福岡県須恵町の中学校で、補助教員として働いていた近藤正仁容疑者(66)は、採用試験の際、ニセの教員免許状の写しを提出した疑いで逮捕され、14日、身柄を検察に移されました。
近藤容疑者は、今年の4月から町立中学校で働いていました。しかし、「更衣室をのぞく」「女子生徒に性的な発言をする」などといった声があがり、不適切な指導だと噂になります。不審に思った保護者がインターネットで調べたところ、近藤容疑者と同姓同名の人物が「各地で教員免許状の偽造などを繰り返している」という情報を見つけたといいます。
「教員免許を偽っているのではないか」
報告を受けた教育委員会は、近藤容疑者への聞き取りを実施。先月22日に開かれた説明会で、こう述べました。
「教員免許状の原本は、手元にないとの回答でした」
「掃除の時間に1人の生徒に『その体勢はエロいよ』とか、そういう言葉をかけたのは、具体的に出ていた。もう気持ち悪いしかない」
近藤容疑者は、2014年にも偽造した免許状の写しを使ったとして、逮捕されていました。
使われたニセの教員免許状ですが、岐阜県教育委員会が発行したとされ、印鑑も押されています。近藤容疑者は、当時、使われた偽造免許状のコピーを使い回した可能性があることがわかりました。
近藤容疑者は、2005年、当時14歳の少女に対し、お金を渡してわいせつな行為をした罪で有罪判決を受け、教員免許を失効しています。しかし、近藤容疑者は「免許状をなくした」といって返納せず、その免許状を使い、山口県内の高校で勤務を始めました。
その後、わかっているだけで、埼玉県や福岡県でも教員免許を持たないまま、勤務していたことが明らかになっています。
なぜ、採用時に気づかなかったのでしょうか。
実は、2005年に逮捕されたときの名字は『古畑』。その後、2014年までの間に『近藤』に変わっていました。
須恵町は、採用時に過去の性犯罪による失効歴などをデータベースで確認したものの、名字が変わっていたため、検索にかからなかったとしています。
「教員免許状を偽造されたものだと知りながら提出したことは間違いありません。ただ、私は印鑑は偽造していません」
◆近藤容疑者は、これまでにわかっているだけでも、4回、逮捕され、有罪判決が下されています。
2005年、福岡市の中学校で教員をしていたときに、14歳の女の子へのわいせつ行為で、逮捕されます。このとき、教員免許を失効しますが、「免許状をなくした」といい、返納していませんでした。
2007年〜2010年、この返納しなかった免許状を使い、山口県の高校で勤務していました。
その後、教員免許の再交付を受けるも、2012年、山口県や大阪府で無免許運転を繰り返します。道交法違反で逮捕され、また教員免許を失効します。
2013年、教員免許を失効したままで、埼玉県秩父市の中学校で、臨時教員として勤務。教育職員免許法違反で逮捕されます。
その後、容疑者は、何らかの方法で『古畑』から『近藤』に名字を変えます。
2014年、福岡県飯塚市で、偽造した教員免許で、中学校講師の採用面接を受けますが、偽造有印公文書行使で逮捕。そして、今年、福岡県須恵町の補助教員として働いていましたが、13日、偽造有印公文書行使の疑いで逮捕されました。
◆何度も偽造を繰り返していますが、見抜けないものなのでしょうか。
教員をめぐる課題に詳しい東京学芸大学の岩田康之教授は「教員免許状は、運転免許証のように書式が統一されていない」といいます。
近藤容疑者が偽造した免許状を見ると、本籍地や氏名、自治体の教育委員会の押印がされていますが、岩田教授によりますと「都道府県や時代によって、書式が異なっているほか、“小学校で1枚”や、“国語で1枚”というように、種類が多く、すぐに見分けるのが難しい」 といいます。
また、データベースでの照合にも課題があるということです。
岩田教授は「免許失効者の情報は、文科省で一元管理されているが、戸籍情報とひも付けられているわけではないので、姓名を変えた場合、照合するのが難しい」と指摘します。
対策として「採用する側は、教員免許を発行した各自治体への確認を徹底する」といいます。さらに、「来年から施行される、性犯罪歴を照会する“日本版DBS”で、対象者の旧姓を含め、もれなく把握できる仕組みを構築し、更生プログラムやキャリアチェンジの支援の充実させるべき」としています。