東京・中野で10月、人力車の全国大会「Red Bull(レッドブル)人力車」が行われた。全国の観光地から凄腕の55人の引き手が集う中、ABEMA的ニュースショーは人力車歴4年の原田優一郎さんに注目した。23歳にして月収127万円の“スーパー引き手”で、5カ国語を流ちょうに操ることから“推しファン”もいる。
原田さんが所属する「東京力車」は2019年に東京浅草で創業し、従業員は約120人(女性3割)。しかしデビューするためには、合格率約10%という厳しいテストがあり、中には16回連続で不合格となる研修生もいる。
全国大会では、そんな厳しい関門をくぐり抜けた精鋭55人が、1日目の予選では人力車を引いた100m走、2日目の決勝では障害物競走に挑んだ。監修したのは、人力車でアメリカ・アフリカを縦断した「人力車の旅人」ことガンプ鈴木氏だ。
人力車は車体だけでも90kgあり、持ち上げるだけでも一苦労だ。しかし選手たちは“爆走”する。圧倒的な速さを見せたのは、同じ浅草のライバルである元ラグビー日本代表の児玉健太郎さん(33、松風所属)だ。
予選では、児玉さんが15.173秒で1位、原田さんは15.910秒で5位となった。1位とのタイム差は、わずか0.7秒。原田さんは決勝に向けて、「むしろ障害物があった方が、馬力があるので勝てると思う」と意気込んだ。
2日目の決勝には、東京力車の鬼試験を取り仕切る西尾竜太代表も激励に駆けつけ、「1位、2位、3位を取らないと全員退職になる」と冗談を飛ばした。
障害物競走は100mのコースだが、途中で15度の急勾配の坂をのぼり、1周約25mの巨大バルーンを回転する。挑戦前に原田さんは、「難しそうなのは坂を下るとき。人力車の重さがそのままスピードに乗って、降りてきてしまうため、足の回転が追いつかなければ、そのままこけてしまう。そこさえ越えれば入賞に近づける」と分析していた。
原田さんは決勝で、15度の傾斜を猛スピードで駆け上がり、巨大バルーンを一周する障害物も難なくクリアした。結果は30.112秒。奮闘するも7位に終わり、「いやー、キツイ。29秒出せなかった、悔しい」と嘆いた。
優勝したのは、唯一の27秒台(27.913秒)をたたき出した小林歩夢さん(21)。同じ東京力車所属だ。「1位取りました!」との報告に、西尾代表は「スタートの勢いが(他の人と)全然違ったから、あれで『行ったな』と感じた。おめでとうございます」とねぎらった。
女子のエキシビションマッチでも、東京力車の吉田汐織さん(30)が優勝。タイムは36.319秒。5歳児のママが、男子に負けない疾走を見せた。
大会を監修したガンプ鈴木氏は「人力車という日本の文化。いま時代は最先端っていうけど、超アナログだ。だからこそ、みんなで手をつないで、自分1人だけでなく、みんなが『人力車楽しいんだよ』と魅力を伝えられるような。全員で人力車の良さを伝えたいと思う」と、目標を語った。
技術を競う引き手がいる一方で、訓練を重ねる者もいる。8月に密着取材した、研修生2年目の飯田晃生さん(23)は、卒業検定に16回連続で不合格となっていた。再び話を聞くと、「まだ合格できていない。でも諦めず頑張っている」と語った。
アナログだからこそ味わえる、最高のエンターテインメント、人力車の挑戦は続く。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
