「国民の安全安心を脅かす深刻な事態」。政府がクマ対策に本腰を入れるなか、露天風呂を断念する旅館も出てきています。
効果大 侵入防ぐ装置とは?
30日朝撮影された防犯カメラの映像です。画面右上から現れた1頭のクマ。しばらく辺りをうろつくと、自動ドアへ激突します。その後、クマは走って姿を消しました。
30日午前6時半ごろ、岩手県雫石町の公民館前にクマが出没。現場は近くを秋田新幹線が走り、数百メートルの距離には小学校もあります。クマが衝突したドアには、生々しい爪痕に血痕が…。
「爪の跡や泥もついて、血もついていた。『これはクマだな』と直感で思って。まさか、ここにくるとは思わなかった。ここは人の出入りが多いから(クマが)入っていたら大変なことになっていた」
岩手県北上市の瀬美温泉。今月、従業員の笹崎勝巳さん(60)が露天風呂の清掃中にクマに襲われ亡くなりました。
「残念ですね。改めて…。寂しいですね。やっぱり…」
時間が経っても傷が癒えることはありません。そんな温泉は今回の事故を受け、苦渋の決断を下しました。
「私が代表の間は、経営者の間は、申し訳ないけど露天はやるつもりはないし営業はしないですよね。やはり人命が失われた。そこまでして露天風呂をやる気にならないし、やっぱり安全が第一ですよね」
今後は露天風呂の営業は行わず、内湯のみで続けていくといいます。瀬美温泉では内湯でも露天風呂と変わらない源泉かけ流しの湯を楽しむことができます。
人とクマの境界線がなくなりつつある今、注目されているものがあります。
「電気柵は様々な農作物をクマから守る。いろんな所で応用・利用されているので非常に効果は高い」
電気柵に対するクマの反応を捉えた映像です。画面左側、市街地と山の境界線に設置された電気柵にクマが興味を示します。そのまま前に進むクマ。すると、電気柵に触れると、ものすごい勢いで引き返します。
映像を見ると鼻先に少し触れただけにも見えますが、巨大なクマがこの反応です。
「電気柵についてるコードとか、ついたところに当たると、非常にバチッと強力なので痛がって」
別の映像でも、クマが電気柵に触れると、まるで腰を抜かすような様子が確認できます。
電気柵の痛みを経験したクマは、無理にその場所を通ることを諦めることが多いといいます。こちらの映像を見ると、電気柵の外側を歩くクマの姿が確認できます。リンゴの食害が相次いだこの場所も被害が激減したといいます。
クマ被害拡大で閣僚会議
岩手県八幡平市にある旅館。真っ赤に染まった見ごろの紅葉に、地元・岩手の食材をぜいたくに使った絶品料理。それでもやはり一番の人気は、湯けむりと紅葉のコラボレーションが楽しめる絶景露天風呂です。よく見てみると…。
齋藤健支配人
「クマ対策用に設置をした電気柵」
「ちょうど昨日設置した」
露天風呂から見える庭園には電気柵が張り巡らされています。景観が命ともいえる露天風呂ですが、今回の対策について。
露天風呂の周辺ではクマの目撃情報はないものの、客の不安を取り除くため設置を決断しました。
宿は電気柵の色をオレンジ色にするなどして、露天風呂の景観を保っています。
国内でも高まるクマへの警戒感は海外まで広がりを見せています。イギリス政府は日本への渡航者へ向け、「日本では、山間部や森林地帯でクマの目撃や被害が増えている」と注意喚起を呼びかけました。
そして政府は30日、クマ対策を巡り関係閣僚会議を開きました。
「死者数は本日までに12人。国民の安全安心を脅かす深刻な事態。政府は国民の命と暮らしを守るため追加的・緊急的なクマ対策を強化します」







