火葬の料金を無料とする自治体もあるなか、東京23区では料金が9万円に上るなど高騰しています。小池都知事は30日、その現状を把握するため、今年度中に都内全ての火葬場で実態調査を実施する考えを示しました。
全国最高値「9万円」なぜ?
代表質問に立った5人の都議全てがこの問題に触れました。
「昨今、人件費や燃料費等が上昇しており、生活全般にわたる物価が高騰しているなか、民営火葬場の料金についても都民の関心が高まっています。都は民間の火葬場の料金について、区と共にどのような対応を行っていくのか」
「多死社会を迎え、とりわけ区部においては火葬料金の高騰が大きな問題となっています。その費用がいくらになっても、私たちにはあらがうことができません」
都議らが問題視しているのが、全国でも突出して高い東京23区の火葬料金です。
総務省の調査によると、横浜市は1万2000円、さいたま市は7000円など、隣接する県が1万円前後なのに、23区は「9万円」。全国に目を向けると、札幌市や前橋市など無料の都市もあるなか、異例の高額となっています。
「一瞬、本当に『え?年金でやっていけないじゃない』って。『死ぬにも死ねないね』と話している。こればっかりは値切るわけにはいかないから」
「実際高いのか安いのか分からない。なぜ23区だけ高いのかも疑問」
『公営』『民営』特有の事情
なぜ火葬料金が高騰しているのでしょうか。大きな理由は、民営の火葬場が高いシェアを占めているという、東京23区特有の事情です。
全国で稼働している火葬場の約97%は公営で、維持や管理に公費が使われています。一方、23区では9カ所のうち7カ所が民営で、燃料費や人件費の高騰などを理由に近年、値上げが続いています。現在の法律では、民間業者が火葬場を運営することはできませんが、法律が施行される前からあった火葬場は例外となるため、今も民営が残っています。
さらに、人口密集地の東京で、新たに公営の火葬場を作るのが難しいことも価格高騰の一因です。
“区民葬”終了 「額は会社負担」
こうしたなか、東京23区では火葬料金を安く抑える制度があります。東京23区に住んでいれば誰でも利用できる『区民葬』。簡素ながらも安いのが特徴で、制度を使えば火葬料金は5万9600円と通常の3分の2ほどに抑えることができます。
「葬祭事業者と火葬場事業者と霊柩車事業者の3体が一緒に、できるところまで価格を下げたものを提供しようと始めた」
現在は、23区にある民営の火葬場全てで取り扱われていますが、このうち6カ所を運営する『東京博善』は、区民葬の取り扱いを来年3月で終了すると発表しています。
「東京博善は東京23区の火葬を7割以上執り行っている。その火葬場が枠組みから外れることは、我々にとっては本当に残念なこと」
東京博善は、区民葬の取り扱いをやめる理由について「通常料金との差額3万円あまりは公費ではなく、会社の負担で、昨年度は2億1000万円に上ったため」などと説明しています。
今年度中に火葬場の実態把握
「火葬は人の一生にとって不可欠なものであり、火葬場には高い公共性や継続性が求められている。今後、都内の火葬場の現状を精緻に把握するなかで、事業者へのヒアリングを行うとともに、火葬場の経営管理が適切に行われる方策など、火葬場について様々な観点から検討します」
30日の都議会で小池知事は、火葬場の実態調査を今年度中に行う方針を明らかにしました。料金を含む経営への指導を可能にする法改正を、国に求めていく考えです。
一方の国は。
「火葬料金の指導については現行法の運用で可能と考えている。火葬場の運営が適切に行われない場合は、指導を行う主体の地方自治体と連携しながら必要な対応を行いたい」