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2025年10月15日 16:00

不信任可決も辞めない首長 背景にアメリカ大統領レベルの “強大な権限”

不信任可決も辞めない首長 背景にアメリカ大統領レベルの “強大な権限”
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全国で首長の不祥事が相次いでいます。

議会で不信任決議が可決されても、首長が辞めない背景には、何があるのでしょうか。

首長が持つ“強大な権限”についても、見ていきます。

■ホテル密会 前橋市長 市民と対話「市のために働きたい」

9月24日、群馬県前橋市の小川晶市長が、既婚者の市役所職員とホテルで複数回会っていたことを認め、謝罪しました。

10月10日には、男性職員が、事情説明書を市議会に提出しました。

面会場所にホテルを選んだ理由について、
「市長の身辺を探っている人がいるという情報が寄せられ、『市長をお守りしよう』と思った」
「ネットの情報から、ラブホテルは女子会にも利用されていると知り、使っても構わないと安易に考えた」と説明しています。

10月13日、小川市長は、市民主催の対話会に出席し、経緯の説明や市民からの質問に直接答えました。

対話会の参加者によると、小川市長は、
本当に孤独で、相談する相手がいなかったので、判断を誤った部分もあるかもしれない」と説明したということです。

対話会の参加者の声です。

「社会常識が欠如したと言いながら、そこでしかできなかったと肯定している部分があった
「経緯説明など話している姿を見て、前橋市を良くしたいがために、頑張りすぎて判断を誤ったのかなという印象」
今後について、小川市長です。
「反省するところは、とにかく反省する。その次にどうしたいかと思ったときに、市のために働きたいという気持ちが一番強い」と、続投への意欲をにじませました

しかし、10月3日に、市議会のすべての会派が、速やかな進退の決断を求めています。

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■学歴詐称 セクハラ…首長の不祥事 進退巡り議会と対立も

そして、静岡県伊東市の田久保真紀市長です。

9月1日に、学歴詐称問題を受けて、市議会で不信任決議案が提出され、全会一致で可決されました。

不信任決議案が可決されると、市長は10日以内に辞職するか、市議会を解散するかを判断します。
どちらも判断しない場合は、失職します。

辞職・失職の場合は、市長選が行われ、議会を解散した場合は、市議会議員選挙が行われます。

そして、新たな議会で不信任決議案が再び提出された場合、3分の2以上の議員が出席し、過半数が賛成すれば可決され、市長は失職します。

9月10日、田久保市長は、理由は告げずに議会を解散
これにより、10月12日に告示、19日に投開票で、市議会議員選挙が実施されることとなりました。

ただ、地元の報道機関13社の合同アンケートでは、30人の立候補のうち、26人が不信任決議案に賛成すると回答しています。

他にも、沖縄県南城市では、古謝景春市長による、市職員へのセクハラ問題などを受けて、市議会で不信任決議案が提出され可決されました。

これを受け、古謝市長が、10月6日に議会を解散したため、11月2日告示、11月9日投開票で、市議会議員選挙が実施されます。

総務省によると、2014年度〜2022年度の8年間で、市区町村の首長に対し、議会が不信任案を可決したのは、10件ありました。
このうち、不信任を受けた首長が議会を解散したのが、7件です。

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■首長の権限はアメリカ大統領レベル!?何が出来る?

首長の不祥事が相次ぐ中、首長の“強大な権限”も注目されています。

強大な権限の1つ目は、『専決処分』です。

本来、自治体の予算・条例などは、議会で議決しますが、緊急を要し、議会を招集する時間がないときなどに、重要な案件を(議会を通さずに)首長が決定することができます。
これは、アメリカの大統領令に相当します。

元箕面市長の倉田哲郎さんは、市長時代に『専決処分』を行使した経験があります。

2014年、当時、大阪・箕面市長だった倉田さんが、市立の小中学校の通学路に防犯カメラの大規模導入を発表しました。
当時、全国ニュースになり、テレビなどで大きく取り上げられました。

防犯カメラ設置は、犯罪抑止が目的なので、倉田さんは、
大々的に発表して、多くの人に知られてこそ、意味がある、
一番手でないと、ニュースにならない
と考え、発表を急いだのですが、議会へ事前に報告するのを忘れてしまいました。

すると、ニュースで初めて知った数人の議員から、
「有事でもないのに!専決処分に当たるのでは」
議会軽視だ!」
議決権の侵害だ!」
と、倉田さんは、電話で叱責されました。

そして、倉田さんは、各会派の控室を訪問し、釈明してまわったということです。

首長の強大な権限の2つ目は、『拒否権(再議権)』です。

議会の議決に異議がある場合などに、審議・議決のやり直しを求めることができます。これは、アメリカ大統領レベルの権限です。

首長の強大な権限の3つ目は、『解散権』です。

不信任決議を受けた首長に、『議会解散権』を認めています。
解散しないときは、首長が失職します。
総理大臣レベルの権限です。

一度首長が当選すると、住民も、首長をなかなか止められません。

リコール(解職請求)のハードルが高い』です。

リコールの条件です。
有権者が40万人以下の市町村の場合、
1カ月以内有権者の3分の1以上の署名が必要で、
首長就任から1年経過していないと、リコールはできません。

倉田さんによると、
「事実上、ほぼ使えない」制度だということです。
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■地方議員『なり手不足』相次ぐ無投票当選 問題は?

地方議員の『なり手不足』の問題です。

京都の笠置町のケースです。
人口は1040人、高齢化率は約56%の町です。
2024年10月、町議選がありました。
告示日に定数と同じ8人が届け出し、無投票で当選しました。

告示1週間前には、立候補予定者が現職の5人しかいませんでした。
その後、告示当日に新人3人が届け出をして定数に達しましたが、新人は、いずれも現職議員の家族や親戚でした。

笠置町議会の関係者です。
「立候補者が見つからず、30人ほどに声をかけたが、全員断られた。やむにやまれず、親族に声をかけた。最終手段だった」

笠置町議員の議員活動です。

活動日数は、2023年5月からの1年間で、125日。
議員報酬は、月17万円(手取り約14万円)です。

活動日数が多いので、会社勤めとの兼任は難しく、議員報酬が少ないので、議員専業も経済的に難しいという現状です。

統一地方選での無投票当選者数の割合です。

市議会議員選挙では、3. 6%なのに対し、町村議会議員選挙は30. 3%、そして増加傾向にあります。

2023年は、123の町と村で無投票となり、そのうち20の町と村で、定数割れになりました。

元箕面市長の倉田さんによると、
議会が、首長を監視することで、緊張関係を保ちながら、行政を進めるのが地方行政の在り方。議員のなり手が不足すると、市長をチェックする機能が弱くなる懸念」があるということです。
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■なり手不足対策 オンライン出席 夜間や休日の議会開催も

地方議員のなり手不足の対策です。

対策1つ目『委員会へのオンライン出席』です。
出産、育児、介護などを理由に、議会の委員会へのオンライン出席が可能と、条例を改正している自治体が増えています。

対策2つ目『夜間や休日の議会開催』です。
平日の昼間に仕事をしている人が、地方議員として活動しやすくするための取り組みです。

実際に導入している議会が、長野県の喬木村です。
過去の村議会で、無投票となったことで危機感を覚え、2017年から、議員と仕事が両立出来るようにと、議会を休日に開催しており、現在も取り組みを続けています。
これにより、住民も傍聴しやすいという、メリットもあるということです。

(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年10月14日放送分より)

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