大阪市内の「特区民泊」が集中する地域で、昼夜問わず外国人観光客の姿が…。
近隣住民は「すっごいうるさい。腹立つから言いに行ったけど、日本語がわからん」「食べていたゴミとかその辺にまき散らして帰りやがる。たばこもよく吸っていて、気分は良くはない」と、一部の宿泊者の騒音や路上喫煙、ゴミのポイ捨て、民泊業者のゴミ出しルール違反などを巡り、苦情を訴えている。
そもそも「民泊」とはインバウンドの増加によるホテル不足を補うための制度だが、「特区民泊」は住宅街でも開業でき、営業日数の制限がないなど一部の規制が緩和されている。この「特区民泊」の9割以上が大阪市に集中しているが、住民の苦情増加などをうけ、大阪市は事業者からの新規受付を停止する方針を決めた。
インバウンドによる経済的恩恵がある一方で、オーバーツーリズムなど、観光客と地元住民のトラブルも問題視される昨今、大阪市の決定は、インバウンド増加を目指す政府の方針にどのような影響を及ぼすのか。『ABEMA Prime』では、民泊規制の是非について考えた。
■特区民泊、大阪市に94%集中

大阪市には特区民泊が全国の94%集中していることに、大阪維新の会、政調会長の高見りょう氏は、「観光客がとにかく大阪市に来ている。だから宿泊施設が足りない現状があり、みんな商売になる。?その上で、(特区民泊は)旅館業務に比べるとすごくハードルが低い。手軽に始められて、かつ儲かるビジネスだから、1番儲かる大阪市に集中するのは必然だと思っている」と語る。
苦情については「今、直近で約400件ある。ゴミと騒音が大体100件ずつ。残りについて、特区民泊は2泊3日からしか泊まれないルールだが、『みんな1泊2日やってるじゃないか?』という苦情。これが約200件近くある」と明かす。
今後のルールについて、「特区民泊を始めた頃は、許可のない民泊が何千件もあって、我々は違法を抑えたかった。特区民泊にして、違法の状態をなくすためルール作りをすることが優先だった。そこから落ち着いてはきたものの、コロナが終わって、万博ができて、増えてしまった。割合は落ちているものの、もう1段階管理のレベルを上げる必要がある判断をして、今規制の強化を考えている」と述べた。
■「規制強化の前に制度強化をするべき」

民泊投資家の榊原啓祐氏は、大阪市の規制強化に反対している。「当社の施設ではクレーム数、苦情数は正直ほとんどない。宿泊日数でカウントした場合、大体年間130万泊ぐらい民泊を利用してる方がいらっしゃる想定だが、それに対してクレームの件数は500件ぐらい。だから95%の物件は一切クレームが出ていない」。
さらに、「騒音問題やゴミ問題が出ないように対策しているので、事業者がきちんとできるような制度だけを強化すればいい。止める必要は正直ないと考えている」と付け加えた。
現在、大阪市が特区民泊の新規受付を一時停止していることについて、「これには反対だが、問題のある民泊を規制することに対しては反対じゃない。そこは制度を強化して取り組むべきだと思う。それこそゴミ問題も、民泊では1カ月滞在する方も多いので、その間にゴミが溜まって捨てちゃうことも考えられる。我々がやっているのは、4日以上滞在の方はゴミ回収や定期的に清掃に行かせてもらうことによって対策ができる。だから規制の強化の前に制度強化をするべきじゃないか」と訴えた。
■「日本人にAirbnb的なサービスをすることは不慣れ」

コラムニストの河崎環氏は、「日本人にはバケーション文化がないから、Airbnb的なサービスを提供することに不慣れだ。その上で、突然、インバウンドニーズのために、いろんな人が民泊に参入しても不慣れだから、ゴミ出しっぱなしでも、『観光客の方がどうにかしてね』という状態になっている。?多分そういったあつれきを直していく必要があると思う」との見方を示す。
また、「ゴミを見ている近所の人たちからすると、その人たちにとっては嫌な感情だったりする。一般の人たちでそういった感情をグツグツと煮立てているのは、観光の方向性としては修正するべきだと思う。意外と(特区民泊の新規受付の)一旦停止は悪いことではないんじゃないか」と語った。
高見氏は、「ルールがきっちり整備されたら止める必要はないと思っている」といい、「しっかり取り締まって適正な民泊をやっていただく。例えばゴミの問題も、“事業系ごみ”という形でちゃんと契約しないとダメだ。そうじゃなくて、普通のゴミとして捨てる良くない事業者がいる。だから、契約を縛ったり、チェック体制を整える。それらも含めて体制整備を今考えたい」とした。
(『ABEMA Prime』より)