宅配便の取り扱いが10年連続で過去最多を更新するなか、再配達の負担が問題になっています。国土交通省は「置き配」の利用をすすめるため、配達員がマンションのオートロックを解錠する仕組みを支援する方針です。
「置き配」なのに置けず オートロックの壁
宅配業界で深刻な問題となっている再配達。配達員が荷物を届けに行きますが…。
栗原莉玖さん
「不在でした。連続で、まぁしょうがないです」
この日、こちらの配達員が担当した46件中、4件が不在による再配達となりました。
「全体の持ち出しの10%ぐらいは持ち戻り(再配達)になるかなという感じです」
宅配業界で、新型コロナの流行を期に普及したのが「置き配」です。
柳裕太さん
「置き配で配達が多いですね。だいたい7割8割はほぼ置き配です」
置き配指定の荷物を配達していく柳さん。置き配は対面での受け渡しではなく、玄関前に荷物を置くため、受取人が不在の場合でも配達が可能となり再配達が減少。配達員の負担は減ったといいます。しかし、この置き配を巡り、ある問題が…。
「置き配指定」の荷物を抱え、都内のマンションに向かう柳さん。ところが荷物を持ったまま車に戻ってきました。一体、何があったのでしょうか?
住人が不在で、マンションのオートロックを開けてもらえず、置き配指定の荷物を玄関先に置くことができなかったのです。
不在時に便利なはずの置き配ですが、「オートロック」が大きな壁となっているのです。
置き配の新形態 配達員がオートロック解錠!?
続いて訪れたマンションでも、またしても住人が不在でオートロックに阻まれ、置き配指定の荷物を持ち帰ることになりました。
「不在です」
「(Q.こういうパターンは多い?)そうですね。よくありますね。やっぱり時間指定じゃなかったんで。まあいると思ったんですけども。不在だったので」
「(Q.残った分は次の日にプラスしていく?)そうですね。翌日分プラス、前日配達できなかったやつを配達しないといけないので、どんどんプラスしていっちゃうので、残業が増えるっていうことですね」
「(Q.再配達で報酬が出たり、給料が上がったりは?)もう全く変わらないですね」
「経費もかかりますし、ガソリン代もかかるので、ドライバーとしても時間もかかりますし、二度手間になるので、あんまり良くはないです」
再配達しても配達員の報酬が加算されることはなく、また、手間や時間がかかるなどメリットはないといいます。
置き配指定なのに、オートロックに阻まれ置き配できないという問題。こうした問題の解決に向け、政府が検討を始めたのが、配達員によるオートロック解錠です。
「配達員がマンションのオートロックを解錠するための仕組みは、すでに複数の企業により開発をされており」
現在、複数の企業で開発が進んでいる「配達員によるオートロック解錠システム」。すでに2万棟以上で導入実績があるといい、国交省は、運送会社ごとに異なるシステムの共通化を推進する方針です。
しかし、本来住人や関係者以外解錠できないはずのオートロックを、宅配便の配達員が解錠することに対して、こんな声が聞かれました。
「いいとは思うんですけど、防犯上の問題がどうなのかなと感じます」
40代
「配達員さんを装って入る人がいないとも限らないので、怖さはありますね」
では、一体どのような仕組みなのでしょうか?開発している企業に話を聞きました。
ビットキー 寳槻昌則代表取締役社長
「(Q.宅配業者はどのようにしたら中に入れるんでしょう?)セキュリティーが非常に重要だと思っていますので、ビットキーの置き配システムでは“3つのOK”。この3つがそろって初めてドライバーの方はエントランスを入れる。こういう仕組みを実現できています」
オートロック解錠に必要だという“3つのOK”。1つ目は、本人確認ができている配達員であるか。2つ目に、配達中の荷物を持っているか。3つ目に、受取人が置き配を希望しているか。この3つの条件のうち、一つでも欠けているとオートロックは解錠できない仕組みになっているといいます。
実際にオートロックを解錠するために、配達員はどのような手順を踏むのか見せてもらいました。
「実際にはですね、ドライバーさんというのは荷物の他に、現場ではこういった端末というものを持っています。これは会社(配達業者)から配られる専用端末で、特別なシステムとつながっている仕組みですね」
「(Q.これがドライバーさんの本人確認になるんですね)はい、おっしゃる通りです。ビットキーのアプリもこの中に入っているイメージです」
この新たなシステムについて、配達員は…。
「助かりますね、やっぱり。今オートロックのおうちが多いので、それで不在が増えるとなると(荷物の)持ち戻りが多くなって、翌日の配達が大変になるというのが結構あるので」
配達員によるオートロック解錠での置き配。導入の背景と、利用者の反応は?
実証実験も…「今後も利用したい」9割超 理由は?
配達員がオートロックを解錠できる仕組みが、順次導入されているといいます。
オートロック解錠システムを導入しているマンションの管理会社、大京アステージによりますと、再配達を減らしたいと思っている入居者は多いが、宅配ボックスが足りない、設置できないというマンションもあり、宅配ボックスだけでは再配達問題に対応しきれないなどといった背景から、すでにおよそ60のマンション組合が導入を決定しています。
実際に実証実験も行われました。東京・江東区のマンション81世帯を対象に、配達員がオートロックを解錠し、玄関前に置き配を実施するというものです。「今後もオートロック解錠での置き配を利用したい」と答えた人が95%に上りました。
その理由は、「宅配ボックスは取りに行くのが手間。置き配のほうがシンプルで良かった」「配達時にチャイムを鳴らされると、その度に赤ちゃんが起きてしまうので困っていた」「利用当初は不安もあったが、慣れてきたら特に不安はなくなった」という声もありました。
一方で、街の人たちからは「一緒に誰か入ってくるのではないか」「何かあった時に誰が責任を取るのか」といった不安の声も上がっています。
当時の中野国交大臣は、「この仕組みはマンション管理組合などの合意がなければ導入されることはない。防犯上の懸念などに対する国民の声を聞きながら、引き続き丁寧に検討を進めてまいりたい」と述べていました。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年10月30日放送分より)














