茨城県にある関東最大の湖、霞ケ浦の漁師たちを悩ませている深刻な問題に一丸となって取り組んでいる地元の高校生がいる。一大プロジェクトが今動き出している。
アメリカナマズ問題に挑む高校生
関東最大の湖、霞ケ浦で今、ある生物が問題となっている。それが、特定外来生物に指定されているアメリカナマズだ。
皆藤勝さん
「ナマズですか…厄介者ですかね。ワカサギやシラウオやエビをいっぱい捕食しますからね」
大きい個体で体長1メートルを超えるアメリカナマズは、魚、虫、動物、何でも口にする雑食性。漁に深刻な悪影響を与えるうえに、幼魚の時は鋭利なヒレを持ち、漁の道具を傷つけるという。
「これ本当にすごいんですよ。ここがのこぎり型の骨になっていて」
茨城県では、釣り人からアメリカナマズの回収を行っていて、霞ケ浦では、一日に330キロにもなるという。
北アメリカが原産で、食用の養殖目的として1971年に輸入された。80年代になると周辺の湖に逃げ出し繁殖し、個体数が急増した。
現在は食用としては値がつかず、家畜の餌(えさ)として安く引き取られている。
“たくさんとれるのにもうからない”。そんなアメリカナマズ問題に立ち向かっているのが、霞ケ浦近くにある清真学園高校の「2年生トリオ」だ。その解決法は?
「アメリカナマズを駆除ではなく、食べて消費していこうと考えています。いいイメージにしてもらってから問題を解決しようと考えました」
清真学園高校は、研究や探究活動に力を入れる国が指定する、全国で230校の「スーパーサイエンスハイスクール」だ。
吉成侑希子さん、内田心さん、木村真維さんの3人は、釣りをきっかけにアメリカナマズ問題を知り、研究の一環として1年前から取り組んでいる。
シェフとメニュー開発 目指すは大量消費
3人はこれまで、各地でアメリカナマズの問題を訴える活動を行ってきた。
彼らが今回乗り出したのは、アメリカナマズの料理を作り「大量に食べて減らす」作戦だ。
さまざまな企業などに協力を要請するなかで、地元出身のイタリアンの眞中秀幸シェフと出会い、メニュー開発を行ってきた。
「ナマズを食べようという活動は、色々なところが今までもやっている。メニュー開発はされてきているけど、実際には日常的な消費にあまりつながっていないのが現状」
この厄介者を名物にするメニュー開発は行われてきたが、大量消費には至っていない。
しかし、眞中シェフと高校生トリオには、あるアイデアがあった。
今月4日、訪れたのは食品加工工場。
「僕はコショウが多いほうがいいと思うけどどう?」
「スパイシーが欲しいですね」
眞中シェフと考えた料理をイベントで販売しようと計画しているのだ。
加工工場のスタッフの助けも借りて大量のナマズを調理。
「これいいかも」
吉成さん
「こっちのほうがいいよね」
内田さん
「おいしい」
完成したのは「ナマズのガパオライス」。鶏肉のようにしっかりとかみ応えがあるナマズの特徴を生かした一品だ。ミンチにして香辛料をきかせることでナマズ特有の臭みを消した。
2日後、清真学園高校の学園祭で「ナマズのガパオライス」を販売することに。
買ってくれる人もいたが、行列ができる店とは対照的な結果に…。ナマズ料理と聞いて「おいしそう!」とは思ってもらえないのか?
鹿島アントラーズが賛同 Jリーグで販売
翌週、高校生トリオは眞中シェフのもとを訪ねた。
落ち込んでいる場合ではない。今度は絶対に失敗できないイベントが待ち構えていたのだ。
「社会的役割を正しく持てていることが重要。ナマズのきっかけで始まっているんだけど、霞ケ浦水系の環境問題というのを広く考えて取り組んだらすごくいい」
大切なのは、霞ケ浦の環境問題を多くの人に知ってもらうこと。改めて目的を確認しあった。
そして迎えた、イベント当日。3人が乗り込んだのは、Jリーグの試合が行われる鹿島スタジアム。彼らの活動に鹿島アントラーズが、賛同してくれたのだ。
この日の来場者は、およそ2万人。ここで300食の販売を目指す。
「ナマズのガパオライスどうですか?」
吉成さん
「限定300食です!」
「食べる?食べてみる」
「(首を振る子ども)」
「いらないか…」
やはりナマズ料理はちょっと…なのか?
チラシさえも受け取ってもらえない。しかし、諦めるわけにはいかない。目的は環境問題を知ってもらうことだ。
「清真学園でアメリカナマズのガパオライス販売しているのでぜひ買ってください」
会場の入り口で、丁寧に説明しながらチラシを渡す。すると、足を止める人が増えはじめ、気付けば店の前には行列ができていた。
「チラシを受け取ってもらえた方が、みんな食べに来てくれてうれしいです」
「友達も誘ってみるね。今向こうにいるから。誘うね!」
「やわらかくて、食べやすいです。言われなきゃ(ナマズと)分からない」
「うまい!」
「ありがとうございます!」
そして、鹿島アントラーズの小泉文明社長も…!
販売開始から7時間。目標としていた300食には届かなかったが、250食を販売した。
「問題を知ってもらうための一つの手段としてキッチンカーで販売するということをしました。僕たちが本当にしたいことは、この問題を知ってもらうだけじゃなくて、もっと消費していくために、いろんなことにつなげていくことが本当の目的なので、これは始まりにしかすぎないと思います」
霞ケ浦の未来を考え続ける3人の高校生。この活動が、周囲を巻き込み、さらに大きなプロジェクトが始まろうとしていた。
地域の学校給食にする活動も
これからがスタートという高校生の力強い言葉があったが、さらに大きなプロジェクトがある。それは、高校生と眞中シェフが考えたメニューを地域の学校給食にしようと活動しているそうだ。
そんな高校生たちが思い描く未来図がこちら。
3人それぞれにこのプロジェクトへの思いが描かれている。木村さんは「ナマズプロジェクトの可能性は無限大」。内田さんは「地域食にしたい!」。そして吉成さんは「おいしく消費しよう!」。
そして3人が目指すのは霞ケ浦の生態系を守り、持続可能な社会を築くことだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月23日放送分より)