社会

ABEMA NEWS

2025年10月14日 07:16

クマ多発の異常事態 捕獲後も箱わな内で激しく暴れる様子…「ヒグマとの共存は無理」銃なしハンターの葛藤

クマ多発の異常事態 捕獲後も箱わな内で激しく暴れる様子…「ヒグマとの共存は無理」銃なしハンターの葛藤
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 ヒグマの出没が相次ぐ、北海道砂川市。現地の人間はどのような思いでクマと向き合っているのか、ABEMA的ニュースショーは北海道猟友会砂川支部長の池上治男氏を密着取材した。

【映像】唸り声をあげて暴れるクマの様子(実際の映像)

 池上氏は銃を持っていない。2018年にクマ駆除のため警察官立ち合いのもと発砲し、1発で仕留めたものの「建物に向けて発砲した」とみなされ、没収されたまま。ハンターといえども丸腰状態で、常に危険と隣り合わせだ。

 そんな池上氏の捕獲方法は「箱わな」。えさはシカの脚とリンゴで、池上氏が撮影した映像では箱わなにかかったクマが唸り声をあげながら激しく暴れていた。

 「今年はヒグマの目撃情報、捕獲は多い?」と問いかけると「今年は異常。こんなことない。注意報どころではない、緊急事態。これだけいたら。」と明かした。車を運転しながら「これクマの足跡」と、道路上を横断する白い痕跡はクマの足跡だと説明。いつしか人間の生活圏はヒグマの生活圏にもなっている。池上氏は「絶対数が多すぎる。ヒグマの数が多いから、山の縄張りを押し出される。巨大な300キロ、400キロの本当に強いクマは山にいる」と説明した。

 北海道鳥獣保護員として活動する池上氏は、ヒグマの目撃情報が入れば現場に赴き、行政職員とともに実地調査を行っている。

ヒグマが出たという情報がよせられ、場所は中学校だった。現場に赴くと、その中学校はコンビニの隣にあり、敷地にはシカの姿が。「ああいうシカをクマは追う。シカは共存している状態。ヒグマがあそこで何か食べていたら、人は襲われる。間違いない。ヒグマと共存というけど、それは言葉が独り歩きしてる。無理だ」と断言した。

 この日最後に訪れたのはリンゴ農園だった。関尾農園の関尾守人氏は「もうクマに振り回されて、みるみる(リンゴが)無くなってしまう」と被害を明かす。池上氏は、今朝のものであろうヒグマのフンや木に登る際についた爪の痕を指した。

 「もう箱わなには入らない。危険だとわかって。親子のヒグマが今、農園に来ている」と語った池上氏は「電気柵が効果ない。下を潜ってくるから」と説明。関尾氏は「今年ぐらい痛みつけられたことは初めて」と嘆いた。

 10月11日あさ5時30分、日の出前の北海道は底冷えする寒さだが、池上氏は日課を欠かさない。まず目撃したのはシカの群れで「ヒグマはいないということ」と説明。クマを警戒するシカが自由に駆け回る、つまり「いまは安心」という印だという。

 しかし車を進めると、箱わなの中にはクマの姿が。おととい捕獲されたというヒグマはこちらの存在に気づくと威嚇行動を開始。推定5〜6歳、体長約2メートル、体重200キロを優にこえるオスのヒグマだったが、池上氏は「まだまだ大きくなる。あんなのまだ小さいほう」と語った。このヒグマは殺処分が決まっているという。

 次の箱わなに向かおうとした池上氏だったが、リンゴ農園の関尾氏から「(ヒグマが)わなにかかっている」と連絡があり、予定を変更して農園に急行した。

 リンゴ農園に行くとクマの姿が。箱わなではなく小動物用のわなにかかっていたのは子どものヒグマで、池上氏は「車から降りられない、危ない。母グマが近くにいる」と警戒。園の外にいた関尾氏に「危ないよ!そばに母グマいるから。来たら襲われるよ!気をつけないとダメだよ」と警告した。

 箱わなにかかった場合、駆除に要する段取りを組む時間の余裕があるというが、今回は通常のわなのため、いつまでもそのままにしておくわけにもいかない。

 そこで池上氏は市の職員に電話で相談。どうすべきか指示を仰ぐことに。池上氏が「関尾さんはすぐ駆除してほしいって言っている。自治体と振興局の関係で、きちっと対応できれば問題ないと思う」と伝えると、振興局職員は「問題ないですよ。僕の責任で大丈夫です」と返答。市からの指示は「危険なのでいますぐ駆除してください」というものだった。

「現場が困ってることを優先しなければならない。プライオリティーを十分考えてやらなきゃいけない。だけど法律に照らし合わせて適正に処理しないと。だから難しい」(池上氏)

 「池上さんはヒグマが好き?」という質問には「そりゃそう。だから殺したくないよ」と胸中を吐露。池上氏はかつて1匹の子どものヒグマを保護。「砂助」と名付けられたヒグマは現在も旭山動物園で元気に暮らしている。動物園でクマを飼育すると、年間数百万円から1千万円ほどの費用がかかる。「ヒグマを殺したいという人は誰もいないと思う」(池上氏)

 池上氏は「人間のコミュニティとヒグマのコミュニティが交錯することがないようにやるべき。人間の境界に何かあればいいとか、そんなことよりも山全体をどう捉えるかだ」と述べた。

 2025年の砂川市のヒグマ駆除件数は10件にのぼっている。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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