東京都の小池知事が、都内の火葬料金の高騰を受けて、「法の見直しを国に求めていく」と表明しました。
なぜ東京23区だけ、火葬料金が高いのでしょうか。
値上げが続く理由について見ていきます。
■“越境火葬” 東京は高い 隣県移動し火葬も
東京23区での火葬事情です。
23区に住んでいるパート勤務、65歳・Aさん。
2025年8月、東京23区に住んでいた、91歳の母を亡くしました。
火葬は、葬儀業者と相談して、母親の自宅に近い23区内の火葬場で行いました。
火葬は、火葬費用を抑えるためと、控えめだった母親を思い、骨つぼはシンプルな容器に決めました。
骨つぼ代と手数料を合わせて、約10万円でした。
「火葬は、料金が高くても、やらなければいけないので支払うが、他の所では、無料や数千円だと聞くため、費用負担が大きいと思った」
港区在住の70代・Bさん。
3年前に、港区に住んでいた70代の弟を亡くしました。
港区には火葬場がないため、品川区内の民営の火葬場を利用しました。
火葬場に併設された斎場で、家族だけの通夜をしない『一日葬』を行いました。
葬儀料金は、火葬料を含めて30万円を超えました。
「弟は独り身だったので、人も呼ばず、お線香をあげて火葬するだけだったが、値段が高いと感じた」
火葬料金が高いということで、東京23区以外で火葬する人もいます。
50代のCさん。
世田谷区の病院で80代の父が亡くなりました。
父親は、神奈川県川崎市の市民でした。
喪主を務めたCさんは、世田谷区に住んでいます。
葬儀です。
Cさんによると、東京23区で火葬をすると、火葬料金は、5万9600円。
父親が住んでいた川崎市で火葬すると、火葬料金は6750円です。
都内の火葬場より遠い川崎まで霊柩車を使って運ぶと、約2万円の運賃がかかりますが、全体的に割安なので、Cさんは、父親の火葬を川崎市で行いました。
「都内の火葬料金が高いことで、東京・南部の人が、神奈川の川崎市や横浜市で、東京・東部の人が、千葉の市川市で火葬することが、ここ数年で増えてきていると思う」ということです。
■火葬料金9万円 ダントツ高い東京23区 小池知事が対策へ
東京23区の火葬料金について、小池知事が言及しました。
「都は、火葬場を指導監督する区市町村と連携して、料金を含む火葬場の経営管理に対する指導が適切に行えるよう、法の見直しを国に求めていく」としました。
都市別の火葬料金です。
東京23区は9万円ですが、横浜市1万2000円、さいたま市7000円、千葉市6000円です。
札幌市や青森市などは、無料です。
東京23区が、突出して高いです。
なぜ、高いのでしょうか。
東京23区は民営の火葬場が多いからです。
全国にある火葬場は、約99%が公営です。
23区には、火葬場が9カ所ありますが、公営が2カ所、民営が7カ所です。
火葬場の経営については、1948年に『墓地埋葬法』が施行され、火葬場の運営主体は、原則、市町村等の地方公共団体、宗教法人、公益法人に限られました。
ただ、この墓地埋葬法が施行される前から運営していた民営の火葬場は、例外的に認められています。
こうした状況を、都議会や国会議員らも問題視しています。
9月22日、都議会の立憲民主党系会派のプロジェクトチームが、公営火葬場の新設を含めた、都の取り組み強化を小池知事に要望しました。
9月26日には、公明党のプロジェクトチームが、今ある火葬場も含め、墓地埋葬法を改正し、火葬場の経営主体を自治体に限定するなど、厚生労働大臣に要望しました。
「人生で誰もが利用する火葬場には、高い公共性があり、本来公営が望ましいが、今の状況だと民間が自由に料金などを決められる」といいます。
都内では1日にどれぐらいの火葬ができるのでしょうか。
東京23区には、公営の火葬場が2カ所ありますが、瑞江葬儀所は、1日約25、臨海斎場は1日約40の火葬ができます。
一方、東京博善が運営する、民営の火葬場は6カ所あり、1日で最大432の火葬ができます。
「そもそも火葬場は公営であるべき。火葬場が仮に年間300日稼働するとしたら、1日300人の火葬が必要になる。しかし、2カ所の公営火葬場では、1日に約65しか火葬する能力がない」ということです。
■火葬料 なぜ23区だけ高い?値上げのワケ
東京23区の火葬料金の現状です。
2カ所ある公営の火葬場です。
瑞江葬儀所は、都民の場合、5万9600円。
港区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区が共同で運営している臨海斎場は、この5区の区民の場合、4万4000円。5区以外の場合は、8万8000円です。
7カ所ある民営の火葬場です。
戸田葬祭場は、8万円から。
23区内に6カ所の火葬場を運営する、東京博善は、9万円からです。
東京博善の火葬料金です。
1995年は4万3800円でしたが、2012年に5万9000円に。
2020年に東京博善は、広済堂ホールディングスの完全子会社となり、2021年1月に7万5000円に値上げ。
そこから値上げが続き、2024年6月、9万円になりました。
なぜ値上げをしたのでしょうか。
●燃料費、人件費、採用難による採用費、火葬炉のメンテナンスに係る諸費用などの高騰。
●火葬を安定的、永続的に実施するための、将来にかかる大規模修繕工事の積立金。
●6つの火葬場は、駅からアクセスの良い立地にあるため、固定資産税の負担が軽くない。
という理由です。
「人の死に関わる事業であるため、都民をはじめとした利用者の感情には配慮すべきではあるが、本事業の安定性、永続性を考えると、適切な価格転嫁も必要だと考えている」としています。
■低価格火葬 民営業者が撤退に波紋 理由は…
23区内に火葬場を6カ所持つ東京博善が、“区民葬”を終了すると表明しました。
区民葬とは、終戦後に、低所得者が葬儀を安い値段で行えることを目的に、運用を始めたものです。
火葬料金は、大人1人で5万9600円。
23区に住んでいれば誰でも利用できます。
「区民葬は、法に基づいたものではなく、公費が導入されているわけでもない。民営業者の任意の協力のもとで成り立っている」といいます。
「区民葬での会社側の持ち出し分は、年間2億円に上る」と話しています。
8月1日、東京博善は、2026年4月から、区民葬の取り扱いを終了と発表しました。
23区内で民営の葬儀場をしている戸田葬祭場は、区民葬を継続するかどうかについては、「コメントを差し控える」としています。
東京博善は、持ち出し分の2億円がなくなるため、火葬料金を、「区民葬終了により生じる差額を、区民に還元」するとして、9万円だったものを、2026年4月から8万7000円にするとしています。
ただ、区民葬の利用料金に比べると、約3万円高い状態です。
「区民葬は葬祭料の割引が利く制度として、多くの区民も利用してきた。何より葬祭をビジネスにしてこなかったのがこれまでの日本。この脱退は大きな挑戦であり、看過できない」と批判しています。
東京博善は、区民葬終了の理由として、現在の制度は、
『所得審査がなく、経済的に豊かな人でも使える』
『制度設立時の低所得者の負担軽減という本来の趣旨と異なるものになっている』などを挙げました。
ただ、生活保護受給者や身寄りのない方などに対しては、東京博善が独自で行っている火葬料金3万9000円への減額は続けていくということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年9月29日放送分より)