大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」。発表された当時は「えっ、なんの妖怪?」「目が多すぎない?」「シンプルにキモくない?」と散々だったが、評価が一変した。
いざ万博が始まると限定グッズを求めて会場内では90分超えの長蛇の列ができ、フリマサイトでは2倍3倍は当たり前。
この評価逆転現象に、ミャクミャクグッズを開発したヘソプロダクション代表の稲本ミノル社長は「信じてるっていうか、自分の感覚値では間違いなく(万博が)始まった瞬間手のひら返しがくるというのだけは信じていた」と語る。稲本社長は「忖度まんじゅう」や「平成の空気缶」など、企画性の高い商品を開発してきたグッズ業界のカリスマだ。
そんなやり手の稲本社長でも、最初にミャクミャクを見たときは「何じゃこれ、ですよね。最初見た瞬間『もう何を考えてんねん』って思ったのは、モノ作りのこと全く考えてないデザインだなって。目がたくさんあるとか、立体物にした時のイメージで我々は見てしまうので、これ裏側とかどうなってんのとか。違和感がすごくあった。これ嫌いな人はもうめちゃくちゃ嫌いだろうなと」と感じたという。
しかし、その「違和感」に鉱脈があると見込み、当たるかどうかもわからないまま資金を投入し、500種ものミャクミャクグッズの開発に着手した。稲本社長は「弊社の女性スタッフとかも最初は『気持ち悪い、気持ち悪い』『何か好きになれない』と言っていたが、企画でミャクミャクと携わる中で『何か可愛く見えてきた』という意見めちゃくちゃ多かった。やっぱりインパクトがある=引っ掛かりがある。逆に『キモい』もギャップで良かったのだろう」と分析する。
とはいえ、万博に対するネガティブなニュースも増え、不安にさいなまれ眠れない夜が続いたという。そして万博が開幕すると、早速風が吹いた。それはトランプ大統領の存在だった。日米関税交渉を担当した赤沢大臣が手土産として渡したのが、稲本社長が手掛けた「金色のミャクミャクソフビちょきんばこ」だったのだ。稲本社長は「大きかったですね。正直。半年かけて何とか売り切れたらいいかなと思っていたぐらい。値段も8,800円ですし。ニュースになってから1週間以内に外国人がまあ買うようになった」と振り返る。
その後も稲本社長が手掛けたミャクミャクグッズは飛ぶように売れ、年商24億円の会社が今年はおよそ3倍になる見込みだという。なぜここまでミャクミャクを信じることができたのか。稲本社長はヒットの秘訣を語った。
「万博会場内でミャクミャクをみんな好きになって、みんなが身に付けたくなるという読みをしていた。“ミャクミャクなりきり”が絶対に当たると思っていた。いろいろなヒット商品をやってきたが、ヒットの秘訣は『乾き』だと思っていて、乾くときってヒットする。ミャクミャクという潤いを求めてひたすらあの乾いた会場内をずっと2時間、3時間待ってでも。どんどん広がって、会場に来ていない人にまでその渇きが移っていったと思う」(稲本社長)
(『ABEMA的ニュースショー』より)