過去最悪のペースで増え続けるクマの被害。
秋田県では、3日だけで、3件のクマによる可能性が高い被害や、遭遇が確認されました。
湯沢市で、後藤キヨさん(79)が遺体で見つかりました。顔や腹などに外傷があり、クマにかまれたとみられる痕が複数、あったそうです。
人的被害が過去最悪のペースで増えているなか、個体数管理などは、急務となります。しかし、実情は、厳しいものがありました。
盛岡市で新聞販売店を経営する稲葉順一さん(68)。
配達から戻ったら、すぐに猟友会の仕事。リンゴ畑に仕掛けた罠を確認しに行きます。
クマの痕跡がありました。
「いま、一番ひどいのがリンゴ被害。かき入れ時に全滅するところもある、クマ1頭のために」
3連休もクマの駆除に費やしていた稲葉さん。
3日朝も1頭、罠にかかっていました。体重が推定50キロのメスです。
「小グマじゃない、成獣。(Q.このくらいでも人を殺せるか)怖いよ。絶対、負ける。負けます」
これで3日連続の駆除となりました。
稲葉さんが4月から捕獲したクマは、すでに30頭を超えています。捕獲だけでなく、解体までが業務です。
「クタクタになるのは確か。ただ、今年に限っては例外ですよ。あんなにクマが頻繁に出てくるということはないですから」
ハンター不足は解消されておらず、その負担は増すばかりです
「(Q.ガバメントハンターについては)このままでは、絶対、続かない。安定したお給料をいただけるような。そのほうが駆除活動にしてはいいんじゃないでしょうか」
人数を確保しても、育成は難しいとしています。
「育成するためにはどうしたらいいの?って。昔なら先輩に付いて、いろんな猟を覚えてくるけど、動じる人もいるんですよ。クマを目の前にして吠えられたら。いくら腕が良くても。どうしたらいいんでしょうね」
◆ハンターの実情です。

大日本猟友会によりますと、クマの駆除ができる会員は、1970年代、40万人超えるという時期もありましたが、現在は5万6000人まで減少しています。本来は、趣味で狩猟をする人たちですが、ハンターとして、クマ対策を担っている人が多いというのが現状です。
例えば、秋田県のある自治体では、猟友会メンバー77人が自治体の対策チームに所属しています。活動内容は、箱罠の設置・撤去、罠の見回り、捕獲、駆除、解体などです。
自治体によってハンターの報酬は異なりますが、秋田県のある自治体では、基本的な手当てとして、1人当たり、年間5000円。これに加えて、見回りや捕獲などで出動すると、1日、2500〜3000円が支払われます。
さらに、クマを捕獲した場合、実働したハンターのチームに1頭につき1万円が払われます。例えば、ハンター5人で捕獲した場合は、1人2000円ですが、これは捕獲後、解体などの処理作業を行って、初めて支払われる報酬です。処理作業を別の業者が担った場合、捕獲、駆除しても報酬がありません。
出動が多い人は、年間100〜150日ほどで、年間30万円ほどの報酬を得ているといいます。ただ、見回りなどで使う車のガソリン代や猟銃の維持費などは、ハンターの負担のため、報酬はほとんど手元に残らないそうです。
取材に応じた秋田県の自治体は「いまは、お金のためではなく、人の役に立ちたいというハンターの善意に頼っているのが実情だ」と話します。
