4日投開票の自民党総裁選に向けた討論会で、英語に関するやりとりが話題になっている。2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏が、5人の候補に向けて英語で質問、回答を求めたところ、2人が英語で、1人が英語でひとこと、2人が日本語で答えた。
ひろゆき氏は5人が国際会議などで話せるほどの英語力があるかを試すというよりも、日本の総理になる可能性が高い候補たちが場の空気や相手に合わせて、海外の要人たちと雑談レベルでもコミュニケーションを取ろうとする姿勢があるかを見極めたものだと説明した。
「ABEMA Prime」では、政治家がどこまで英語を使えるべきなのか、また最先端のAI翻訳があれば日本における学校教育から英語を外すこともできるのかを議論した。
■政治家に英語力は必要?

ひろゆき氏は、安倍晋三元総理とアメリカ・トランプ大統領との関係性を例に、英語でコミュニケーションを取る重要性を説く。もちろん総理となれば外交時にはもれなく通訳が同行するが「G7とかになると、写真撮影の時に結構雑談しているが、その中で日本人だけポツンとしている。トランプ大統領は、仲のいい人と話を進めてしまうので、なんとしても仲良くなろうとした方がいい。安倍総理は一生懸命にトランプとゴルフをした。政治家にゴルフは必要ではないかもしれないが、誰かと仲良くなるために必要だった」と、親密度を高めるために、少しでも話すことの必要性を示した。
たとえ流暢でなくても、今後さらなるグローバル化が求められる日本や日本人は英語を使えるべきだとするのが、近畿大学情報学研究所所長・夏野剛氏だ。「今、日本は縮小していてグローバル化は必須。その中でビジネスや政治の現場で英語ができないのは致命的だと思う。やはり接近度が違う。日本人にとって英語で議論するのがハンディになるのであれば、習得すればいいと思う」。
日本では「英語を話す」というと、ネイティブレベルでなければ認められないような風潮もある中、夏野氏はそこまでの英語力は必要ないともいう。「ヨーロッパで会議をしたら全員が英語でコミュニケーションする。細かいニュアンスの違いも言い間違いも、みんな気にしない。逆にアメリカ人、イギリス人は話すのが速すぎて、むしろ(ノンネイティブの)みんながついていけていないくらいだ。UKイングリッシュ、USイングリッシュとグローバルイングリッシュは違うし、日本人は流暢に話さなければいけないと思いすぎている」。
夏野氏が指摘するように、日本人には「英語コンプレックス」のようなものが存在する。過去には小泉進次郎農水大臣や国民民主党・玉木雄一郎代表が、英語で話した内容が誤りではないかと物議を醸したこともあった。またトランプ氏とウクライナ・ゼレンスキー大統領の対談では、英語の通訳を入れずに話し、感情の高ぶりも相まってゼレンスキー氏がトランプ氏の怒りを買ったと問題視もされた。
日本では、間違えて問題になるくらいであれば最初から英語を使わない、もしくは使うならネイティブレベルになってからようやく使える、というイメージが強くなっている。ひろゆき氏は「間違って伝わってしまったら直せばいいだけ。ごめん、ごめんと言い直せばいい。人のコミュニケーションで、100%正しい同士なんてことはほぼない。それよりも人格を伝えるかどうかだ」と、少々の間違いは恐れず使うべきだと加えた。
■TOEIC満点レベルのAI翻訳があれば英語の勉強はいらない?

英語を使うのが苦手な日本人が期待をしているのが、AI翻訳だ。NICT(情報通信研究機構)フェローの隅田英一郎氏はAI翻訳の性能の高さを説明した。「2020年ではTOEICで(990点満点中)900点レベル。今ではもう満点のレベルになっていると思っていい」。人間が語学を習得するまでには2200時間が必要という調べがあり、隅田氏は「日本の高校までで1000時間ぐらい勉強するが、半分以下で全然足りない。これが英語コンプレックスにつながっている。できないのが当たり前、できない状態で社会に放り出されるのに、なぜかできない自分が悪いようになっている。英語は大切かもしれないが、十分にできない人を大量生産するのはよくない」と主張した。
夏野氏は、グローバルに活躍することを目指すか否かで分かれていくという意見を持つ。「アメリカはグローバル国家で、グローバルに活躍する企業・人材は一番多いが、本当にグローバルで活躍している人は人口の3%くらいなもので、あとはみんな国内で経済を回している。日本であれば5〜6%ぐらいはグローバル人材が欲しいところだが、90%以上の人は英語がいらない。むしろ(AIなどの)テクノロジーを使って読めればいい。うちの会社でも国際会議で英語ができない人は、アプリを使って全部日本語にしてから読んでいる」。
一方、ひろゆき氏は数学などと同じく英語は学校で触れておくべきものだと訴えた。「教育の中でやってこそ、得意な子と不得意な子というのが初めて分かる。言語習得だって、向いていないと思っていたけど、やってみたら全然できるということもある。そういう人はちゃんと英語を伸ばしていこう、海外で働こうとなることもあるし、そのためには教育で一定レベルまで、全員がやる必要がある。将来、数学を使わない人にも数学をやらせる必要があるのと同じだ」。
隅田氏は、AI翻訳のサポートを受けて、よりよいコミュニケーションを取るべきだと語る。「コミュニケーションの効率を上げるには、単語をよく知っていて、文章もちゃんと翻訳できるシステムがサポートしてくれた方がいいに決まっている。日本人は長く日本語に慣れてしまっているので、どうしても英語が聞き取れない。人間が英語を学ぶことを否定はしないし、日本人が外国に行ってそこの国の言葉を少ししゃべるだけで親近感が増すというのは絶対にあることだが、しかし深い議論はできない。ならば機械を使えばいい」と、有用性を訴えていた。 (『ABEMA Prime』より)
