社会

ABEMA NEWS

2025年10月1日 07:16

医師法違反も…「必要なタンパク質は卵12個分」突飛な例えの『架空の医師AI動画』拡散に現役医師が警鐘

医師法違反も…「必要なタンパク質は卵12個分」突飛な例えの『架空の医師AI動画』拡散に現役医師が警鐘
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 「あと30年長生きできるかもしれない」と書かれた動画。4ヶ月前に投稿され、今では67万回再生されている。これは現役医師と名乗る人物が、高齢者の健康について語る動画だ。

【映像】「必要なタンパク質は卵12個分」架空の医師AI動画(実際の動画)

 この他にも長生きや健康の秘訣などを語り100本以上の動画がYouTubeに投稿されている。語っているのは「大学病院の元部長」や「心臓病の専門医」と名乗る人物だが、AIで映像や音声を作ったとみられている。なぜこのような動画が出回り、再生回数を稼いでいるのか。現役の医師に話を聞いた。

 ファミリークリニックひきふねの梅舟仰胤院長は「健康情報というのは、ご高齢の方がすごく好きなジャンルなので、ある程度再生数を確保できるという見込みが出る。ビジネスモデルとしてはかなりおいしい」と語る。

 今ではYouTube視聴者も高齢化し、健康・医療・年金などの話題は再生回数が伸びる傾向があることから、再生回数を稼ぐ目的でこういった動画が大量に上がっていると見られている。

「60歳を過ぎた方、ある5つの習慣を朝続けることで脳卒中、認知症、骨粗鬆症のリスクが明らかに減少し、足腰もしっかりし、頭も若々しく保たれる可能性があるのです」(動画より)

 この40分の動画では、「朝に行う5つの習慣」で脳卒中などの様々なリスクが減少すると紹介。そもそもこういった医学的情報を発信する行為は許されるものなのだろうか。

「もう言語道断。完全にアウト。そもそも医師じゃない方が医師を名乗って何かを発信するということ自体が、医師法に触れる。しかも結構間違っていることも多いので、かなり危険極まりない。ただ憎たらしいところで、さすが生成AI、合っていることも言う。どこが合っていて、どこが間違っているということを判断するのを難しくしている」(梅舟院長)

 そこで、梅舟院長に見分ける方法を教えてもらった。

「1日に90gのタンパク質、これは卵12個分が必要」(動画より)

 この動画を例にあげて、梅舟院長は「1日(タンパク質)90gもご高齢の方がとったら、腎臓にかなりの負担をかけて、かなりアウト。しかも『卵12個分』という突飛な例えは、僕ら生身の医師はやらない。何かをするためには『これだけとったらいい』とは言うが、腎臓を危険にさらすことになるので、もう本当にやめていただきたい」と警鐘を鳴らした。

 ではドラマで描かれる医師はどうなのか。もちろんドラマの世界とわかった上で、現場の医師からするとこう感じるそうだ。梅舟院長は「最近の医療ドラマは昔と違って、丁寧に作り込まれている。ただ医療は“絶対”というのがないので、『絶対私が助けます』みたいなことは、実際の臨床現場ではなかなか言えない。医師はスーパーヒーローではないので、『私に任せれば大丈夫』『絶対』『大丈夫』など過剰な期待をさせることも罪だと思う。ただ、不安を解消するのが僕らの仕事なので、患者様を安心させるというところで、多少のゲタを履かせて安心させるようなことを言う場合もある」と説明した。

「現代社会は特にご高齢の方もそうですが、みんなとにかく不安なので、安心したいというのが大前提にある」(梅舟院長)

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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