社会

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2025年11月6日 16:08

クマ災害 秋田で自衛隊活動開始 なぜ人里に? クマ猟師に密着「今年は特別」

クマ災害 秋田で自衛隊活動開始 なぜ人里に? クマ猟師に密着「今年は特別」
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 クマの被害が深刻な秋田県で、5日から自衛隊による支援活動が始まりました。1人が亡くなっている北秋田市で猟師の男性を取材しました。

なぜ人里に?耕作放棄地が要因に

 夜の住宅地に響く、人の怒鳴り声のような音。クマの鳴き声です。よく見ると、暗闇の中を走る姿が見えます。

2頭のクマが木に登っている姿
2頭のクマが木に登っている姿

 さらに、住宅地のすぐ近くで2頭のクマが木に登っている姿も見えます。

 この2つの映像が撮影されたのは、北秋田市。今年、クマによる人身被害が5件発生し、そのうちの1件では、ゴミ出し中に襲われた70代女性が死亡しています。

猟師 鈴木英雄さん(78)
「この辺もクマ歩いているし。その辺も出たりという感じです」
猟師 鈴木英雄さん
猟師 鈴木英雄さん

 北秋田市の阿仁地区で猟師をしている鈴木さん。江戸時代から続くマタギの家系の9代目です。

 自宅の庭の木には、引っかいた跡が残っています。

自宅の庭の木には…
自宅の庭の木には…
「こうやって引っかいていますね」

 鈴木さんら5人のマタギは、クマの見回りを交代で担当しています。

「すぐ自分の体を隠すというのがクマの習性なんですよ。だから(道の)真ん中にはあまり居ないけど、ふちにいるんですね」

 この辺りでは11月に入り狩猟シーズンが始まったため、箱わなは撤去。クマが出没した際には、猟銃で対処するといいます。

クマ棚
クマ棚
「(今年は)これから危ないと予測したのが、この木なんですよ。あそこに棚みたいな小さい(枝が)集まっているでしょ。あれをクマ棚というんですけど。枝を折って、手元に持ってきて(実を)食べるんですよ」

 木の股に座ってクリやクルミの実を食べ、そこに折った枝を積み重ねたのがクマ棚です。

 鈴木さんが今年の危険を予見していたのが、クルミの木にできたクマ棚でした。

「クルミちぎる(食べる)年は餌(えさ)がない年。クマにとっては大変な年だと予測した場所で、予想した通りになった」
普段は好んで食べないクルミを食べていたクマ
普段は好んで食べないクルミを食べていたクマ

 餌不足の影響で、普段は好んで食べないクルミを食べていたクマ。さらに餌を求め、住宅地まで姿を現すようになったといいます。

 もう一つの大きな要因が…。

高齢化による影響
高齢化による影響
「その辺も家があったんですよ。ここから見えるだけでも1軒、2軒、3軒、4軒あったんですよ。家がなくなると林がどんどん押してくるんですよ。そうするとクマがどんどん隠れて(人に近付く)。高齢者だけになって、田んぼも維持できなくなって。これもいずれ(荒れて草が)ボーボーになって」

 住宅が減り耕作も放棄された土地は、クマが人里まで近付きやすくなっています。

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地下室にクマ侵入 被害急増「今年は特別」

 こちらの住宅では、先月22日、クマが地下室に入り込みました。

被害を受けた男性
被害を受けた男性
被害を受けた男性
「(朝)5時半ごろかな、すごい音が鳴ってたんだ、地下で。走ってきて手をかけてこうしたら、目の前に(クマが)出てよ。(クマが)歩いてきたんだよ。びっくりしたってもんじゃなかった」

 地下室に入り込んでいたのは、体長1メートルほどのクマでした。

体長1メートルほどのクマ
体長1メートルほどのクマ

 男性はロケット花火で追い払おうとしましたが、クマは逃げずにそのまま3時間ほど居座り続けたため、警察や猟友会に連絡。箱わなを仕掛けて捕獲しました。

「怖いなんて、そんなもんじゃなかった。シャッター下げて走って行って(逃げた)。朝飯前だったんだ。飯食いたくても食える気持ちじゃ」

 クマが居座った男性の家の周りには荒れた土地が。昔は、何件も住宅が立ち並んでいたといますが、今はほとんど建っていない状態でした。

 クマ対策として、鈴木さんたちのマタギのグループは、クマが出没してもすぐに発見できるように、荒れた土地の草刈りをボランティアで行っているといいます。

荒れた土地の草刈り
荒れた土地の草刈り
鈴木さん
「私たちはこういうところも緩衝帯といって、(雑草を)払って、少しでも明るくするといいかなと思って」

 代々、猟師としてクマを狩猟してきたマタギの鈴木さん。これまで狩猟は年に5頭程度でした。しかし今年は、駆除の依頼が圧倒的に増え、すでに15頭以上を駆除したといいます。

 先月、北秋田市の住宅街に現れたクマの鳴き声を鈴木さんに聞いてもらうと…。

「ああクマ!これはクマ。子ども(クマ)が親(クマ)を呼んでいるのかもしれない」

 地域の見守り役として活動する鈴木さん。去年と比べ、今年は…。

「今年は特別」
「今年は特別」
「去年はほとんど(見回りは)なかったんで、クマを目撃した人もいたけど、ほんと数件で…。今年は特別ですね…」
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自衛隊が秋田で活動開始

のっそりと歩くクマ
のっそりと歩くクマ

 5日も秋田県ではクマが出没しました。体を揺らしながら、のっそりと歩くクマ。これは、5日午前6時ごろ、秋田県仙北市の角館駅のすぐ近くにある美術館の防犯カメラが捉えた映像です。

大村美術館の副館長
「日中はかなり観光の人が訪れ、にぎやかな場所」

 クマが人里へと降りてくるのが「日常」となっている秋田県。5日に自衛隊が本格的な支援活動を開始しました。

秋田県 鈴木健太知事
秋田県 鈴木健太知事
秋田県 鈴木健太知事
「10月に入り毎日のように人身被害が報告をされるなかで、現場では『もう手が回らない』という悲痛な声をいただいておりました」
陸上自衛隊 第9師団長 松永康則陸将
陸上自衛隊 第9師団長 松永康則陸将
陸上自衛隊 第9師団長 松永康則陸将
「今クマによる被害というのは、秋田県内においては危機的な状況であると認識しております」

 秋田県内では今年クマによる被害で4人が死亡、56人がけがをしています。そのほとんどが人里で襲われていたのです。

 市の職員、猟友会の方々を先頭に山の中に入っていきます。

盾を構えた自衛隊員たち
盾を構えた自衛隊員たち

 クマが出没した時を想定した訓練でしょうか。盾を構えた自衛隊員たちが、固まりながらゆっくりと後ずさりしている様子が確認できます。

 自衛隊の活動は、まず鹿角市で、箱わなの運搬や設置の訓練などが行われました。

 秋田県内の半数以上の自治体から、自衛隊に支援の要望が出ています。

鈴木知事
「今回は、極めて例外的緊急的な要望だということを自ら認識して行った」
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富山で緊急銃猟 国道脇にクマ

富山市で「緊急銃猟」
富山市で「緊急銃猟」

 クマの被害は秋田県だけではありません。5日午前、富山市では「緊急銃猟」が行われました。

 木々の奥には、手に盾をもった警察官の姿が。そのすぐ近くにはオレンジ色のジャケットを着て、銃を構える猟友会の男性3人がいます。

 すぐ手前の国道は、多くの車が行き交っています。

駆除されたのは成獣のクマ1頭
駆除されたのは成獣のクマ1頭
「今、発砲音が聞こえました」
「午前10時26分、発砲音が聞こえました」
「今、猟友会のメンバーがクマの確認をしています」
「今、駆除されたクマが運ばれていきます」

 市によると、駆除されたのは成獣のクマ1頭。クマは竹藪の奥にあるプレハブ小屋に潜んでいたといいます。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月6日放送分より)

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