昨今、SNSなどで「パチンコ打ち子募集」などと記載し、闇バイトに誘導する手口が横行しているという。
今年の東京都内における特殊詐欺の被害額が過去最多を更新する中、被害額が8億円を超えた品川区で特殊詐欺防止を呼びかけるイベントが行われた。
警視庁によると、2025年8月末までの特殊詐欺の被害額はおよそ189億円で、すでに去年1年間の過去最多を更新しているという。警視庁のホームページでは、「オレオレ詐欺」や「架空料金請求詐欺」などが注意喚起されているが、その中に「ギャンブル詐欺」という言葉が記載されていた。
「『パチンコ打ち子募集』等と雑誌に掲載したり、メールを送りつけ、会員登録等を申し込んできた人に、登録料や情報料として支払わせて金銭等をだまし取る手口」(警視庁のホームページより)
さらに日本遊戯関連事業協会のホームページには、「『必ず勝てる攻略法を教える』『打ち子として登録すれば、報酬が確実に得られる』等の『うまい話』をエサに、現金をだまし取る詐欺事件がはびこっている」と書かれていた。つまり、パチンコの「打ち子」を募集し、応募してきた人に嘘の登録料や情報料を請求する詐欺だ。
ただし、日当をもらってリアルにパチンコを打つ「打ち子バイト」も存在する。パチンコ業界に詳しいライターのセールス森田氏によれば、「パチンコの『打ち子』とは誰かに雇われてパチンコを遊技する人」のことだという。
森田氏は、「パチプロが1人でパチンコをやってる中でも、稼げる限界値っていうのがある。いい台を打ち続けるっていうのがパチンコで勝つ一番のコツだが、パチプロの人は軍団というのを作っている」と語る。
その仕組みは「例えば、1人で(パチンコを)打ったら2万円の収益しかないけれど、これを1万円(打ち子に)支払って、期待値2万円の台を打たせることによって、自分の収益が1万円プラスになるみたいな。集団で打った方が絶対に得なので、それをうまく利用しているのがパチンコの軍団長であり、打たせているのが『打ち子』という感じだ」と説明した。
パチプロは期待値が高いとされるパチンコ台を見抜き、SNSなどでその台を打ってくれる人を募集する。それが「打ち子」であり、集団で雇うケースがほとんどだという。打ち子が遊戯する資金はパチプロ側が持つが、打ち子は勝っても負けてもその日の「あがり」をパチプロ側に渡す。打ち子は1日遊戯した分の時給を受け取り、それを差し引いた額が「親」と呼ばれる依頼人のものになる。
ほとんどのパチンコ店では打ち子行為を含む集団打ちは禁止行為となっている。しかし、元パチンコ店の店長でパチンコ情報ブロガーのきこり氏によると「明確にダメというのはなかなか難しい。軍団打ちとかノリ打ちを禁止しているホールはあるが、友達とか連れと言われると、なかなか(集団打ちの)現場を抑えるのは難しい。本当に集客のためにやるので、それがプロに取られてしまうのは、本来還元したいところに還元できないので、非常にお店にとってはマイナスだ」と明かした。
では、今どうなっているのか。ネットで探してみると「パチンコ大好き 打ち子スタッフ募集 日払い」といった募集が見つかった。その中には非常に細かい募集条件が提示されていた。
「週4回以上出勤 短期のみの希望は不可 基本報酬目安 1万〜最大1万2千円+各種手当 勤務時間10時〜21時30分まで お昼休憩30分 喫煙時間は『休憩扱い』となり、5分単位に分けて取得可能 業務に必要な資金(投資金)は全額提供します 自己負担は一切ありません」といったものだ。そして最後には「法律に触れる行為は一切行いません」と記されていた。
森田氏は、応募してくる人物像について「大学生とかで、アニメが大好きでそのアニメからパチンコを打ち始めたとか、そういう人からするとパチンコを打ちたい、そのアニメの演出を見たい。パチンコは打ちたいけれど、お金を減らしたくないっていう人が一定数いて、その中で、しかもお金もらえるんだと喜びを感じる人もいる」と語る。
打ち子の存在はSNSの台頭で簡単に募集しやすくなり、今も店側とのいたちごっこが続いている。しかし、このようなグレーな働き方にはリスクが伴う。「聞いたことがあるのは。バックレられちゃったこと。最後にお金をもらえるという話だったのに、連絡つかなくなるケースも聞いたことある。それこそ口約束で、雇用形態も何もないので、そこがやっぱりグレーなところ。逃げられてしまったら、やっている自分も悪い」。
打ち子募集は、本人たちが騙されるだけでなく、闇バイトに誘導されるケースもあるという。「(闇バイトも)起こり得ると思う。やっぱり打ち子をやる人は普通の人じゃない。パチンコが好きでパチンコに勝てない人がやる。(打ち子の)知り合いの人は免許証のコピーを取られたと言っていたので、個人情報が詐欺とかに使われるのは大いにあり得る」と警鐘を鳴らした。
(『ABEMA的ニュースショー』より)