社会

報道ステーション

2025年10月30日 01:34

自治体だけではもう限界?“災害級”のクマ被害…閣僚会議に格上げ

自治体だけではもう限界?“災害級”のクマ被害…閣僚会議に格上げ
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各地で相次ぐクマ被害は、もはや国レベルの対応が必要になっています。山形県の小学校では、出入り口に体当たりしてガラスを壊すクマの姿。福井県では、こども園に表れた親子とみられる2頭のクマが緊急銃猟で駆除されました。政府は関係省庁による連絡会議を閣僚会議に格上げすることを決めましたが、もっと早くても良かったかもしれません。

“災害級”のクマ被害…閣僚会議へ

クマに襲われた男性(69)
「右のこの辺ガバッっとやられた。玄関の中に入ると困るので、手で振り払ったら逃げていった」
クマによる被害

時間を問わず飛び込んでくるクマによる被害。群馬県沼田市では29日午後5時過ぎ、69歳の男性が家の扉を開けたところ、クマに襲われました。

クマに襲われた男性(69)
クマに襲われた男性(69)
「そこに柿の木があるんですよ。まさかウチの柿は来ないだろうと思っていたけど、それが本当にまさか」
木原稔官房長官
木原稔官房長官
「死者数は本日までに11名となり、国民の安全安心を脅かす深刻な事態」
政府

政府は、従来クマ対策をしてきた連絡会議を、より多くの省庁を交えた閣僚会議に格上げすると発表。スピーディーに対応を進める考えです。緊急銃猟制度の確実な実施など、クマ被害対策の見直しを行うとしました。

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侵入相次ぐ“人に慣れたクマ”か

クマ

クマの動きは29日も活発です。山形県南陽市の小学校では午前5時過ぎ、玄関に現れた1頭のクマが建物の中を伺い、体当たり。凄まじい力だったのか、ガラスの扉は粉々に割れてしまいました。

赤湯小学校 須貝賢志教頭
赤湯小学校 須貝賢志教頭
「校舎の中にクマがまだ潜んでいるのではないかと心配だったので恐ろしかった。市街地までこんなふうに及んでいることも驚いています」

これを受け、近くの小中学校は休校になりました。

岩手大学農学部の山内准教授

最近相次ぐクマの建物侵入。岩手大学農学部の山内准教授は「エサを探すために、人に慣れた個体が入ってきている可能性が高い」としています。

親子クマ2頭が出没

山形市内では高校の付近にクマが出没。通学時間帯のことでした。福井県勝山市では、こども園の近くに親子のクマ2頭が出没。市は一時、周囲に立ち入りを制限かけ、屋内退避を呼び掛けました。朝、クマを目撃したこども園の園長は。

こども園の園長
こども園の園長
(Q.クマはどんな感じで出てきた)
「四つんばいでウォーって感じで、飛びかかるような勢い。うなり声を上げていたので必死に逃げた。本当に怖かった」
クマの目撃

クマは2頭いて、正午過ぎ、共に駆除されました。親グマの体長は1.2メートルほど。市街地での出没は今年初めてだったといいます。というのも、勝山市はクマ出没の対策として、柿の木の伐採に補助金を用意しています。住宅街に放置された柿が減ったことで、2019年には40件あった目撃情報も、翌年は2件と激減しています。

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クマ防ぐ『ゾーニング』の効果は?

クマを寄せ付けない“ゾーニング”

石川県小松市では、林や河畔など人の生活域までやってくるクマの移動ルートを断つことで、クマを寄せ付けないようにする“ゾーニング”に力を入れています。小松市は2020年のクマ大量出没を受け、国道8号を境に山から市街地にクマが降りてこないよう、緩衝地帯をつくる対策を進めています。高校や住宅街の周辺では実際に出没がなくなり、一定の効果があるといいます。

小松市農業水産課 埴田大助参事
小松市農業水産課 埴田大助参事
「クマサイドから見れば、森から出た直後に住宅街が一気に視界が開けますので、クマとしては非常に出にくい状況を作り上げている」
小松市

市はエサ場づくりの一環として、本来“クマが居るべきゾーン”に実のなる木を植樹。

小松市農山村創生課 清水浩課長
小松市農山村創生課 清水浩課長
「(クマの)環境を人間がしっかり守ってあげることによって、野生動物も自分たちの世界で生活していける。人間と動物が安心して暮らせる地域づくりもやっていきたい」

こうした取り組みに住民からは。

女性
女性
「大木を市に切ってもらって、その後は(クマは)出なくなった。この下草も刈ったりして」
(Q.実感を持っている)
「そりゃそうやわね。助かりますよね。私たちもう高齢者ですから」
20カ所にAIカメラ

さらに、重点を置いた20カ所にAIカメラを設置。クマを見つけると職員に通知が入る仕組みです。

小松市農業水産課 埴田大助参事
小松市農業水産課 埴田大助参事
「特にここは学校が近いので生徒の安全を第一に考えて、可及的速やかにデータを(市民向けに)流す」

ただ、山は私有地であることも多く、市の判断で勝手に伐採が出来ないため、時間が掛かるといいます。

小松市農業水産課 埴田大助参事
小松市農業水産課 埴田大助参事
「ゾーニングだけでは不十分な点はあります。市街地に近いところに住み着いたクマは、どうしても人間の食べ物の味、生活様式を理解していますので、なかなか山に戻らないこともあります」
小松市

小松市では28日、ゾーニングが行われていない地域でクマが目撃されています。対策には市民の協力が不可欠です。

小松市農業水産課 埴田大助参事
小松市農業水産課 埴田大助参事
「何より目撃情報をいただけないと打つ手を考えられないので、市民と情報共有を図りながら対策を進めていきたい」
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自治体 訴える“現実と限界”

秋田県

自治体の対策だけでは限界という段階に来ています。クマ捕獲の支援のために自衛隊の派遣を要請した秋田県によると、今月だけでクマによる人身被害が31件発生し、死亡2人を含む37人が死傷しています。その被害の全てが農地や市街地など人が住むエリアで発生しています。

秋田県では今年4月から、クマと人との住み分け“ゾーニング”を強化するとしていましたが、自治体の担当者に聞くと、こんな課題を挙げています。

自治体担当者
自治体担当者
「全体が山に囲まれている地域なので、整備には時間も費用もかかる。クマの目撃情報が多いエリアを優先して緩衝地帯の整備をするのがやっと」

今、一番求めていることは。

自治体担当者
自治体担当者
「箱罠を設置・撤去する人、捕獲する人(ハンター)、処理する人などが必要で、かつ、こうしたことを長期間にわたってできる人手を用意しないといけない」

クマの生態に詳しい、岩手大学農学部・山内貴義准教授に聞きました。

岩手大学農学部 山内貴義准教授

(Q.国が積極的にクマ対策に関与することで、どういうことが期待されますか)

岩手大学農学部 山内貴義准教授
「箱罠や電気柵の設置、草刈り、見回りなどを自衛隊に依頼することで、短期的には人手不足を補うことができるが、外部からの応援がずっと続くわけではない。中長期的な視点にたって予算をつけて対策をしていくことで、クマの正確な生息数の調査をして、適正な捕獲を行って被害を抑えたり、地元に根付いたハンターを育成することなどができるようになるのではないか」
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