山梨県に「村まるごとホテル」をコンセプトに観光に取り組む村がある。人口およそ600人と過疎化が進むなか、山里の風景をありのままに残そうと奮闘する男性を取材した。
梁や柱は残し…築150年の空き家を改装
都心から車でおよそ2時間。山間の道を進んだ先に見えてきたのは、1000メートル級の山々に囲まれた、山梨県小菅村。
村のおよそ95%は森林で、かつては林業や養蚕業が盛んだったが、人口は1950年代をピークに減少し、現在はおよそ600人となっている。
この深刻な過疎化が進むなか、村の自然と文化を“ありのまま残そう”と奮闘している人たちがいる。
「築年数は150年を超える古民家で、村で一番大きな家になっています」
「(Q.どんな施設ですか?)村が丸ごとホテルに!これをコンセプトにしたホテルです」
降矢さんが番頭として働く、2019年に開業した「NIPPONIA 小菅 源流の村」。
過疎化と空き家問題に取り組むホテルの姿勢に心を動かされ、降矢さんは大学卒業後に小菅村に戻ってきたのだ。
では、“村が丸ごとホテル”とは、一体どういうことなのか?
まず、客室になるのがこの建物。
高く太い梁を持つ主屋を利用した客室。日本の伝統的な家屋で使用されていた土壁も、あえて見せる構造だ。
この客室も重厚感のある土蔵をリノベーションして作られた。
かつて、養蚕業で栄えていた村の名残が垣間見える。
「大家」と名づけられた建物は、築150年を超えて空き家になっていたため、その歴史をできるかぎり残し、改装した。
ホテルの周囲もありのままの自然に囲まれている。
買い物は、村にコンビニやスーパーがないため、車で30分の大月まで出なくてはならない。
食事も村の食材をありのまま。地元の山や川からのとれたてをふんだんに使った四季折々の料理が味わえる。
人口600人の村に22万人の観光客
そして“村が丸ごとホテル”という大きな理由が、働くスタッフだ。村民がホテルの運営に関わっているのだ。
小菅村で生まれ育った細川春雄さん(69)は、JR大月駅からホテルまで、お客様の送迎を担当している。
村の魅力を知り尽くす細川さんが案内してくれたおすすめの場所は、村自慢の「雨乞いの滝」。
村で生まれ育ち、63歳まで村役場に勤めた佐藤英敏さん(70)は「村のありのままなんですけれど、畑道を歩いたりしながら、村の自然や山菜のことを話しながら案内しています」と話した。
ガイドを務める佐藤さんは、山里の風景を存分に堪能できる場所に連れて行ってくれた。
「(スタッフ:全く分からないです)香りを楽しむ野菜なんですけれど、ミョウガですね」
70歳を迎えた佐藤さんが、観光客を楽しませるために考えた渾身のギャグが、こちら!
風景や建物だけでなく、小菅村の魅力をありのままに伝える。そのスタイルは、「道の駅」や“美肌の湯”として知られる温浴施設など、周辺の施設との相乗効果を発揮している。
今では、人口600人の村に観光客が年間22万人訪れるまでになっている。
「交流人口が増えることはいいことだと思います。何もないと、ここは本当に寂しいところ。いろいろな人が来て、そうすると我々住民の雇用の場にもなる」
「県外の人や外国人が来て、すごく活発な村になったなという印象があります」
降矢さんたちと小菅村は、また新たなプロジェクトを進めている。
「ここをゲストハウスやカフェが併設された施設として運用する予定で」
廃業した旅館を改装し、来年5月をめどに開業を目指している。
降矢さんたちが思い描く未来図
今回取材した山梨県にある小菅村の変化を見ていく。
古民家を再生したホテルは現在、一日6組限定で宿泊可能で、宿泊する建物は「大家」と「崖の家」の2つある。
宿泊客数は、合わせて年間でおよそ2000人と年々増え、そのうち外国人観光客は3割ほどに上るそうだ。
降矢さんは、「古民家を再生することで、自然や文化をそのまま残したことが受け入れられた」と話す。
また、降矢さんは、小菅村と協力して新たなことにも取り組んでいる。
それが、村の中心部にある、空き家となっていた旅館を再生して観光客がくつろげるゲストハウスやカフェなどに改装する計画だという。
ここでは、村民も利用することができ、観光客との交流にもつながることを見込んでいるそうだ。
そんなホテルで働く降矢さんたちが思い描く未来図がこちら。
降矢さんが思いを伝え、同僚の方が描いてくれたそうだが、「日本の原風景を見るような、この小菅村が100年後にも残っていてほしいという願いが込められ、この村で働くスタッフや村民たちが笑顔で住むことができる環境を後世につなげていきたい」という思いが描かれているという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月26日放送分より)