将棋の第73期王座戦五番勝負は9月30日、名古屋市の「名古屋マリオットアソシアホテル」で第3局が行われ、藤井聡太王座(竜王、名人、王位、棋王、王将、棋聖、23)が挑戦者の伊藤匠叡王(22)に103手で敗れた。藤井王座は連敗を喫し、シリーズ成績は1勝2敗に。伊藤叡王は二冠目に“王手”をかけることとなった。次戦、大注目の第4局は10月7日に神奈川県秦野市の「元湯陣屋」で指される。
七冠保持者の藤井王座が、王座堅守に“黄色信号”が灯った。両者1勝1敗のタイで迎えた勝負所の第3局。藤井王座の地元・愛知県を舞台に争われた本局は、伊藤叡王の先手で相掛かりの出だしとなった。
両者の公式戦対戦で相掛かりが志向されたのは、昨年3月に行われた棋王戦五番勝負第4局以来約1年半ぶり。過去3局の採用では藤井王座が全勝を飾っていたものの、伊藤叡王には深い研究が用意されていたか、前例から手を変えて勝負を仕掛けていった。
超難解な駆け引きが続いた中盤戦から、一歩も譲らぬ姿勢がぶつかり合い、形勢互角のまま最終盤へ。両者徹底的な攻め合いへと展開すると、先手の金取りに対して藤井王座は敵陣に歩を打ち込む最強手で対応。しかし、伊藤叡王は動じることなく応じると、形勢は大きく伊藤叡王側に傾いていくこととなった。
苦しそうな表情を見せることが多くなった藤井王座も、なんとか流れを引き戻すべく技を駆使。それでも伊藤叡王の背中は遠ざかり、差を埋めることができずに投了を告げることとなった。

連勝で王座奪取に“王手”をかけた伊藤叡王は、「中終盤は考えていてもわからないところが多かったが、本局は比較的うまく指すことができたと思う」とコメント。一方、敗れた藤井王座は「仕掛けられる筋を想定できておらず、準備不足だった。伊藤叡王に攻め込まれ、受けに回る展開で少し自信がなかった。ここまで残り時間が少なくなってきてからのミスが続いてしまっているので、反省点をふまえつ精一杯頑張りたい」と語り、悔しそうな表情も見せていた。
この結果、シリーズ成績は藤井王座の1勝2敗となり、タイトル防衛にはここから連勝が必要となる。しかし、藤井王座は10月3日には佐々木勇気八段(31)を挑戦者に迎える竜王戦七番勝負が開幕するとあり、厳しい戦いが続く。藤井王座はこの難所を潜り抜け、王座防衛と保持する七冠を堅守することができるのか、両者の戦いから引き続き目が離せない。 (ABEMA/将棋チャンネルより)