ニセ警察官による詐欺事件は今年上半期だけで被害額が390億円にも上っています。680万円余りをだまし取られたという女性が巧妙な手口を語りました。
SNSに詳しい女性もだます
「びっくりしましたね。まさか私がみたいな」と話すのは、世界およそ130カ国を旅するヘア&メイクアップアーティストでインフルエンサーのYuh Kawasakiさん。きっかけは、8月にかかってきた一本の電話でした。
「山梨県警の者です。未公開の事件について教えてください」と、末尾0110の番号からの着信がありました。
山梨県警の警察官を名乗る男AはYuhさんの住所と本名を告げた後、「マネーロンダリング事件でYuhさん名義の銀行口座が犯罪に使われている」「被害者が数名いて、被害額はおよそ7000万円」と伝えました。
ニセ警察官は落ち着いた様子で「山梨県警まで来てください」と告げます。
Yuhさんは「大阪にいるためすぐには行けない」と伝えると、男は「LINEのビデオ通話で事情聴取ができる」と話しました。条件として、部屋に一人でいることを求めたといいます。
男の指示通りLINEを検索すると、警察の紋章のようなものをアイコンにしたIDが出てきました。
ビデオ通話を開始すると、今度は警察官を名乗る女Bが登場。警察手帳のようなものを見せてきたといいます。
実際に警察官を名乗る男のビデオ通話の映像。男は所属・名前を名乗ると、Yuhさんに対しその後、女はスマートフォンに信号調査なるものを行い、犯行グループとのやり取りがあったかを調べると言って別室に移動。入れ替わる形で、3人目の新たな警察官を名乗る男が登場しました。
少し違和感を覚えながらやり取りをしていましたが、警察官を名乗る男Cの「海外の通販を使ったことはありませんか。クレジットカードを不正利用されたことはありませんか」という質問が、相手を信用する決定打になったといいます。
3時間半通話「言われるがまま」
Yuhさんが信じたと確信したのか、ここから男は金をだまし取る話を始めます。すでに通話は3時間半、午後7時半すぎになっていました。
ニセ警察官は「身の潔白を証明しないと最大で20日勾留される」と話し、銀行口座の金が犯罪に使われていないかを調べると伝えました。
Yuhさんから5つの口座を持っていることを聞き出した男は「すべてを調べるには3時間かかる」と言い、簡略化のために口座の現金を一つにまとめて、送金するよう指示してきました。
Yuhさんは言われるがまま、現金を一つの口座にまとめましたが、送金するのはおかしいのではないかと思い、「振り込め詐欺じゃないですよね」と尋ねました。
しかし、男は「潔白が証明されたら返金します」と断言。終始Yuhさんが「銀行口座を偽造され、巻き込まれた被害者」として扱われていたため納得してしまったといいます。
「ニュース見ない」女性後悔
指定された都市銀行の個人口座に681万円を振り込んだYuhさん。20分後、男から送られてきたのは、返金明細と書かれたスクリーンショットでした。681万円を返金したかのように記されています。振込予定日は翌日の日付になっていました。
その明細の後には、特定重大秘密保持誓約書なるものも送られてきました。誓約書には「位置情報をリアルタイムで報告すること」「キーワード検索を禁止すること」などのほか、「無関係の人に話すことを禁止する」とも書かれていました。
電話を切った後も、逃走の恐れがあるとして「出かける時」「帰宅した時」「寝る時」「起きた時」に逐一LINEで報告するよう求められ、Yuhさんはその指示に従いました。そして翌日、だまされたことが分かります。
すぐに警察署に被害届を提出したといいます。インターネットやSNSに詳しいはずのインフルエンサーが、なぜ簡単にだまされてしまったのでしょうか?
(「グッド!モーニング」2025年10月17日放送分より)