2024年に日本を訪れた外国人は3600万人以上と、過去最多を記録した。そんななか「外国人による迷惑行為」が問題視されている。文化や法律を知らずにおかしてしまうケースも多いが、中には故意に行う人もいる。
ドイツ人配信者のSimon(ジモン)さん(18)は、地下鉄車内でスピーカーから音楽を大音量で流し、ダンスや“バク宙”などを行って炎上。ドイツ大使館から注意喚起も出された。この様子に、ノルウェー出身で日本在住の動画クリエイター、ミスターヤバタンさん(33)からは「すごい、嫌だ。私は応援しない」との批判が出る。
『ABEMA Prime』では、ジモンさんに、なぜこのような配信をしたのか真意を聞いた。そしてヤバタンさんも交えて、日本が直面する“外国人配信者”による迷惑行為について考えた。
■地下鉄車内で爆音、ホームでバク宙…ネット上で批判殺到

ジモンさんはドイツ出身のオンラインアーティストで、2024年に30秒間で19回バク宙を行い、ギネス世界記録になった。TikTokやインスタ等の総フォロワー数は420万人超で、夢は「スーパースター」だ。日本には2025年4月16日〜21日の5日間滞在し、スピーカーを持ち音楽を流しダンス・バク宙する動画を撮影・配信した。
一連の動画について、Xなどでは「周りの人がケガしたらどう責任を取るのか」「ただの迷惑行為」「日本の治安をバカにしている」といった批判から、「人にぶつからないように配慮していると思う」「楽しそうで一緒に踊りたくなる」「海外では電車内でパフォーマンスするのは普通」といった擁護まで、あらゆる声が出た。
ジモンさんの帰国直後にあたる4月22日、駐日ドイツ大使館は公式Xで「ドイツ人観光客の皆様 観光地の魅力を大切にしていくためにマナーを守り配慮ある行動をお願いいたします。地域の環境やそこに住む人々への『敬意』を忘れずに旅行を楽しみましょう」と注意喚起の投稿を行っている。
同時通訳によると、ジモンさんは「ヨーロッパの国よりもポジティブな反応だった。SNSではネガティブに炎上したが、現地での撮影時にはいい反響が多かった。日本滞在中は楽しい経験もできた」と振り返る。「視聴者に世界の景色を見せてあげたい。さまざまな文化の中で、僕のパフォーマンスにどう反応するか見せたい。ブラジルでも違う音楽をやった」。
公開後の反応については、「地下鉄での撮影は、あまり喜ばれないと、後になってわかった」として、「日本では異なるルールがあることはもちろんわかる。しばらく訪日の予定はないが、あまり喜んでいなかったため、次に行くときは他のことをやると思う」と語る。
ジモンさんの動画に対する鉄道会社の見解はどうか。ホームページや取材によると、JR東日本は「今後もマナー向上の呼びかけを継続して実施。鉄道警察隊と連携し毅然とした態度で対応していく」という姿勢で、東京メトロは「外国語含めてマナー向上の呼びかけに努めています。各車両にある『車内非常通報装置』で乗務員に知らせるか、駅係員に申し出いただければ対応します」としている。
■迷惑行為、どこからが違法?外国人を罰する難しさも

ジモンさんの動画に犯罪行為はあるのか。駅員の許可なく敷地内でパフォーマンスすると「鉄道営業法違反」に(1000円〜1万円未満の罰金)。騒音・バク宙などで乗客に迷惑をかけ、運行を乱したり駅員が対応に追われるおそれがあれば「偽計業務妨害罪」(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)になる。また、無許可での撮影という正当な理由がなく駅へ侵入すると「建造物侵入罪」(3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金)の可能性がある。
外国人犯罪の法律に詳しいベリーベスト法律事務所の齊田貴士弁護士は「駅構内での許可のない撮影などは認められていない。建造物侵入罪や鉄道営業法違反、偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と解説する。
警察対応については「外国人であっても、犯罪が認知されれば、日本人と相違なく逮捕・処罰するだろう」とする一方で、「国外に出た後は処罰が難しい問題がある」とも話す。「国外には日本の捜査権や裁判権が及ばない。犯罪人引渡し条約を結んでいれば、強制的に連れて来て、日本の法律で裁けるが、アメリカと韓国としか結んでいない」。
多くの場合には、相手国での“代理処罰”になるが、「その国に偽計業務妨害罪の処罰規定があるのか。同一でない規定において、同一の処罰をできる法律があるかが問題だ」と指摘する。
加えて、「法を知らないから、処罰されない」というわけではないと話す。「国によって文化が違うと言っても、違法性がないわけではない。しっかり調べた上で、ルールを守って、正当な範囲内でパフォーマンスすることが重要だ」と呼びかけた。
同じ外国人であっても、ヤバタンさんは「その国のルールやマナーや守るのは当然」と考えている。「路上撮影が多いが、周囲の通行人が映らないように撮影している。カメラも勝手に回さず、『撮影してもいいですか』と許可を取る。それは日本だけでなく、世界共通のルールだ」。
来日当初は「若くてルールもわからなかったが、撮影しなかった。2013年に日本に初めて住み、『動画撮影したい』と思ったが、日本語があまり話せず、文化やルールにも詳しくなかったため、『準備ができていない』と投稿しなかった」のだそうだ。そして「ノルウェーに帰り、日本語学校に通い、日本人の友だちを作り、準備できたと思った時に、ようやく初めて動画を撮った」と明かす。
EXIT・兼近大樹は、「“迷惑”にはグラデーションがあり、どこで線引きするかだ。ジモンさんよりも迷惑な配信者もたくさんいる。正義ヅラして人の情報を出すのはモラル違反のはずだが、みんなが熱狂して追いかける。われわれも人から見れば、『見た目がうるさいし、何しゃべっているかわからない。腹立つ、迷惑だ』と思う人もいるだろう」との考えを示す。
笑下村塾代表のたかまつなな氏は、「電車の中だから嫌がられるのか。これが路上パフォーマンスなら応援するのか。大道芸ならいいか、漫才ならいいか、など判断が難しいが、こういう人を応援できるくらい、広い心の日本でありたい」と願った。 (『ABEMA Prime』より)