社会

報道ステーション

2025年11月7日 01:17

13日からライフル使用可能に…クマ対策 警察の“駆除解禁”へ 猟友会との連携重要

13日からライフル使用可能に…クマ対策 警察の“駆除解禁”へ 猟友会との連携重要
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秋田県で、5日からクマ対策の後方支援を行っている陸上自衛隊は、6日も鹿角市で、箱わなの運搬などを行いました。

目撃情報が相次いでいたリンゴ畑の近くでは、6日午前、わなにかかったクマ1頭を猟友会が駆除し、自衛隊員が運び出しています。

クマによる人身被害

秋田県では、クマによる人身被害が61人に上り、4人が死亡。大館市では、5日から住宅に居座っていたクマが、箱わなで捕獲されました。

“災害級の非常事態”を受け、自衛隊に続いて、警察も動き出しました。

警察庁 楠芳伸長官
警察庁 楠芳伸長官
「警察官職務執行法に基づき、ライフル銃を使用して、クマの駆除を開始できる体制を構築したい」

警察庁長官が明らかにしたのは、機動隊によるライフルを使ったクマの駆除です。

警察官のライフル使用

これまで、警察官のライフル使用は、ハイジャック犯や、武器を持った立てこもり犯など、凶悪犯罪の対応に限られていました。

1972年の『あさま山荘事件』では、人質をとって立てこもった連合赤軍のメンバーに、ライフルを持った警察官が応戦しました。

今回、規則を改正し、ライフルなど“特殊銃”の使用条件に『クマの駆除』を加えます。施行は、13日です。

機動隊の銃器対策部隊

これに先立ち、6日、各地の機動隊の銃器対策部隊が、クマ被害が特に多い、秋田県と岩手県に派遣されました。ライフルを所持した機動隊員2人と指揮官、自治体との調整役の4人がチームとなりで、1県あたり、2チームを編成。1週間、訓練などを行うということです。

派遣された“銃器対策部隊”は、銃を使ったテロなどに対処する部隊。全国の機動隊に設置され、約2100人の隊員がいます。

秋田県の猟友会メンバー
秋田県の猟友会メンバー
「ちゃんと銃の訓練をしている警察官が、クマの勉強をすれば撃てるようにはなると思う。銃を扱うプロの人が訓練して、クマも撃てるようになるというのは、すごく助かるのではないか」

一方、5日に開かれた自民党のプロジェクトチームの会合に参加した猟友会の会長からは、こんな意見も出ました。

大日本猟友会 佐々木洋平会長
大日本猟友会 佐々木洋平会長
「長くて、30秒、10秒ぐらいで撃たないと撃てない。瞬間に撃たないと撃てない。クマを撃つことは、本当に大変なこと。命がけ」

ただ、そうこうしている間も、クマは待ってくれません。

箱わな

岩手県盛岡市では、5日も庭に設置された箱わなに、クマがかかっていたそうです。

地元住民
地元住民
「これはクマ撃退スプレーだ。それとクマ鈴。あちこちでクマの被害は、皆、わかっているから車以外では移動しない」
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教育現場にもクマが出没していることを受け、文部科学省は6日、全国の教育委員会の担当者を集めた緊急連絡会を開催。学校におけるクマ対策について話し合われました。

秋田県教育庁保健体育課 菊池勇拓さん
秋田県教育庁保健体育課 菊池勇拓さん
「クマが出そうにない県の方々も危機意識を持っていて、学校にどう周知していけばいいか、聞きたがっていたので情報共有できた」
クマ

5日午後4時過ぎ、秋田県鹿角市にある中学校のグラウンドにクマが現れました。生徒は、すでに帰宅した後でした。

クマ

子グマは、グラウンドを横切り、姿を消したそうです。

相次ぐクマの出没を受け、9月以降、保護者による送迎が続いています。

保護者
保護者
「子どもたちがいるところなので、やっぱり怖いなって思います。(送迎は)大変ですけど、命は、大切なんで、仕方がないなと」
クマを近づけない対策

近くの小学校では、校長自ら、笛を吹いたり爆竹を鳴らすなど、クマを近づけない対策を行っていました

尾去沢小学校 中村聡校長
尾去沢小学校 中村聡校長
「朝と、それから中休みというか、午前10時半ごろにやっている。子どもたちが安全に安心して、過ごせるようにと願って」
クマ対策の道具

職員室には、クマ対策の道具がしっかりとあります。

尾去沢小学校 中村聡校長
「(敷地内に)出没したことは、いままでないんですが、念のためということで。これも持って、スプレーも持って行きます」

そんななか、取材中にクマが現れたという報告が入ります。

尾去沢小学校 中村聡校長
尾去沢小学校 中村聡校長
「いま、すぐそばでクマが出没したということで、子どもたちも住んでる地域なんですが、警察が、いま来て、パトロールをするそうです。私たちは、これから保護者に注意喚起メールをしたり、近隣の中学校に対しても、情報共有をこれからやります」
クマ出没のメール

クマ出没のメールを今月に入り3回、先月は18回送信したそうです。

尾去沢小学校 中村聡校長
「クマが出没しないようになって、通常通り、学び・遊びができるようになってほしい」

日常生活にも、クマの影響が広がっています。

日本郵便

日本郵便は、クマの出没地域では、集配業務を見合わせる可能性があるとしています。秋田県の一部地域では、配達を見合わせているということです。

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◆警察によるクマ対策。今月13日から、ライフルでクマを駆除できるようになります。

警察官による“クマ駆除”

6日、秋田県警と岩手県警に県外の警察から機動隊の銃器対策部隊を派遣しました。4人1チームで対応にあたります。指揮官1人、狙撃担当2人、市町村との調整担当1人。派遣された機動隊と地元警察の合同チームで、各県に2チームが出動します。

まず、1週間で、地元の猟友会などと連携して、クマの特性などに関する教養・訓練を実施。クマの出没地域などに同行して、どういうときにどういう判断をするかを準備するとしています。

特殊銃が配備される部門が担う任務

これまで、ライフルなど特殊銃が配備される部門が担う任務は、警察官等特殊銃使用及び取扱い規範の第4条で、重要な施設の警戒・警備、ハイジャックの対処、凶悪犯罪の鎮圧などのような状況に限られていました。この規範を一部改正し、今月13日から新たに『危険鳥獣による人の生命への危害を防止するため、特殊銃で捕獲または殺傷する』を追加。これによりクマなどの駆除が可能になります。

準備期間

準備期間について、警察庁の関係者は「緊急性が高いため、1週間という期間になった。銃の訓練は普段から行っているので、扱い方には慣れている。あとは、猟友会の人たちに、クマの生態や、一発で仕留めるための急所がどこにあるかなど教えてもらうことが重要」としています。

伊藤鋼一さん
伊藤鋼一さん

元警視庁の特殊部隊SATで、テロ対策などを行った伊藤鋼一さんは「現場では天候・風などの影響も受ける。谷や茂みで射撃姿勢をどう確保するか地形的な難しさもある。本来は、2週間程度あると望ましいが、地元の危機感があるので、警察官としては早急に対応する必要がある」としたうえで「機動隊が活動することで、人手の補強になり、地元の人たちに安心感を与えることにつながると思う。任務遂行に期待したい」と話します。

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