東急田園都市線で起きた列車同士の衝突事故は6日も帰宅の足に影響が出ています。現地での原因調査は続いていて、7日以降の運転再開の見通しは立っていません。
通勤・通学を直撃 5駅歩く人も…
6日午前7時過ぎの東急田園都市線、梶が谷駅。本来、ひんぱんに電車が行きかう時間帯ですが、2つの列車が止まったまま動きません。列車同士が接触。へこんだ跡が線のように伸びているのが見て取れます。
始発から渋谷〜鷺沼間で運転見合わせとなった田園都市線。週明けの通勤・通学客を直撃しました。午前9時、渋谷駅のバス停には行列ができていました。
「とても疲れた。一晩中飲んでて、今すぐ眠りたい」
JR南武線との乗り換えがある溝の口駅。乗客はJRの方に殺到します。職場や学校へ行くため行列に並ぶ。そんな月曜の朝です。
同じ光景は東京と神奈川の境界にかかる二子橋でも。ここまで5駅歩いてきた大学生は。
「なんだかんだ1時間ちょっとくらい歩きました。毎日の電車のありがたみを感じられそうです」
バスや歩き以外の方法を見つけた人もいます。駒沢大学駅付近にあるレンタル電動キックボードは、60台ほどが止められる場所ですが、最後の1台となっていました。
調査は6日夜も…帰宅の足に影響
現場で調査に入った国の運輸安全委員会が夕方、取材に応じました。
「脱線した車両、衝突した車両を動かせるめどが何時になるかという見通しが、私たちも分からない状態」
渋谷駅周辺では、バス待ちの行列が朝からずっと続いています。
「もう収まってると思ったんですけど、いまだにこんな状況じゃ困ります」
朝も行列ができていた橋。人の流れは朝と逆方向に。
「出勤も1時間くらい遅延していて、帰りも早退したので、仕事が手につかない状態」
(Q.普段も二子橋を渡る)
「渡らないです。震災の時に渡りました。溝の口まで行って、溝の口から南武線でひと駅なんですけど。歩いても1時間20分くらいで帰れるので」
回送列車 信号作動で手前に停止
事故が起きたのは5日午後11時過ぎのことでした。
「ガーガーガーみたいな感じの音が鳴り、揺れて急停止した」
現場は梶が谷駅より少し中央林間側。車庫を含め、多くの線路が並んでいるあたりです。梶が谷駅から引き込み線に入ろうとした回送列車。しかし、本来停止する位置の手前で止まってしまいます。オーバーランを防止する信号が作動したためでした。
そこへ上り普通列車が入ってきました。運転士は回送列車に気付き、非常ブレーキをかけたものの、回送列車の最後尾と接触。先頭の3両が損傷しました。ぶつかった時、普通列車はまだ時速48キロあったといいます。接触の衝撃で、回送列車は一部の車輪が脱線しました。
“自動制御装置”の作動は
事故に至るまで少なくとも2つの問題が生じています。
1つ目は、引き込み線に入った回送列車が途中で止まったこと。オーバーラン防止の信号が作動するのは、一定の速度を超えていたことを意味します。回送列車は指導係の付き添いのもと、見習いの運転士が運転していました。
もう1つの問題は、ATC(自動列車制御装置)がありながら、なぜ普通列車は止まらなかったのかということです。専門家によると、ATCは車輪と線路の接触によって列車を検知しているといいます。
「普通だとATCがあって止められるんですけれど、ちょうど車輪だけは引き上げ線(引き込み線)の側に入っていたが、ボディーだけはまだ入り切らなくて、各駅停車に擦ったということです。まだ車輪が本線側に入っていれば、各駅停車を止められていた」
通勤通学に大混乱を引き起こした脱線事故。国土交通省は、東急電鉄に原因を究明し、再発防止策を講じるよう警告文書を出しています。