先日帝国データバンクの発表により、“首都圏への本社移転”が過去最多になったことが判明した。発表によると今年上半期で、地方から首都圏に本社機能を移転した「転入」企業の数は、200社で、過去10年で最多に上ったという。逆に地方への転出は150社にとどまり、5年ぶりに「転入」が「転出」を上回る転入超過″の見込みとなった。
東京と地方、どちらに本社を置くべきなのか。『ABEMA Prime』で2人の経営者と考えた。
■「大阪より東京の方が1年は早いと思う」

スマホアプリや生成AIを開発する会社「アンドエーアイ」代表で、一昨年、大阪から東京へ本社を移転させた西真央氏は、「東京一極集中になるのは自然」との考えだ。大阪と比較すると「やっぱり1番情報が集まってくるのは東京だと思う。IT業界なので情報が命なところもあって、最新の情報が集まる場所で、事業を推進していくのが1番の近道」だと感じている。また、情報について「来てみて思ったのは、東京と大阪で流行が1年違う」と語った。
人材面では「集まりやすくなった。特に若い向上心のある優秀な人材は多いと思う。大阪も比較的多い方だけど、ガッツのある若者は東京に来ようという風になっているので、すごい人数が多い」。
しかし、デメリットには、「給与水準が高く人件費が高騰」「人材の流動性が高く従業員の勤続年数が短くなる」ことを挙げ、「仕事の相場間、給与水準も(大阪よりも)1.5倍ぐらい上がる感覚がある」と語った。
■渋谷→熊本へ 「約1年で売り上げが20倍に」

一方、企業のDX化をサポートする会社「Lbose」代表で、2020年に渋谷から熊本へ本社を移転させた小谷草志氏。移転理由について、「僕らがミッションとしているのが『“誰と、どこで、何をするが”を、もっと自由にする』。しかし、どうしても週5、8時間は出社して仕事をすることがあまりにも普通になっていた。それで(ミッションを掲げている)自分たちが、渋谷というスタートアップの聖地に本社を置いてていいんだっけ?という話になり、移転した」と説明する。
熊本本社のメリットは「働き方を自由にする”企業ミッションを体現」「東京に比べ家賃が格安」、デメリットは「リアルで人に会いにくい」「ビジネスマッチングや交流会などが充実していない」ことを挙げた。
移転後の業績については「約1年で売り上げが20倍に上がった」といい、「僕らはフルリモートの会社で、2020年4月に緊急事態宣言のタイミングで、DXの寄与みたいなのが上がってきたのが1番の大きな要因だと思っている」と分析。
現在の売上高は移転前の70倍になっているが、「本社機能をちゃんと考えないといけないタイミングだと思っている。僕らはバックオフィスを熊本に置かせていただき、それ以外のところで言うと、全体の売り上げの約6割は都内1都3県の企業、それ以外の地域の企業とも取引させていただいてるが、本社を東京に置かないとビジネスの場にならないのかは考えないといけない」と明かした。
■「東京一極集中と地方創生が相反してるとは思っていない」

地方創生についてはどう考えているのか。西氏は「東京一極集中と地方創生が相反してるとは思っていない。例えば地方の企業、お酒や食品をもっとDXを活性化していこうっていうのが地方創生だと思う。なので、東京の会社がただ地方に流れるようになるだけでは、地方創生に繋がらない。東京と地方が協力して、お互い活性化できるのが1番いいんじゃないか」と答える。
この意見に対し、小谷氏は同意し、「地方創生と言ったとき、どうしても『東京になろう』が強すぎると思っている。その地域にとって1番理想的な状態は何なのか。それを考えない限り、今の地方創生で『東京になっていこう』では難しいと思う」との見方を示した。
リザプロ代表の孫辰洋氏は、「東京で過ごすのはコスパ悪すぎる。人材競争の中、東京で人材を取り続けられる会社もそんなにないと思う。東京でリクルーティングし続けるのは、簡単なことじゃない。この先、企業として『東京に本社機能を置いても採用できない』と言い始める会社が出てきそう」と予測した。
(『ABEMA Prime』より)