社会

ABEMA NEWS

2025年11月3日 13:15

ヒグマに襲われ140針…当事者に聞く恐怖「後ろから倒されて、最初は何かわからなかった」相次ぐクマ被害の対策は?

ヒグマに襲われ140針…当事者に聞く恐怖「後ろから倒されて、最初は何かわからなかった」相次ぐクマ被害の対策は?
広告
1

 クマ被害の死者が12人(10月末時点)と過去最多となり、深刻な事態となっている。     

【映像】ヒグマに襲われ、140針縫ったケガ(実際の映像)

 自民党や政府は対策を議論し、11月中旬までに対策強化案をまとめる予定だ。大きな問題は、クマが人里や住宅に現れるケースが相次いでいることで、クマが公民館のドアに体当たりしたり、住宅の庭にある柿の木に居座ったりといった事態が多発している。

 クマ駆除に対する抗議電話が殺到していた自治体では、それらが激減した上に、「やむを得ない」「もっと駆除して」といった意見が出ているという。『ABEMA Prime』では専門家と、クマ被害から生還を果たした当事者とともに、これからのクマ対策について考えた。

■ヒグマに襲われ、140針のケガを負った当事者

安藤伸一郎さん

 札幌市在住の安藤伸一郎さんは、4年前に住宅街でヒグマに襲われ、140針のケガを負い、今も後遺症が残っている。「最初に背中を襲われたとき、80針程度の引っかき傷と、結構大きなケガを負った。肋骨も6本折れ、骨はくっついたが今も痛む。膝に爪が刺さり、そこで起きた炎症が治らず、痛い状態が続いている」。

 事故当時の状況については、「クマに倒されて、1回離れたが、また戻ってきてかまれた。その後、パトカーが来て、クラクションか体当たりかを行ったことで、やっとクマが逃げた」と振り返る。

 現場は「札幌の市街地にある住宅街で、普通はクマが出るような場所ではない。地下鉄に乗りに行こうと歩いている途中だった」という。「後ろから倒されて、最初は何かわからなかった。体を揺らされ、横になったときに、左腕をかまれた。痛みがひどく、頭を守った」。

 その後は「ICU(集中治療室)に10日ほど入院していた。雑菌が広がったため、なかなか手術できず、3日間程度はガーゼを取り換えて、きれいにする治療を続けていた」と明かす。

■「今年の場合は間違いなく餌の不足」

坪田敏男氏

 北海道大学大学院獣医学研究院の教授で、クマの生態などを研究してきた坪田敏男氏は、安藤さんの事故について、「4人が次々襲われた残念な事故だった。クマは5歳ぐらいの比較的若いオスで、おそらく自然の山中で、他のオスとの戦いに負けて、間違って札幌市内に出てきた状況だったのだろう」と分析する。

 クマが市街地に出没する理由として、「今年の場合は間違いなく餌の不足だ」としつつ、「4年前のケースは、それとは違う」と説明する。「オス社会の中で競争に敗れて、あふれ出てきたのだろう」。

 クマ側については、「クマにとっても、間違いなくストレスがかかる。札幌市のど真ん中に出てしまい、おそらく『しまった』と思った。そして、パニックになり、次々と人を襲っていった」と考察する。

 では、ここ最近のクマ出没には、どのようなメカニズムがあるのか。「ヒグマやツキノワグマが市街地に出ているのは、間違いなく餌の問題だ。10〜11月は冬眠前で、これから食いだめをして、体脂肪を蓄えないといけない時期になる。その時にドングリを食べるが、今年は北海道や東北でドングリの生育が悪く、特に深刻なのが東北だ」と、餌を求める背景を語る。

■「人の存在を怖いものとして認識させることが必要」

人慣れしているクマ

 坪田氏によると、「クマが情報伝達するのは親子間だけだ。ツキノワグマは1年半、ヒグマは2年半ほど、母と子が一緒に生活する」という。そして、「その間に食事や冬眠などの生きるすべを知るが、その中で『人間の怖さ』も教わるだろう。となると、1頭だけを怖がらせてもダメで、各地域で山の中に入り、人の存在を怖いものとして認識させることが必要だ」と呼びかける。

 そこで重要となるのが、怖がらせる存在を「だれが担うか」だ。「いま必要とされているのは、最終手段としてクマを撃てるような行政側の管理者である“ガバメントハンター”。『住民の命を守る』『うまくクマと共存する』といった考えのもとで、行政にきちんと管理者を配置して、地域の安全を守る人を育てる必要がある」。

 実際に被害にあった立場からは、クマと“共存”できると感じるのか。安藤さんは「このままの頭数では難しい。言い方は悪いが、数をある程度減らして、街中に下りてきたクマは駆除する形にしないと難しいのではないか」とコメントする。

 現状で取れる対策について、坪田氏は「クマは基本的に、慎重で臆病な動物だ。おそらく人間を怖がっているだろう」として、「猟犬やドローン、大声などで山に返すのは、1つのやり方だ」とアドバイスする。

 しかしながら、「気をつけないといけないのは、人里に出たクマは、ストレスでパニックになっていること」と警鐘を鳴らし、「そうなると、人の手ではどうしようもなく、ハンターに駆除してもらうしかない。専門家と一般市民で、『できること』は見極める必要がある」とした。

(『ABEMA Prime』より)

広告