過去最悪の状況に陥っている“クマ被害”。
クマの出没は、5日も全国で相次いでいます。
4日から住宅街近くで目撃情報が相次いでいる富山市。市内では、今年に入って、約300件の目撃情報があります。
5日午前10時半ごろ、猟友会による緊急銃猟での駆除。富山市では、2例目のことです。
秋田県では、状況の深刻さが突出しています。
5日朝も、仙北市では、市街地にある美術館の玄関付近を歩く大きなクマの姿が捉えられています。
県は、警備会社に依頼して、小中学校の登校時間に合わせて爆竹を鳴らすなど、クマ被害防止の取り組みを行っています。
秋田市では、先月も目撃情報あった公園で、またクマの目撃情報があったため、再び立ち入り禁止にしました。警戒感が高まっています。
いよいよ、クマ対策に国が動き出しました。
秋田県庁では、自衛隊との協力協定の締結式が行われました。
「今回の協定を踏まえ、我々として、少しでも役に立てるように、本日からいろいろなニーズを踏まえながら活動してまいりたい」
自衛隊への協力要請は、鹿角市のほか、大館市など、県内の約半数からきています。
「被害が非常に深刻であること。こちらが能動的に選んだというよりは、自然的に鹿角からスタートということになった」
鹿角市の施設には、続々と自衛隊員の姿が。駐車場にも大型の車両がたくさん並びます。
5日の任務は、6キロほど離れた場所へ、箱わなを移動させるというもの。
自衛隊が担う任務は、箱わなの運搬や、見回りに伴う猟友会の輸送、駆除されたクマを埋設する穴堀りなどです。
隊員の装備を見ると、手には、木銃と呼ばれる木の棒、腰腰元には、水筒とクマスプレー。防弾チョッキとゴークルは着用しますが、銃火器は持ちません。活動には、原則、猟師が同行し、クマに遭遇した場合は、猟友会が、射殺を含めて対応することになっています。
自衛隊には、法的な制約があり、作業をなんでも担うというわけにはいきません。
「こっちがこういうの、ああいうのって要望しても、『それは自衛隊法でできません』とか、そういう答えが返ってくるので、『じゃあ何できるの?』と。それが、いまみたいなこと。それを理解をしないとダメだ思う。やってくれる部分をありがたいと、まず受け入れるしかない」
ただ、体力的な助けになるのは確かだと話します。
「おりそのものが、120キロぐらいあるのかな。それを年配の人たちが4人でというと、結構、きついというのも含めると助かる」
同じ鹿角市でも、地域によって事情が異なります。
市の中心部から離れた山間部。今年は、クマによる人身被害が出ていません。
去年から、クマが好む栗の木の伐採を進め、柿の実は、早めに収穫するようにしました。
「クマは、栗の木に来るということで、管内を役員と猟友会で一緒に周ってチェックした。(Q.何で自分たちでやろうと)ここにクマが来ると困るから」
今年に入って7人が、クマ被害にあっている鹿角市。自衛隊の活動期間は、今月末までとなっていますが、地元からすれば朗報です。
「今回、初めての取り組みなので、いろいろ細部では課題等あるとは思うが、法的な部分で、どこまでが自衛隊ができるのか。どこまでは、できないのかなどのすり合わせとか、実際にやってみたところで、新たに見つかるものもあると思うので、一つ一つ克服しながら、一緒になって目的を果たせれば」
鹿角市にある果樹園。
これまでにクマによる被害は10回以上。食い荒らされたリンゴは、約200個です。
果樹園の中では、24時間、ラジオを流したり、ポケットには、爆竹を忍ばせ歩く日々。いまは、収穫時期ということもあり、気が休まりません。
「(Q.自衛隊の後方支援の受け止めは)すごくありがたいことだと思います。人身被害が、すごく多発してますから、いつ自分もそういうふうになるか、毎日、不安です。(Q.早く助けに来てほしかった)そうですね」
◆今回の陸上自衛隊の活動内容です。
防衛省によりますと、箱わなの運搬、見回りの支援、ハンターが駆除したクマの運搬・埋めるための穴掘りなどです。装備品は、防護盾・木銃・防弾チョッキ・クマスプレーなどで、クマを撃つための銃火器は携行していません。
元陸上自衛隊の幹部で、日本大学危機管理学部の吉富望特任教授は「そもそも自衛隊は、自衛隊法に基づいた活動しかできないため、できることが限られる。特に、武器の使用に関しては、厳密に規定されていて、動物を駆除することは想定されていない」としています。
もし、銃が使用できたとしても、自衛隊が、直接、クマを駆除することはそんなに簡単ではないといいます。
自衛隊の対人用の小銃は、弾が尖っていて貫通力がありますが、クマに致命傷を与えることが難しいそうです。一方、ハンターが持つ猟銃は、貫通力よりも破壊力を重視していて、クマを1発で仕留めるのに有効だといいます。
さらに、吉富さんは「いきなり自衛隊が猟銃を使っても、小銃と比べて撃った後の反動が大きいため、弾が狙った場所に行かない。正確に的に撃つためには、相当な訓練と経験が必要。私の場合、小銃の訓練でも数百発ぐらい撃たないと、ある程度のレベルに達しなかった」と話します。





















