償判決が168人・約18億円、和解・示談が1366人・約177億円にのぼるとし、また宣言以降も損害賠償・和解・示談の合計が179人・約10億円になる事態を重く見て「もはや解散によって法人格を失わせるほかに適当かつ有効な手段は想定しがたい」と、解散命令に至っている。

■安倍元総理襲撃事件も10月から裁判

 日本で旧統一教会の問題がさらに注目されるきっかけとなった事件も、10月から裁判が始まる。2022年7月に起きた安倍元総理襲撃事件だ。山上徹也被告は、母親が旧統一教会に1億円を超える献金をしたことで家庭が崩壊したと教団に強い恨みを抱いているといわれており、教団とつながりがあると考えた安倍元総理を銃撃、殺害した罪に問われている。この裁判も、山上被告による犯行が旧統一教会とどこまで関連したものとされるかがポイントになっている。

 鈴木氏は「検察は現状、自暴自棄になった山上が追い込まれてしたことで、旧統一教会の問題は、正当化するために後で持ち出したにすぎないと主張している。ただ弁護側は、やはり宗教的な虐待を放置されたから起こった問題で、それを加味して量刑判断してほしいという形だ。宗教学者や弁護士を証人申請しているところで、それを裁判所がどこまで採用するかのせめぎ合いになっている」と状況を説明した。

 日本で解散命令、韓国で韓総裁の出頭、そして日韓両国で大きな衝撃を与えた安倍元総理銃撃事件の裁判。旧統一教会を追う鈴木氏にとっても、直近は大きな動きの連続だという。「いろいろなことが新たな局面に入っている。特に安倍さんの事件から3年が経ち、当時の問題も少し下火になったような状況の中、新たに解決していない問題がいろいろ出てきた。それがどんどん解決に向かえばいい」。 (『ABEMA Prime』より)

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