社会

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2025年9月30日 08:05

戦後80年 戦禍を語る最後のイベント 戦争経験者が伝えたい想い「正義の戦争はない」

戦後80年 戦禍を語る最後のイベント 戦争経験者が伝えたい想い「正義の戦争はない」
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 戦後80年。戦争体験者が少なくなるなか、27日、都内で戦禍を知る14人が自らの体験や思いを語るイベントが開かれた。6回目の今回が最後となったイベントで、経験者たちの伝えたい想いとは。

最後の「語り継ぐ会」

元陸軍 瀬戸山定さん(99)
「砲撃を一発くらって、(同期が乗った船の)白鹿丸が沈没。海は嵐の前で荒れていたということですが、投げ出された兵士は大変です。次々に海のもくずと消えました」
元陸軍 西倉勝さん(100)
元陸軍 西倉勝さん(100)
元陸軍 西倉勝さん(100)
「日本は負けないと信じていたため、 あぜんとして持っていた手榴弾(しゅりゅうだん)で自決を覚悟いたしました」
元陸軍 呉正男さん(98)
元陸軍 呉正男さん(98)
元陸軍 呉正男さん(98)
「私の戦隊は出撃する機会はなく、幻のグライダー部隊となり、私は戦死を免れることができました」
第6回 あの戦場体験を語り継ぐ集い 証言集会
第6回 あの戦場体験を語り継ぐ集い 証言集会

 「語らずに死ねるか!」を合言葉に、86歳から100歳までの14人が登壇し、それぞれの戦争体験を語った「第6回 あの戦場体験を語り継ぐ集い」証言集会。会場には、およそ900人が集まった。

来場者 会社員(25)
「直接本人の声のトーンや顔色を見ながら聞けたのは、すごく貴重な体験だったなと思います」
来場者 大学生(22)
「戦争体験者の話を聞ける、最後の世代と言われている私たちの使命みたいなものを感じた。後世につなげられる活動ができたらいいなと思います」

 イベントを主催する「戦場体験放映保存の会」の中田順子事務局長。戦争体験者の高齢化により、2007年から始めた証言集会は、6回目の今回が最後となる。

戦場体験放映保存の会 中田順子事務局長
戦場体験放映保存の会 中田順子事務局長
「正直なところ皆さんの健康状態ですよね。当時の少年兵でも100歳超えているので、最前線を経験した人の体験を聞くのが難しいということを改めて再確認した」
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「戦争に、正義の戦争はない」

 鹿児島県から参加した坂上多計二さん(100)。1945年当時、フィリピン・ミンダナオ島の軍直営農場で野菜を作り、陸軍や海軍に補給する任務に就いていたが、アメリカ軍に追われ、密林に逃げ込んだという。

坂上多計二さん(100)
坂上多計二さん(100)
「ジャングルを徘徊(はいかい)すれば大木の根元に寄りかかり、ほほ笑んでいる日本兵を見つけ近寄ってみるともう死亡している。本当に地獄絵図のようでございました」

 密林の小屋に身を潜め自活していた坂上さん。そこで、忘れられない出来事があったという。

坂上さん
「ある夕方、弱った日本兵が『俺を泊めてくれ』と訪れてきました。こちらも極限状態で余裕もなく拒絶し追い払ったら、悲しそうな顔をして立ち去りました。翌日食料を探しに小屋を出まして、すぐ近くでその人は亡くなっており、家族写真がそこら中に散らばっていて、奥さん、子どもの写真を望郷の念を抱きながら亡くなったのかと一時胸が痛みました」

 坂上さんは、今一番伝えたいことがあるという。

「戦争に正義の戦争はない」
「戦争に正義の戦争はない」
「正義の戦争がないことを認識してほしい。戦争に、正義の戦争はない」
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戦争体験 後世に継承を

 「戦場体験放映保存の会」が主催する大規模なイベントは今回で最後となったが、戦争体験を継承する活動は続けていくということだ。

証言を始めた当初は恥ずかしい気持ちも
証言を始めた当初は恥ずかしい気持ちも

 坂上さんは、証言を始めた当初、恥ずかしい気持ちもあったという。

 それでも学生から年配の方まで、集まった人たちが真剣に耳を傾けてくれたことで次第に話すことが生きがいとなったそうだ。

 自身の戦争体験を語ることについて、「『お前たちは戦争に負けた』と言われるのが嫌で口を閉ざしてきたが、『保存の会』をおいから教えられ、自身の戦争体験を語ってみて、戦争を知らない世代にとっては、そうした話も価値があると思った」と話している。

1800人の証言動画を公開予定
1800人の証言動画を公開予定

 「戦場体験放映保存の会」の中田事務局長は、イベントとしては今回が最後となるが、これからはこれまで収録したおよそ1800人の証言動画を公開していく予定だということだ。

 動画は基本的にノーカットで公開する方針で、文字情報でも閲覧できるように、文字おこし作業を進めているほか、検索できるシステムの構築も検討している。

 中田事務局長は、これまでの活動を通して「戦争を体験した人たちは『等身大で自分の目線で伝えたい』と思っている。その思いが伝わっていかないと戦争を知っている世代、知らない世代での戦争に対する認識のギャップが埋まらない。そうしたことをこれからの活動で伝えていきたい」と話している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月29日放送分より)

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