社会

ABEMA NEWS

2025年11月2日 18:45

三重県“アスリート盗撮も性暴力”条例 罰則なしはなぜ?お気持ち表明? 「罰金にしても“払えばいいんだ”となりかねない」

三重県“アスリート盗撮も性暴力”条例 罰則なしはなぜ?お気持ち表明? 「罰金にしても“払えばいいんだ”となりかねない」
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 10月27日、三重県で「性暴力の根絶をめざす条例」が施行された。性犯罪や性的虐待、ストーカー、セクハラだけでなく、アスリートに対する“性的な意図での盗撮”も「性暴力」と位置づけた。事業者にはこうした性暴力根絶を目指し、努力義務を定めている。

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 ネットでは、「アスリートを守るためには良い条例だね」「ぜひ全国に」といった声が上がったが、この条例は罰則がない、いわゆる「理念条例」で、その実効性に疑問を抱く意見も出ている。10月1日に愛知県豊明市で施行され話題となった、生活で必要な時以外のスマホ利用目安を1日2時間以内に促す「スマホ条例」も、同じく罰則規定はない。

 なぜ三重県の条例は罰則規定が設けられなかったのか。そして、罰則のない理念条例の異議とは。『ABEMA Prime』で考えた。

■なぜ罰則なし? あっても「払えばいいんだ」となりかねない?

 条例を含めた地方自治法に詳しい横浜国立大学教授の板垣勝彦氏は、罰則規定が設けられなかった理由について説明する。盗撮や性的な撮影については、「性的姿態撮影等処罰罪(撮影罪)」「児童虐待防止法」など、国の法律で禁止・罰則があり、条例で入れる必要がないこと。アスリートは、人前で競技をするという“見られること”が前提であり、良い撮影と悪い撮影の区別が難しいことをあげる。

「条例」とは

 板垣氏は「自治体側も、罰則をもってまで決まりを守ってもらおうとは考えていないだろう」と指摘する一方、“アナウンス効果”は大きいと説明。「実際にアスリートの盗撮をむやみにやってはいけないと、行政が当該政策課題に本気で取り組んでいるという意気込みを示す目的はあると思う」とした。

 元明石市長で現参院議員の泉房穂氏は、理念条例でも意味があるという考えを示しつつ、今回の三重県の事例は「もう一歩踏み込む余地はあった」との見方を示す。「明石市長時代に、水上バイクの危険行為を受けて罰則を作った。国・検察庁と相談しながら進めたので、今回の件も国の法律との整合性をとっての罰則化は可能だったと思う。最初は努力義務だけで、後から改正して罰則をつける段階的なやり方もある」。

 一方、作家で株式会社カルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏は、罰則を設けることの弊害を指摘。「『なんでダメなんだ』と言われた時に、『条例違反だから』と言い返せるのは1つある。例えばアスリート盗撮が3万円罰金だとして、“払ったらいいのか”“じゃあ払うよ”という事例が出てきかねないのが、行動経済学の話でもある。逆に罰則なしで良かったのではないか」と自身の考えを述べた。

 これに対し、ギャルタレントのあおちゃんぺは罰則の金額が左右するとし、「有名アイドルの撮影会だと、3〜5万円という金額で個別撮影ができる。そういうのも見て、“この値段だったら絶対払えない”という罰則じゃないと意味がないと思う」とコメントした。

■国が法律化する“観測気球”としての役割も?

 板垣氏は、地方自治体の条例が国の法律へと発展していく、重要な役割を担っている面もあると説明する。「埼玉県所沢市が始めた空き家条例(空き家等の適正管理に関する条例)が、“これは良い規制だ”ということで、4年間で全国400の市町村が同じような条例を作った。さらに国にも波及して、空き家特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)ができた。滋賀県の琵琶湖条例も、今では全国で当たり前になっている。地域の実情をいち早く察知し、それが全国的に取り組むべき政策だと判断されれば、国が法律として全国的に通用するルールを作るという流れは、最近よく行われている」。

 ただ、人のプライベートな部分に踏み込むような条例は避けるべきだという。「“スマホ○時間”“ゲーム○時間”というのは、そこまで条例で口を出すようなことではないと言われている。一方で、歩きタバコやエスカレーター条例など、他人と関係してくるようなことは公共安全の問題になってくるので、条例などで規制するのが親和的だとも言えるだろう」とした。

泉房穂市が明石市長時代に成立した条例

 泉氏は、条例や法律以外にもやり方はあると投げかける。「明石市長時代、歩きタバコやポイ捨てを止めたかった。条例で罰則を入れようと考えたが、“入れても守られないかもしれない”と。何をしたかというと、喫煙コーナーをいっぱい作って、警備員を常駐させて、『あっちで吸ってください』と促した。そっちのほうが効果が高いと思ったので、やり方は罰則以外でもあると思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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